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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第二章 レジェンド・オブ・レジェンド
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17話 嵐

遂に嵐の中に入った。

カイル達とユニオンビースト達の過酷な時間が始まる。

 17話 嵐




 波が一段と大きくなり、船の揺れが酷くなってきた。 その上、波が砕け散る音に混じってザァッと雨の音がしてきた。


「嵐の中に入ったみたいだな」

「はい······お···おい! ローゼン、大丈夫か?」

「お···おぅ·····」


 ローゼンはグーリを抱きしめ、真っ青な顔をしてベッドの奥に座り込んでいる。 既に船酔いで苦しそうだ。


 その時ドサドサッ!と、ベッドの手摺に止まっていたカイザーとハスランが落ちてきた。


「カイザー!! ハスラン!!」


 慌ててカイルが二頭を抱き上げてみると、どちらも目が回っている。

 それに床に座っていたはずのアルナスとディアボロもいつの間にか倒れて、泳ぐように足をバタバタさせている。


「アルナス!!!」

「ディアボロさん!」



 カイルはカイザーとハスランをベッドの奥に寝かせると、アルナスを抱き上げ、ベッドの壁際に寝かせた。


「アルナス、大丈夫か?」

『目が······回る······トルンは······大袈裟に言っているのだと···思っていたが······これは······想像以上だぁ······」


 そう言いながらも反対側に転げそうになっていて、カイザーとハスランもベッドの中を転げ回っている。


 カイルはカイザーとハスランを両腕に抱えてアルナスを体で押さえたが、何せ二頭を抱えたままだアルナスを上手く固定できない。


「イザク! アルナスを押さえてくれ!」


 イザクは転身し、少しふらつきながらもカイルと一緒にアルナスを押さえた。

 アッシュもルーアンを抱えて、ディアボロに覆い被さっている。




 昼だと言うのに明り取りの小さな窓の外は真っ暗になってきて、窓に直接波が当たって砕け散る。


 カンテラの明かりは忙しく揺れ、カイルも踏ん張っていないと柵付きのベッドから飛び出しそうなほど揺れ始めた。


 ギースが食事を運んできてくれたが、もちろん誰もそれに手をつけようとしなかった。



  ◇◇◇◇◇◇◇



 カイルは一睡も出来ないまま朝を迎えた。


 船の揺れは相変わらずで、ローゼンは何度も吐き、今はグーリを抱えたままぐったりと横になっている。

 アッシュも伸びているルーアンを抱えたまま、ディアボロの上でウトウトしている。



『カイル······私達は大丈夫だから······お前も少しは休め』

「カイザー、私なら大丈夫。 こんな時ぐらい君達の役に立ちたい。 好きにさせてくれ」

『すまない······体がスッポリ入る位の箱でもあれば······落ち着くのだが······』


 カイルは箱から顔だけを出して並べられているカイザー達を想像して、思わずプッと吹き出してしまった。


『カイル殿?······今、よからぬ事を···想像しませんでしたか?』


 ハスランに指摘され「すまない」と、正直に誤ってしまった。


『実は私も同じ事を···想像していました······しかし······考えると滑稽です···ハハハ······』


 ハスランはクラクラしながら力なく笑った。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



 翌朝、さすがに疲れが溜まったカイルが、カイザーとハスランを抱えたままウトウトしていると、誰かに顔を舐められて目が覚めた。

 目を開けるとアルナスの顔が目の前にあった。


「アルナス! 立てるのか?」

『もう大丈夫だ。 カイザー達を放してやれ」


 長時間抱き続けていたので腕が動かない。

 やっとの思いで腕を開くと、カイザーとハスランは翼を大きく広げて伸びをした。


『カイル、大変だっただろう』

「大変だったのは、君達だろう? 本当にもう平気か?」


 昨日よりはましになってはいるが、まだ船は大きく揺れている。


『大丈夫だ』


 すると、寝ているアッシュの腕からやっと抜け出したルーアンが、バサッと飛んでカイルのベッドに来た。


