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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
134/248

(安寧)22

     ☆


 私は居館の庭先で宴席の用意をしていた。

陣幕を張り巡らし、椅子を並べ、仮設の竈を置き、水を運ぶ、等々。

それは大名が行う仕事ではない。

しかし、ここは足軽の国、私はその総大将。

我儘放題に・・・。

ではなかった。

 側仕え達がそれ以上に立ち働くのだ。

私の仕事を奪って行く。

私が手を伸ばすと、それを近藤勇史郎が奪う。

別の物に手を付けると、それを沖田蒼次郎が奪う。

手の空いた誰かが私を監視し、必ず仕事を奪って行く。

 むっ、空しい。

私は諦めて椅子に腰を下ろした。

そこへ知らせが来た。

「三好様方が来られました」


 三好慶興一行が到着したのは夕刻前。

それを大人衆が出迎え、将兵の多くを城下町の寺社に分宿させ、

慶興と主立った者達のみを居館に受け入れた。

その慶興達には旅の垢を落して貰おうと、大人衆は入浴を勧めた。

風呂でゆっくりして欲しかったのだが、早々に出て来た。

着替えるや、こちらに向かって来ているという。


 私は出迎えていないので、その顔は知らない。

でも一目で分かった。

先頭の若者だ。

良い笑顔をする。

 先方も直感で私が分かったらしい。

真っ直ぐに向かって来た。

間違っていたなら謝罪ものだが、平然と口にした。

「光国殿ですね」

「はい、貴殿が慶興殿。

思っていた通りの方ですね」

「どの様に思われていたのでしょうか」

「文の遣り取りだけですが、優れた方だと思っていました」

「ほう、それは嬉しいですね」


 一行の案内をしていた土方敏三郎が会話に割り込んだ。

「お話し中ですが、宜しいですか」

 私は土方の次の言葉が分かった。

「そうだな、立ち話は止めよう。

慶興殿、席を用意しましたので、こちらへ」

 私は彼を庭先の端の陣卓子に案内した。

竈の煙が届かぬ位置。

互いに椅子に腰を下ろした。

そこへ側仕えのお蝶がお茶を運んで来た。


 犬達が寄って来た。

彼等は空気を読まぬから面白い。

予想通り、私と慶興に餌を要求した。

猪鹿の爺さんが気配りを発揮した。

指笛で犬達を自分の方に誘導した。

巧みなものだ。


 お茶している私達の周りを互いの家来達が囲んでいた。

私は慌てた。

急いで私の側仕え達を紹介した。

近藤勇史郎、沖田蒼次郎、長倉金八、斎藤一葉。

 慌てたのは慶興も同様。

彼も家来達を紹介した。

三好長虎、松永久秀、松永久通、岩成友通。


 空気を読まぬ男が声を上げた。

「上がりました」

 賄い方兼任の山南敬太郎だ。

今夕の料理は海老餃子、焼肉、そして拉麺。

山南の組下の者達が私達の方へ膳を運んで来た。

良い匂い。

毒見しようとする松永久通を慶興が制した。

「よさぬか、光国殿を信用せよ」

 私は提案した。

「それでは私の膳と交換いたしましょう」

「それは」困った顔の慶興。

 私は沖田に命じて膳を交換した。

恐縮しきりの慶興。

私は久通を見た。

「彼も職務ですから致し方ないでしょう。

怒らないで下さい」


 海老餃子を食して慶興が一言。

「旨いですね」

「賄い方の腕でしょうね」

 慶興が山南に視線を転じた。

「当家に譲ってくれませんか」遠慮がない。

「山南は譲れません」

「そうですか」

「当家と親しい尾張の織田家や、

越後の長尾家は敦賀津の唐人町に賄い方の者を送っています。

それに倣ったらどうですか」

「唐人町ですか」

 慶興は隣の陣卓子で拉麺を食っている松永久秀に尋ねた。

「どう思う、できるか」

 久秀は一拍子置いて答えた。

「戻ってから御当主様に相談いたしましょう。

良い答えが聞けると思います。

しかし、もしですが、三好家として出来なければ、

某の家来を出しましょう」


 そこへ女達の姦しい声が届いた。

正室のお絹やお市が侍女達を従えていた。

 度々の誤字脱字のご報告、有難うございます。

大感謝です。

今後とも宜しくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ラーメンとか絶対会談には向かないんだけどズルズルハフハフ食べながら話してる光景をおもうととても和む
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