表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
120/248

(安寧)8

 私鋳銭で当家は儲けが増える。

でもそれが全額、蔵に納められる事はない。

常に一定額を積み上げると、多くは街道や堤防の普請等に回され、

それを通じて末端の領民に届けられる。

今回は加賀の普請に送金されるだろう。

私はそんな明るい夢見の中にいた。

 目が覚めた。

いや、覚めさせられた。

剣呑な気配。

床下から漂って来た。

何者かが忍び寄って来た。


 暗殺者。

近江の居館の床下は飼っている犬達の遊び場なので、

忍び込んで私を暗殺しようと計る者はいない。

ところが今晩は違う。

ここは関ケ原城。

 東濃城、稲葉山城を難無く過ぎて、居城の小谷城は間近い。

今晩当たり警備の目も緩むと判断して、忍び込んで来たのだろう。

当たりで、目論み通り私の寝所の下に辿り着いた。

さて、肝心の私の寝ている位置を判断できるのだろうか。

私は身動きせずに待ち構えた。


 寝所は三十六畳。

私の寝る位置は決められていない。

この様な侵入者に備えて、側仕えさえも遠ざけ、私自身が決めるのだ。

畳を移動させ、敷布団を自分で敷く。

 耳を下に傾けた。

相手が一枚上手。

物音を全く立てない。

でも私には勘働きがある。

集中、集中。

 相手の位置を特定した。

少し離れていた。

そこから動かない。

たぶん、判断し兼ねているのだろう。

侵入する腕前があっても、最後の詰めは甘いらしい。


 私は飽きた。

床下に向けて声を掛けた。

「そこじゃない、こっちだ」

 途端、人が動く気配。

弾けるように遠ざかる暗殺者。

寝所の外から声が掛けられた。

「殿、如何しました」

 不寝番。

寝所の外の廊下には当番の足軽二名が控えていた。

私は応じた。

「床下に鼠が潜り込んでいる」


 警戒の声が飛び交い、灯りが点けられ、幾人もが走り回った。

側仕えの当番・斎藤一葉が寝所に駆け込んで来た。

「殿、大丈夫ですか」

「少々、寝不足だ。

このまま寝かせてくれ」

「承知しました。

ただし、私が傍に控えております」

「私を襲うなよ」

「そんな趣味はありません」

 今夜の不寝番は斎藤の組。

末端まで指示を行き渡らせ、城の出入りを朝まで禁じた。


 私が目覚めると、寝所には見慣れた顔が揃っていた。

代表して斎藤が報告した。

「曲者は捕えました。

床下から逃れようとした者が一名。

裏木戸から逃れようとした者が一名。

他におりませんが、念の為、朝方から総出で再捜索させております」

 捕えた者二名は、その物腰から忍びの者と斎藤は判断した。

ただ口が固く、何も聞き出せていないと言う。

そこで取り調べを猪鹿の爺さんに委ねたそうだ。


 土方敏三郎が言う。

「前の襲撃もあります。

此度もこう易々と侵入を許すのは、・・・獅子身中の虫かと」

 発言のせいでは無かろうが、皆の視線が痛い。

私は大人衆筆頭に尋ねた。

「見当は付いているのだろう」

「八割方は」渋い顔の伊東。

「教えてくれぬか」

「お知りにならぬ方が宜しいかと」

 私は視線を近藤勇史郎に向けた。

すると、スッと逸らされた。

沖田は・・・。

これも逸らされた。

 たぶん、容疑者は私に近い者。

その数は限られていた。

一人一人を思い浮かべた。

これと決めつけられない。

私は伊東に尋ねた。

「慎重に、間違いがないように調べてくれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