(安寧)16
大広間に評定衆が顔を揃えた。
筆頭・伊東康介が口を開いた。
「方々、殿にご報告をお願いします」
最初は美濃から。
「東濃は完全に掌握いたしました。
信濃との国境、飛騨との国境、三河との国境、
それぞれに関所と砦を設けました。
現在は街道を広げる普請に注力しています」
私は気になる事を尋ねた。
「信濃の現状は」
「武田に代わり、越後の長尾が北信濃に入りました。
現在、中信濃の国人を調略しております」
「武田は諏訪を守り切れるのか」
「押されています」
予想はしていた。
近いうちに長尾家に追いやられるだろう。
「分かった。
それでは飛騨は」
「当家と長尾家に挟まれて身動きとれぬ様で、困っております。
如何です、調略をお任せ下さいませんか」
「調略も良いが、国人は残したくないな。
後々困る事になるからな」
「それでは内紛を起こす様に手配りいたします」
次に加賀から。
「残った一揆勢は全て北へ追い払いました。
よって、全ての土地が当家の物となりました」
「国人や地侍は」
「足軽になる者、帰農する者、他国へ去る者、それぞれです」
「能登は」
「一揆勢や落ち武者を受け入れています。
当家や長尾家に備えたものかと」
飛騨や能登は人口が少ないから、さして脅威ではない。
「屯田は進んでいるか」
「はい。
流民達が広い田畑を見て喜んでいます」
「勘違いして私有する者は」
「時折、出ます。
話が通じぬ輩は切り捨てて、見せしめにしております」
越前から。
「こちらも屯田は進んでおります。
問題は領地持ちの国人や地侍が多い点です」
そこは仕方がない。
攻め滅ぼす前に、守護様が先頭に立って降って来た。
その時点でこうなる事は分かっていた。
「反乱の兆しは」
「逆に雑兵や小者を解雇しております」
だろうな。
近江や美濃伝いの山々には山窩衆の拠点が幾つもある。
今さら反乱もないだろう。
「解雇された者達はどうした」
「屯田の村で受け入れております」
「湊や浦は」
「大きな船が入れるように普請しております」
若狭から。
「こちらの湊や浦は第二段階の普請にかかりました」
「大陸や南蛮船との交易は」
「順調です。
特に当家の漢方薬や楊貴酒が求められています」
「【魔王様ゲーム】や【いらっしゃい、鬼が島】は」
「好評なのは【かぐや姫】ですね」
私が口にしなかったからか、【三太郎物語】が出てこない。
「唐人町は」
「大陸からの者も増えていますが、
南蛮人もちらほら見掛ける様になりました」
近江から。
「六角家が揺れています。
義賢と義治の仲が険悪です」
先代と当代だ。
親子で争うのか。
「当家が目の前にあるのにか」
「親子とは言え、互いの面子があるのでしょう」
何となく分かった。
敬って欲しい先代。
口出しして欲しくない当代。
どこにでもある家族関係だ。
「それで家臣達は」
「口出しを遠慮しています」
当家との戦で大勢の家臣が戦死した。
特に重臣である進藤賢盛と蒲生定秀を失ったのは痛い。
有能な人材の喪失により、六角家は混乱の渦の道にある訳か。
他人事ながら気の毒に思う。
呑気に構えていた私に伊東が告げた。
「三好様がこちらへ来られたいそうです」
「えっ、初耳なんだが」
「今朝、これが取次役方に届きました」
伊東が側仕え・斎藤一葉に書状を手渡した。
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