『カイル! もう出ていい?』

「ルーアン、エリアスは?」

『······相変わらずよ······』

「そうか······大丈夫か聞いてくるから、ちょっと待っててくれ」


 カイルは立とうとしたが、足が痺れて動けない。


 目覚めたアッシュがそれを見て「私が行きます」と、ベッドから降りたが、アッシュも足が痺れていて変な歩き方でヨロヨロしながら出て行った。





 雨はまだ降っているが小降りになっていて、窓の外は随分明るくなってきている。 揺れも少しずつではあるが、ましになってきた。


 直ぐにアッシュは朝食を持ったギースと一緒に戻ってきた。



「一応嵐は越えましたが、まだ波が高いので甲板には出ない方がいいと思います。 もう少しで収まると思います」


 ギースは朝食を置いて出て行った。


『カイル、出ていい?』

「まだ揺れるし、風も強そうだぞ」

『そんなの飛べるなら問題ないわ』

「それもそうだな」



 部屋を出て甲板に出るドアを開けると、足元をすり抜けてルーアンが飛び出した。


 カイルはルーアンがマストに止まるのを確認してから船首の方向に目をやった。

 向かっている先のグルタニアの空は爽やかに晴れ渡っている。


 近くを通りかかった船員が声をかけてくれた。


「よお! 大丈夫だったか?」

「どうにか······」


 カイルは苦笑した。


「もう直ぐグルタニアだ。 陸が懐かしい。 じゃあな」


 少し疲れた顔をした船員はさっさと行ってしまった。




 部屋に戻ると、グラードが来ていた。


「カイル、大丈夫だったようだな」

「グラードさんもお疲れの様子ですね」

「毎度のことだ。 どうって事はない。 今日は三人ともゆっくりしていろ。 じきに波も治まる。 明日の夕方には着く予定だ。 そこからがお前らの本番だろ? 体調を戻しておけよ」


「あのう······グルタニアの港の近くに島はありますか?」

「港の近くには無いが、少し離れれば沢山あるぞ。 どうしてだ?」


「ユニオンはユニオンの気配が分かります。 カイザー達が近付くと私達が来たことを悟られてしまいます。 それでユニオン達にはどこかの島にでも隠れていてもらおうかと······」

「そうか······こいつらがいないとなると大変だな······勝ち目はあるのか?」

「出来るだけ戦わずに済めばと思っています」


「そうだな。先ずは情報収集だな。 それは俺達にも手伝わせてくれ」

「ありがとうございます」


「一つ、聞きたい事があるのだが······」

「何でしょう?」

「もしかして······カイルはアルタニアの王か?」

「!······」


 カイルは認めていいものか迷った。 既にバレてはいると思ったが、ハッキリと認めてしまうのもマズい気がした。 しかしグラードはそんなカイルの反応を見て確信したようだ。


「という事は······カイルの嫁さんっていうのはアルタニアの王妃様か?」

「······」


 再び黙るカイルを見て、グラードは察した。


「そうか、やっぱり······白いユニオンビーストの事を思い出した奴がいて······心配するな。 あいつらには口止めしておいた」

「ありがとうございます」


「助けられるといいな」

「必ず助けます」

「そうだな······そうだ。必ず助かるさ」

「はい」



 ◇◇◇◇



 暫くすると波が収まってきたので、カイルとアッシュは甲板に出た。 昨日までの嵐が嘘のように空は真っ蒼に澄み渡り、雲一つ無い。


 船尾の方を見ると、今通り抜けてきた嵐が水平線を黒く染めていた。


 カイルは鈍った体を動かした。

 体中ミシミシいいながら気持ちよく伸びていく。


 カイザーとハスランはマストの上に飛んで行き、アルナスとディアボロも思う存分体を伸ばしていた。



 そこへグーリを肩に乗せたローゼンが出てきた。


「大丈夫か?」

「もう大丈夫です、船酔いは(おさ)まりました。 あぁ···腹が減った。 何だか冬眠から覚めた熊の気分です」



 この船に乗ってから髭を剃らず、熊の様な顔のローゼンを見て、みんなが顔を見合わせて笑った。







やっとグルタニアに到着出来る。

エリアスを無事に助け出す事が出来るのでしょうか?

( ;´・ω・`)

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