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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第三章 エボリューションフラッシュ
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11話 ドング

 港町ヨースに着いた。

 乗せてくれる船を見つけ、船員達と親交を深める。 その時、言い掛かりを付けてくる一団が。

11話 ドング




 ヨースに到着したのでロギオンとガオが帰って行き、ポツンと町の入り口に取り残された。


 先ずは宿に荷物を置いて、情報収集!



 北の大陸の名前が「グラズリ大陸]と、分かった。

 グラズリ大陸には、幾つかの国があるそうだが、こちらから渡って行った先の国の名は[ヨーダルン国]。 港町は[フォルカッチャ]だそうだ。 

 


 港に行き、フォルカッチャに行く船があるか聞いた。

 これは直ぐに見つかった。

 [スカイウェーブ号]という貨物船で、3日後に出航する。 船内で働く事を条件にフォルカッチャまで連れて行ってもらえることになった。


 5日ほどで着くそうだ。




 グラズリ大陸は北にあるにも関わらず、暖かいそうだ。 火山が多くあるせいらしいが、但し西の方の高い山には万年雪があるらしい。


 ドラグルについて聞いてみたが[ドラグル]という種族名は知られておらず、[ドラゴン]で通っている。

 グラズリ大陸には、かなりの数のドラゴンがいるのを見た事があると言う人がいた。

 しかし人里には降りて来ないので、間近に見た人は殆どいない。

 その為、ドラゴンについて知っている人はいなかった。



 ザギが言うには、この町にも下級ユニオンしかいないらしい。 もちろん契約している者もいないのだろう、そういう動物を連れている人は見かけない。

 そのせいか、肩に乗るザギと足元を大人しく付いて来るルナが珍しいらしく、じろじろ見てくる。



 人の視線を受けながらヨースの町をブラブラしていると、後ろから声を掛けられた。


「おい! ケビン」


 振り返ると、3日後に乗る船の船長だ。 

 名前をサリバン·モーガ。 30前後の若い船長だ。

 180㎝程の身長で、細身のようだが結構肩幅は広い。 真っ黒に日焼けした顔から見える真っ白い歯が印象的な好男子だ。


 後ろから数人の船員らしき男達が付いてきている。


「今から晩飯を食べに行くんだが、一緒にどうだ?」


 白い歯をニッと見せて笑った。


「はい」





 飯屋に入ると既に数人の船員が座っていた。


「船長! こっち!」


 その一言だけでこの船員達がこの若い船長を信頼し、認めているのが見て取れる。

 みんながみんな笑顔で船長を迎え入れた。


 全部で20人程いる。




 モーガは座る前にケビンを船員達に紹介した。


「明後日の航海で俺達の船に一緒に乗るケビンだ。 船の経験は一応有るそうだが、色々教えてやってくれ」

「よろしくお願いします」

「「おう! よろしくな!」」


 やっぱり海の男達は気持ちいい。




「その鳥はケビンが飼っているのか?」


 向かい側に座る男が聞いてきた。 名前を[ドング]という。

 小柄でケビンよりも背が低くそうだ。

 上目遣いで、ちょっと意地悪そうに見える。

 ケビンは少し緊張する。



「飼っているというより友達です。 この子達も一緒に船に乗せてもらうので、よろしくお願いします」

「この子()?」


 肩に乗る鳥以外に何かいるのかと、辺りを見回している。


「ルナ、おいで」


 足元にいたルナがケビンの膝の上にピョンと乗った。


「おぉ、可愛いな! ところで、お前、傭兵か?」


 ケビンはいつも腰に剣を携帯し、盾を背中に担いでるている。 護りの剣と癒しの盾だ。



 ロギオンからきつく言われた事がある。


「旅の途中、絶対に盗まれてはいけない物は常に持って行動してください。 どんなに安全と思っていても、目を盗んで取っていく輩が必ずいますので御注意を」


 それからは、剣と盾と宝珠だけはどこに行くにも持って出ている。



「まぁ、そんな所です」

「骨董品の様な剣だが切れるのか?」

「大丈夫ですよ」


「何だか()()()()な体つきだが、傭兵としてやっていけてるのか?」

「一応」


 ケビンは苦笑いした。


「お前歳はいくつだ?」

「17です」


 サバをよんだ。


「さぁさぁドング、取り調べ(・・・・)はそれくらいにして、飯だ!」


 モーガが助け船を出してくれた。

