12話 仕返し
昨日、言い掛かりを付けてきた男達が、仲間を連れてやって来た。
12話 仕返し
翌朝、荷物を持ってスカイウェーブ号に行くと、船員達は既に働いていた。 ケビンを見つけドングが船の上から手を振った。
「先生~!」
ちょっと恥ずかしい。
部屋に荷物を置いて手伝いに出た。
どの船もやることは大体同じなので、慣れたものだ。
◇◇◇◇◇◇◇
そろそろ出航という時、20人程の男達が船員を押し退け、ドヤドヤと船に乗ってきた。
1人の男がケビンを指差した。
「あいつです!」
僕?
昨日絡んできた男達が仲間を連れてきたのだ。
仕返し?
「よくもこいつらを可愛がってくれたな。 代わりに俺様がお前を可愛がってやるよ」
かなりの大男でがっちりした体つきをしている。 揉み上げが顎の辺りまであり、小さな口がちょっと可愛い。
「船の上は迷惑ですから、下に降りてもいいですか?」
「よし!」
甲板はそんなに広くないので、20人も乗ったら動きが取れない。
「ちょっと行ってきます。 ここにいてくださいね」
心配そうにしている船員達にそう言うと、ケビンは船から降りて行った。
「あのぉ、先に絡んで来たのはあの人達の方ですよ」
ケビンに指を差され、昨日の男はビクッとした。
「お前ちょっと強いらしいな。 しかし俺様に勝てるかな?」
こいつも聞く耳持ってないね。
いきなり剣を抜いて向かってきた。
カン! カン! カン!
男の剣を軽く受けた。 もっと重いかなと思ったが、お父様に比べると何でもない。
「や···やるじゃないか。 お前らやれ!」
あら、他人にやらせるのね? まあ、そうだろうね。
《ケビン、助太刀は?》
《ちょっと、この人数は多いかな?》
ザギが山羊の姿に転身した。
「な···なんだ?」
取り囲んでいる男達が、驚いて一歩下がった。
『私も助太刀するわ』
ルナも転身した。
頭はビーバーで、体が猫。 尾っぽはネズミで毛がない。
3つ目だが、肩までの高さは2m近くある。
「「うぉぉ~っ!」」
男達が今度はザザザッと下がり、お互いを前に押している。
『この姿、あんまり好きじゃないのよね』
ルナはそう言いながら、何だかやる気満々だ。
ケビンが自分の前にいる男達に向かって構える。
「後悔しないで下さいね」
「かかれぇ!」
一斉にかかってきた。 やっぱり人の話しを聞かない。
ケビンは最初の剣をくぐり抜けながら、後ろの男に後ろ蹴りを入れ、前の男の顎を下から左手でアッパーをかました。
腕を斬り、足を斬り、蹴りを入れ、柄で殴った。
ザギは蹴り上げる度に、器用に二人ずつ吹っ飛ばしてき、前から来る男達を角で突き飛ばす。
ザギに剣は通用しない。 ちょっとワザと斬らせてみて、驚いているところに頭突きをくらわした。
ルナは、まるで猫じゃらしで遊ぶように前足でパンチをする度に男達を飛ばしていく。 そして、後ろにいる男を鞭のような尾っぽでバチン!と叩くと、飛んでいってバッシャ~ン! と海に落ちた。
男達がまとまって向かって来たので、軽くジャンプして(と言っても、10mは飛び上がっているが)男達の上に腹からドンッ! と、のし掛かると、下敷きにされた男達は伸びていた。
気付くと立っているのは、揉み上げ男だけになっている。
「えっ? えっ?」
あっという間に伸された仲間を見て、アタフタしている。
その時、建物の間から沢山の兵士達がバラバラと走ってきた。 警邏兵を船員が呼んで来たのだ。
ザギとルナは転身して、サッサと船に乗った。
「お前ら、また!······?······やられてる?」
倒れている男達を見て少しの間戸惑っていたが、警邏兵はケビンに済まなそうに頭を下げる。
「いやぁ、こいつらには困っていたのです。 ありがとうございました。
ところでさっき、何かでかいのが居ませんでしたか?」
「気のせいです」
「?······そうですか」
納得したよ。
警邏兵は船の上に向かって大声で話しかけた。
「モーガ船長、今から出航ですか?!」
「そうだ!」
「お気をつけて! こいつらは貰って行きます!」
警邏兵達は倒れた男達をかき集め、縄をかけて引っ立てて行った。
船の上から船員達が握りこぶしを振り上げている。
「「先生~! 凄~い!!」」
だから、先生は恥ずかしい。
船に上がると、またみんなから称賛の嵐だった。
「おい! ケビン。 ザギ達はもしかして······」
モーガが聞いた。
「ユニオンビーストです。 言いませんでした?」
言ってないし。
「「ほぉ~っ」」
この反応からすると、ユニオンビーストは知っているみたいだ。
「俺、初めて見た」
「「俺も」」
「ザギのデカイ姿を見たいな。 見せてくれよ」
ドングがそう言うが、ケビンは困った。 あの小さいドラグルの姿を見られるのを、ザギが嫌がると思ったからだ。
「ザギは今、訳あって大きくなれないんで勘弁してやって下さい」
『私は構わんぞ。 小さいけど······』
「いいの?」
ザギは、小さいドラグルの姿に転身した。
「「「·········」」」
「「「え~~~っ!!」」」
『小さくても、この姿になりたかったんだ』
ザギは満足そうだが、周りはどう反応してよいものか戸惑っている。
「実はなぜかザギが小さくなってしまって、元に戻る手掛かりがグラズリ大陸に有ると分かったので、行こうと思って······」
「そんな訳があったのか。 なぜあんな所に一人で行くのか疑問に思っていたんだ。 手掛かりが、見つかるといいな」
「はい」
ザギとルナも、楽しそうでした。
ケビン強い。
\(^-^)/




