(桶狭間)3
たびたびの誤字報告ありがとうございます。
大感謝です。
織田信長は敵小荷駄隊の捕獲を森可成に命じた。
「主力のお主を外したくはないが、次を考えるとお主しかいない。
これだけ兵が増えたのだ。
義元の首を落した落さないに関わらず、沓掛城まで押して行く。
その為にも敵小荷駄隊は無傷で欲しい。
任せても良いか」
「お任せを。
して、前田は」
「暫しお主に預けて置く」
一粒の水滴が信長の頬を濡らした。
「雨か・・・、これは天祐か」
遠くに雨雲が顔を覗かせた。
早足でこちらに近付いて来た。
直に雨に包まれるだろう。
物見の者達が信長に知らせを運んで来た。
次々に今川義元の現在地を報じた。
今川軍は信長の読み通りの道筋を進んでいた。
このまま進めば間違いなく遭遇する。
西で稲光、そして雷鳴が轟いた。
雨雲が織田軍の頭上に差し掛かろうとしていた。
信長は、今川軍と遭遇する辺りで本格的な雨になる、そう考えた。
「音を立てても構わん、急がせよ」
それでも徒歩の兵を落伍させぬように気遣い、軍を進めさせた。
小雨の中、物見が駆け戻って来た。
目が血走っていた。
「この先にて敵軍が休んでおります」
信長は眦を決した。
「雨宿りであるか」
「はい、先は本降りになっております」
「義元は」
「姿は見えませんが、雨宿りの一角に陣幕を張っています。
その中ではなかろうかと思います」
「あい分かった」
信長は傍で聞いていた馬廻り衆を見回した。
「間に合った、直ぐそこに義元がいる。
これを討たずして何とする」
全軍に使番を走らせ、自ら先頭に立つべく馬を進めた。
ここで諫める馬廻りはいない。
彼等も血気の勇に逸っていた。
顔を引き締めて続いた。
信長は軍の先頭に立った。
槍持ちから槍を受け取り、頭上に翳した。
「この先で今川軍が雨宿りしている。
我らが狙うは今川義元ただ一人。
我に続け」
従う軍兵が一斉に刀槍を振り回し、鬨の声を上げた。
その鬨の声をかき消すかのように雨脚が強くなってきた。
稲光と雷鳴も近付いて来た。
馬廻り衆が次々と信長を追い越して行く。
「お先に」
「お先に」
遠慮がない。
信長は苦笑いするしかない。
後続を振り返ると、地元の地侍なのか、畦道か獣道かは知らぬが、
手勢を率いて山際を軽快な足取りで掛けて行く。
誰もが義元の首を目指して急いでいた。
先行した馬廻りの動きが悪い。
馬が濡れた地面に足を取られているのだ。
その脇を軽装の徒歩の兵が次々に追い越して行く。
「お先に」
「お先に」
馬廻りの一人が見知りの徒歩の一人を声をかけた。
「義元の首は残しておけよ」
「それは約束しかねるな」
☆
今川義元は沓掛城を発った時は輿に乗っていた。
輿は高位の者としての嗜み。
常識であった。
それは戦場に赴く際にも変わらなかった。
屋根付きなので小雨には耐えられたが、
ここまでの本降りでは耐えられない。
輿もだか、その前に担ぎ手が堪らない。
急いで全軍に雨宿りを命じた。
前線の兵力には余裕があるので、
何れの部署からも本軍の参戦は求められていない。
心置きなく雨宿りができた。
木立の中に陣幕を張って雨宿りした。
気配りのできる従者が瓢箪を持ってきた。
「これで暖を取って下さい」
駿河産の酒が入っていた。
秋です。
フルーツです。
ぶどうです、なるよ社員 マスカット




