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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
143/248

(近江戦)8

 敵勢の突然の乱入によって荒らされた本陣であったが、

鎮められるや、直ちに元の形に直された。

そして、何も起こらなかったかの様な空気感で、

本陣要員も元の位置に付いた。

それは私も同じ。

 私は床几に腰を下ろした。

西の空を見上げた。

綺麗な茜色。

もうすぐ日が暮れる。

その下では観音寺城が炎に包まれていた。

 攻城部隊から次々に使番が駆けて来た。

報告を聞くに、当初の想定から大きく外れてはいない。

外れたのは、この本陣に敵勢の侵入を許した一件のみ。

幸い、後方に配備していた小荷駄隊の損傷も軽度。

戦える足軽で編成していたのが、功を奏したようだ。


 使番達が状況を正確に報じ、私の言葉を持って駆け戻って行く。

それらを見送りながら、私は参謀方筆頭・芹沢嘉門に尋ねた。

「焼けた後の縄張りは誰に任せる」

 今の観音寺城を完全に灰にし、新しい構想で築城する。

その為、建築予定地に縄を張る。

「大石蔵人が宜しいかと」

 大石で思い出した。

「今の石垣はどうする」

 城は灰になっても石垣、敷石は残る。

「当然、移設ですな。

あれだけ大量にあるのには、感謝しかありません」

 目の前の城は大量の石材を用いていた。

お陰で、手近で再利用できる。

六角家のご先祖様には感謝、大いに感謝しかない。

もっとも、子孫の六角親子は見逃さないけど。


 私は一つ、疑問を呈した。

「城勤番の甲賀の者達が辺りの地形には詳しいと思う。

その辺りの手当ては」

 芹沢には当然の疑問だったらしい。

「こちらには人手があります。

その人手で、付け入れられない様に凹地も凸地も均して、

見通しの良い地形に変えます」

 考えてはいたらしい。

「地形の変更が災害に繋がらない様に頼む」

「承知いたしました。

大石には猪鹿殿と相談の上、縄張りさせます」


 次々に使番が現れては現況を報じた。

「進藤治宗を討ち取りました」

 一緒に首級が届けられた。

観音寺城に立て籠もる首魁の一人だ。


「目賀田綱清が焼け落ちる曲輪に駆け込みました」

 炎の中での自決を確認したという。

「布施公保を討ち取りました」

 首級が届けられた。


「池田秀氏が降伏を願い出ています」

「立て籠もっているのか」

「はい、如何いたしますか」

「問答無用、曲輪もろとも焼き払え」

「承知」

 使番が喜び勇んで駆け戻って行く。


 大方の国人衆や地侍の討ち死が続々と報じられた。

「蒲生賢盛を討ち取りました」

「後藤高治を討ち取りました」

 これも首級が届けられた。

これが首魁の大物が続いた。

もっとも、私は彼等の顔を知らないので、誰が誰なのか分からない。

そこで猪鹿の爺さんに頼った。

国人衆とも地侍衆とも見知りである彼に、首改めを委ねた。

そこで爺さんが、ぼやいた。

「こんなに首に囲まれるとは思わなんだ。

何の因果かのう」

 仮設の棚に首級が並べられ、確認済みは首桶に納められた。

そして塩漬けにされた。

近くにいた沖田蒼次郎が揶揄した。

「まるで赤い甜瓜の塩漬けだな」

「喰ってみるか」

「御免願いたい」


 私は観音寺城を見た。

遠くで本丸が火を吹いていた。

暫くは辺りを照らしてくれるだろう。

隣に近藤勇史郎が肩を並べた。

「あれが平井丸です」

 平井氏の寄る曲輪を指し示した。

槍足軽百人頭・蟹海老蔵が討ち取った国人だ。

そこは最大の曲輪でもあった。

それが今にも焼け落ちそうだ。

あっ、ドッと崩れた。

「あちらは池田丸ですな」

 本丸の木戸口を守る曲輪だ。

大きな爆発が起きて、屋根が吹き飛んだ。

「淡路丸ですな」

 観音寺城の鬼門を守る曲輪だ。

既に鎮火し、燻っているだけ。

その焼け跡で動き回る多くの人影は当家の攻城組だろう。

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