二話
神殿内の自室でゴロゴロしていたら、お世話をしてくれてる女神官さんが、手紙を持って来た。
何々? あ、片手で数えるくらいしか会った事のない、書類上の私の婚約者サマの王太子殿下からじゃん。なんだろ?
え、私の功績を讃えたパーティをするから、明後日の夜に正装で王宮まで来いだって? えー、面倒くさいなあ。パーティならパレードの夜に、国王様主催でやったじゃん。もういいよ。
とはいえ、殿下からの呼び出しを断るのは良くないだろう。まだ、私の木の聖女としての力が求められている場所があるとはいえ、目下の懸念事項である瘴気溜まりの浄化は終わっているのだ。私の待遇を下げられたら堪らない。
仕方ないから、神官長などに話を通し、殿下主催のパーティに出ることにした。……めんど。
* * *
煌びやかな王宮内の豪華な廊下を、木の聖女としての緑と白を基調とした正装をまとって、私は歩いていた。
聖女っぽい厳かな微笑を浮かべつつ、案内に従ってパーティ会場まで進んでいく。内心は、早く帰って、こんな動きにくい服をさっさと脱いで、ゴロゴロしたかったが、そんな感情はおくびにも出さない。数年の聖女生活で身につけた技だ。
パーティ会場に入ると、何だか雰囲気がおかしい……。中にいるのは若い男女ばかりで、聖女である私が入ってきたというのに、礼を取ることもせず、遠回しにこちらを見て、ヒソヒソ話をしている。
真ん中にいる王太子殿下?であろう青年も、何故か傍らにふわふわな金髪の可愛らしい女性を抱いており。一応は婚約者であるはずの私を睨みつけていた。(因みに私の髪の色は平凡な茶色)
「よく、図々しく高貴なる王宮にノコノコやって来たものだな!」
開口一番にそう言い放つ、推定王太子殿下。いや、テメーが呼び出したから、わざわざ来たんだが?
「王太子殿下におかれましては……」
「煩い! 下賤の身の偽聖女風情が、汚い口を開くな!」
怒りを押し殺して、定型通りの挨拶をしようとしたが、それを遮るように叫び出す推定王太子殿下。
……いや、偽聖女??
「全く、卑しい身分でよくも我らを騙し、真の聖女たるミミリアを虐げてくれたものだ! この罪は許されないぞ!」
「はい? あの、殿下……偽聖女とか真の聖女とか、一体なんの事ですか?」
耳を疑うような発言に、ついつい素に戻りかけてしまった。いや、しょうがないでしょうよ、意味がさっぱり分からない。
「誰が口ごたえして良いと言った! 卑しいとマナーの一つも出来ないのだな! まあ、良い。愚かな貴様にも良く分かるように説明してやる!」
そこまで言うと、一息おいてから両腕を広げ、まるで劇役者の様に語り始める推定王太子殿下。
「貴様の様な下賤の生まれの孤児かつ、治癒の力も持たない偽物なんかとは違い、このミミリアは、由緒ある侯爵家の家柄にして、治癒の力を持つ、正真正銘の聖女だ! 今までは、貴様と貴様が騙した神官どものせいで、ミミリアはずっと日陰の立場で蔑ろにされてきたが、そんな女神の意思に反する様な事は到底許す事はできない! 偽聖女カレン! このリーザン王国王太子、ノルト・リーザンの名において、貴様を断罪する!!」
……ぱーどぅん?? ( ゜д゜)