 根掘り葉掘り聞かれて、ちょっと困っていた。



 ◇◇◇◇



 翌日、時間をもて余していたので、スカイウェーブ号を見に行った。


 ドラゴンフライ号に比べると数段小さい。 しかし綺麗でかなり新しい船に見える。

 明るいブルーに波の模様が描かれている。 殆どの船が一色またはせいぜい上下で色分けされている程度の配色なのに比べ、この船は一味違って見え、船長のセンスが窺える。



 昨日食事を共にした船員達が荷物の積み込み作業をしている。


「手伝います!」


 ブラブラしているより、働いているほうが、いい。


 体の割に力があると、褒められた。




 夕方には積み込み作業も終わり、ケビンは船長室に呼ばれた。 そこには例のドングもいた。


「明日出航だ。 5日間、ドングがお前の指導係をする。 そのつもりで」


 心の奥底でほんの少し抵抗があった。 この人は少し苦手だったが、そんな事はおくびにも出さない。


「はい! よろしくお願いします」

「おう! よろしくな」

「じゃあ、飯に行くか」



 3人は、ブラブラと歩きだした。


 暫く行くと、見知らぬ6人の男達が向こうから歩いてくる。 ダラダラと歩いているが、何気にこちらを気にしているように見える。

 案の定、その内の1人の肩がドングに当たった。 

 


 どう見てもわざとだ。



「いてて!」

「あっ、すまん」


 ドングは反射的に謝ったが、男達はニヤニヤしながらドングに迫る。 

 傭兵のようで、全員剣を携帯している。


「すまんじゃないだろ? 肩の骨が折れたかもしれないぜ。 治療費をくれよ」



 おもいっきり言いがかり。



「大した事ないだろ?」

「いて~んだよ! 骨が折れてるぜ」


 肩を押さえて痛そうな振りをして見せる。


「気にせずに、行くぞ」


 モーガがドングの肩を押して行こうとすると、その男がいきなりドングを掴まえて殴った。


「待てよ!」バキッ! 

「いってぇ! 何する!」


 殴り返そうとするドングをモーガが止め、代わりに自分がその男に向かおうとしたが、そのモーガをケビンが止めた。


 男達が剣に手をかけたからである。


「モーガさん、任せてもらえませんか?」

「お前一人で大丈夫か?」

「はい、見ていてください」


 ケビンが一歩前に出て、モーガとドングは一歩下がった。


《ケビン》

《ザギ、大丈夫だから、離れていて》


 ザギは飛び上がり、ルナも離れた。



「剣は抜かない方がいいですよ」

「なにぃ~! ガキが!」



 6人が一斉に剣を抜いた。

 聞く耳を持たない。 初めから喧嘩を売るつもりのようだ。



「ケガをしても、僕のせいにしないで下さいね」


 ケビンはスラリと剣を抜いた。


 「野郎!」


 死角にいた男が斬りかかってきたが、振り向きもせずにその剣をケビンは受け止め、弾き返した。 


 護りの剣だけど。



「もう少し下がっていて下さい」


 心配そうに大丈夫か? と聞いてくるモーガとドングに頷くと、ケビンは構えた。




「えっと······傭兵なら、ケガをすると仕事になりませんよ。 いいのですか?」

「かかれ!」


 やっぱり聞く耳を持たない。


 一斉にかかってきたが、全て見えているように剣を受け、かわしながら相手の腕や足を切っていく。


「な、な······なんだこいつ!」


 いつの間にか四人が倒れている。


「お、覚えてやがれ!······行くぞ!」


 よくある捨て台詞を残し、お互いを支えながら男達が逃げて行った。




「「··········」」


 モーガとドングは、呆然と、見ている。


「大丈夫ですか?」


 ケビンに言われてモーガとドングは我に返った。


「な···何だお前······どれだけ強いんだ?」

「ケビンすげぇ~!!」


 ドングがケビンに抱きついた。


「ありがとうよ! 今までお前をみくびっていた。 これからは先生と呼ばせてくれ! 先生! 行こう!」


 ドングはケビンを引っ張るように飯屋に連れていくと、入るなり「聞いてくれ!」と、演説が始まった。


 聞いていると相手は10人以上いそうな話しぶりで、かなり尾ひれが付いていて、ケビンは苦笑するしかなかった。



 半分は護りの剣のお陰だけど······




 それまで下っ端扱いだったのが、みんなの態度が急変した。



 良いやら悪いやら······








 ちょっと苦手なタイプのドングだったけど、仲良くなっちゃったね。

(^_^;)

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