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異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【書籍2巻発売・コミカライズ 決定】  作者: 白露 鶺鴒
第六章

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6-19.投獄


 ソロル侯爵と家名のわからない子爵。

 師匠のセレモニーに参加をしていた気はするけど、思い出せない。


 その二人と残された訳だけど、よくわからない世間話で30分くらいすぎたところで、フォルさんがやってきた。

 漸く、この苦痛な時間が終わるっぽい。


「クレイン様。貴賓牢として部屋を用意しましたので、ご案内します」


 その言葉にぎょっとしている子爵。わかりやすく焦っている。

 どうやら、本当に牢に入るらしい。


「は? 牢に入れるのですか?」

「はい。確認いたしましたが、捕縛命令について、正式な書面が出ておりました。発布したのが、現宰相でしたので、従わない訳にはいきません」


 子爵の方がフォルさんに問いただしている。


 ただ、私の方も予想外。

 本当に犯罪者になっていたらしい。


 ソロル侯爵の方も眉間に皺が寄っていて、予想外なのかな。


「私の罪状、なんですかね?」

「不明です。本来、書面に記載されているはずですが、記載されていません。そのため、書類不備として取り扱うことも可能ではあるのですが……あまり、宰相府と敵対することはできませんので。牢にいれた上で、問い合わせをするということになりました」


 う~ん。

 含みのある笑顔をフォルさんがしている。


 つまり、不備ではあるけど、従う。

 牢にいれたという事実を作って、ちくちくするんだろうな。


 罪状不明だから、拘束せずに事態確認のために王都に行くとか、相手側はそんな筋書きだったりするのかな。


 不備な書類であったことから、犯罪者ではなかったとして有耶無耶にするとか?

 何となく、ここで本当に捕まえるというのは本来のシナリオじゃないんだろうな。


 正規の騎士ではなく冒険者を使ってるあたり、怪しいしね。いつでも切り捨てられる上に、すでに後ろ盾を無くした冒険者だから言うこと聞かせやすいとか。


「書面を発行したのは宰相として、冒険者に依頼したのは?」

「まだ、口を割っていない状態ですね。この辺りの冒険者ではないのですが、最近、所属をマーレに変えているため、調査を依頼する予定です」

「なるほど。一応、ハンバード家の子飼いのクランにいた人だって情報があるので参考に。よろしくお願いします」


 ぴくりと反応する子爵をじっと見る。

 侯爵とフォルさんも少し雰囲気が変わった。


 前王が任命した宰相だし、敵方なのだろうけど。

 ただ、宰相の命令であの冒険者達が動いている感じはない。


「フォルさん、私、全然知らないのですけど、宰相様から恨み買ってる感じですかね?」

「そうですね。まず、宰相に任命した王が更迭されるきっかけを作っておりますので。後は、宰相室の働いている者が、ヴァルト伯爵家の縁者やセルフィス家の分家の者などが文官として働いているのでそちらの可能性もございます」


 う~ん。

 色々と因縁のありそうな名前が揃ってる。


 足の引っ張り合いをする貴族達が気付いてないとかあり得ないよね。

 ラズ様が忙しいから動けないうちに仕掛けてきたのか。


 ついでに、流行り病が広がることで、帝国側の領地の弱体化を狙うのかな。


「……カイア様から何か連絡来てます?」

「クロウ殿を借りると数日前に許可を求められました」


 私がいない中で、わざわざ、クロウに仕事を振ったらしい。

 クロウがキュアノエイデスに行ったのなら他の貴族達が薬を入手する経路を断った。


 薬師ギルドがしっかり動けば最悪の事態にはならないけれど。

 流行り病の予兆がある中で、これは結構厳しめ対応だよね。


 薬が足りなくなる可能性とかは考えられる。

 もしくは、新しい研究機関の名前を売る機会にするのかな。


「カイア様は予想してたってことですかね」

「そこまではわかりませんが。クレイン様の身柄を手に入れたい貴族は多いようです。同じように、クロウ様も可能性はあるのでしょう。さらに、戦闘能力はない方ですから。保護の目的もあるかもしれません」


 まあ、クロウは戦わない。冒険者としては名ばかりだし、レウスに連れ出されない限り全く魔物と戦う気はない。


「わかりました。じゃあ、私は部屋で大人しくしてます。モモはどうしましょう? 預けた方がいいですかね」

「問題はないかと。荷物は基本お預かりしますので、餌などはお持ちします」

「なぁ~」


 モモは肩に飛び乗ろうとするけど、重いんだって。

 ひょいっと掴んで、抱き上げておく。


「拘束されるのは構わないのか?」

「冒険者とかに捕まるのは嫌です。でも、ラズ様の指示であれば従います。というか、多分、ここに居た方が安全ですし」


 ソロル侯爵の問いに首を傾げる。

 今更、ラズ様の館で拘束されていても、問題はない。


 ただ、開拓地側が心配ではある。ナーガ君達が離れるときには、ルナさん達も離れるようにお願いしておく必要がありそうかな。


 じっとソロル侯爵を見ると、顔はいかついままだけど、困っている。

 大人しくしているなってことかな。


「本当に拘束するのかね? 流行り病などが起きる中で、そんな余裕があるとは思えないが」

「ええ。ですから、この王都から宰相様の使者がいらっしゃるまで拘束しておくということです」


 侯爵がフォルさんに確認している。

 流行り病による被害。これを無視して、動かない。

 その考えはあまり良くない気がするんだけど。


「ソロル侯爵。とりあえず、薬が間に合わない可能性があるので、うがい手洗いをすること。患者を隔離できるようにすること。食事が出来ない場合には水分補給と栄養素を少しでも取れるように現地で指導した方がいいですよ」

「……間に合わぬか?」

「おそらく、ここで拘束を受けてからだと……無理です。一般的な薬で対応できれば問題ないですけど。その流行り病のための薬開発は間に合わないのが確定しましたね」

「お、お待ちをっ……その、真偽のために王都に向かっては? それなら時間が短縮できるかと!」


 子爵が必死に止める。

 まあ、王都から使者がくるのを待って5日間、そこから問題解決してからソロル領に行くなら、さらに一週間はかかるからね。


 私がこの時点で王都に護送されるのであれば、そこからソロル侯爵領に行くのもそんなに時間は掛からない。

 おそらく一週間くらい短縮できる。間に合うかもしれないけど。


 でも、それを相手側が望んでるのだろう。

 王都に呼び出したい。その意図をすごく感じる。

 だから、その動きをするべきじゃない。


「あの、これに関わってるんですか? 降りた方がいいですよ」


 子爵様の落ち着きがない。

 なんらかの役割を期待された上で、ソロル侯爵とともにいたのか。


 私が拘束されるのが予想外っぽいし、貴族って色々と動きを読まないといけないのが大変だけど。漁夫の利を得ようとするのは厳しいと思う。


「クレイン様。とりあえず、移動をお願いいたします」

「あ、はい。それでは、失礼します」


 フォルさんに案内されて、部屋を出る。

 そのまま、窓もない小さめの部屋に案内された。


「まだ、目的がわかっておりませんのでご注意ください」

「わかりました。これ、クロウに渡したいので、手配をお願いできますか?」


 荷物。特に、採取してきた物をクロウにわたしておく。

 カイア様の元にいるなら、ツルギさんと共に調合して、対応するのだろう。多分。


 私は何もせずに、大人しく捕まっていよう。



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― 新着の感想 ―
まあ罪をでっちあげて労役でタダで薬を作らせたいんだろうけど流行り病も関係しているのかな?
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