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第八十四話:八番目ですが、それはないでしょう?

※モブ視点のお話があと1,2話続くかもしれない


 野薔薇団(ワイルドローズ)を中心とした冒険者達は獣人砦襲撃クエストを受注し、魔獣の領域である湿地林の中を進んでいた。


「ここから先は別れて進もうじゃないか」


 分岐路に差し掛かると、野薔薇団(ワイルドローズ)の団長である女戦士ローズが提案した。その理由は当然、男パーティとはこれ以上一緒に行動はしたくないという意思表示である。


「そんなの横暴じゃないか! 私達が分かれてもメリットが何もない」


 青年戦士は反論する。


 野薔薇団ワイルドローズ組は70人程居るのに対し、男は別パーティを全て合わせても10名程度しかいない。そんな状態で男女で別行動してしまえば、男組がやれる事はたかが知れている。


「メリットなら十分あるんだよ。男なんかと組まなくていいっていうね。他の皆だってコイツラと一緒に野営なんてしたくないだろ?」


 ローズはあからさまに嫌悪を滲ませた形相で青年戦士を睨みつける。他の女性戦士達も揃って青年戦士に対して威圧的かつ侮蔑的な目を向けている。


「あ、そっちの魔術師の男の子だけはこっちに入れてあげてもよくない? ボクだっておねーさん達と一緒の方がいいでしょ?」


「いや、それは困る。うちの唯一の魔術師まで持ってかれたら私達がクエストを達成できなくなるじゃないか」

「別にいいじゃない。アンタら男共の事なんて知ったこっちゃないんだし」


「クッ」


 青年戦士の後ろでビクビクしているフード姿の魔術師に注目が集まる。


「ボクは……あなた達と組むよりならこの人と一緒の方がいい」

「あ、そ、じゃあ頑張ってね~」


 魔術師への興味を失った野薔薇団は男組を置いて湿地林の先に進んでしまった。険悪なムードが広がってしまった以上、野薔薇団の後をついて行こうとする男は誰一人としていない。


「クソッ、なんなんだよアイツラ。俺らの事を散々馬鹿にしくさりやがってよ。もうこんなクエストやってられっか!」


 残された男の一人は、苛立ちに任せて樹木に蹴りを入れると、元来た道へと戻って行った。

 

「あ、おい……」


「俺ら10人ぽっちで何が出来る。こっち側にいるのはファイアーボール二発までしか撃てないヘボ魔術師一人じゃ折角先に辿り着いてもあの連中が来るまで何もできねぇしよ」


「あう……」


「はい、パーティは解散だ解散。たく、違約金支払いで大損だぜ」


 その言葉に続き男達は皆本陣の方へ帰ってしまったのである。ポツンと湿地林にとり残された青年戦士とフードの魔術師は途方にくれていた。


「ごめんねマジ君。ボクがもっと強い魔法をいっぱい使えたらよかったんだけど」

「いや、相手が野薔薇団(アレ)じゃ仕方ないさ」

「マジ君はあの人たちの事知ってるの?」

「まぁ、女のみで構成されてる傭兵団だから悪い噂も含めて色々有名だしね」


「悪い噂って?」


 野薔薇団(ワイルドローズ)、その構成員の過半数が筋金入りの男嫌いを拗らせている事で有名である。


 女戦士は男と比較すると体力や筋力が落ち、女向けの板金防具は着回しが難しい上に製造には手間がかかるので全体的に高値になる傾向がある。また、女一人で男だらけのパーティに加入すると酷い目に遭いやすいのもあってか、女の身で出会いに恵まれないまま冒険者稼業を続けていると、そのうち"男嫌い"を発症してしまうのである。


「ああ、うん、知らないならあまり気にしない方がいいと思うよ。ただ、あのままレイが野薔薇団(ワイルドローズ)に付いて行ってたら危なかったかもね」


「ボクって危なかったの?」

「だってレイは帝国貴族の出だろ? それをあの人たちが放っておくわけないよ」


 野薔薇団(ワイルドローズ)にまつわるもう一つの有名な逸話として、都合のいい金持ちのイケメンに限ってはパーティへの加入が許されるというものがある。そして、加入してハーレムの主になってしまったイケメン達は骨の髄まで搾り取られ、最期は道端に捨てられるか既成事実を作られてしまうのである。


「えっ……どうしてそれを?」


 魔術師レイはぎょっとしたような表情を浮かべていた。


「ほら、私の手なんて傷だらけでゴツゴツしてるだろ? 握手した時のレイの手って冒険者なのにまるで"女の子"みたいにとても細くて綺麗だったし。それに、男で魔術師になるのはよっほどの才能がなきゃ貴族の家柄で教育でも受けない限り難しいからさ」


 マジの放った"女の子"という単語に反応してビクついてしまうレイであった。


「ああ、悪い、深く詮索するつもりはなかったんだ。それより私達も早く野営地まで戻ろうか」


 青年戦士マジは魔術師レイを手招きするが、レイは俯いたままその場に立ち尽くしている。


「ボクは戻れないよ……」

「ん、なんでだ?」

「今手持ちがないの」


 違約金を支払えるだけの手持ちすらないままクエストに参加する事自体はよくある話である。何故なら、大抵のクエストで失敗は死を意味するも同然であり、初めから失敗を考慮する必要がないためだ。もしも、失敗時の違約金を支払えなかった場合、罪人として処断されるか依頼主の温情にすがって示談するかの二択になる。


 もっとも、示談といっても奴隷商人に売られるなどの悲惨な末路が待っているのが殆どである。


「ああ、うん……分かった。それじゃ一緒に野薔薇団(ワイルドローズ)に頭下げに行こうか。そこまでなら私もついて行ってあげられるからさ」


 魔術師レイがふるふると顔を横に振ると、青年戦士のマジは銀貨2枚をレイの手に握らせたのだ。


「どうしてマジ君はボクにそこまでしてくれるの……?」


「ん~、勘違いしないで欲しいけどこれは単なる打算だよ。私みたいな平凡な百姓出が魔術師とパーティ組める機会なんて、この先二度とやってこないかもしれないからさ。できれば今後も一緒に仕事できればと思ってね」


 魔術師は同行するメンバーをえり好み出来る側の立場にたっている。何故なら、単純に魔術師の人口は戦士と比較すると少なく、戦闘面においても刃も通らないような強力な魔獣を一撃で仕留められる精霊魔法は強力無比であるからだ。魔獣そのものに懸賞がかけられる討伐クエストにもなると魔術師がいないと殆どお話にならないのである。


 そういった理由から、冒険者の中では魔術師とパーティを組むのは一種の憧れとなっているのだ。


「だったら、ボクがこのままクエスト続けたいって言ったら付いてきてくれる?」


 野薔薇団(ワイルドローズ)に頼らずに二人で獣人砦に挑むのは明らかに無謀である。多少世間知らずな面が見え隠れしている魔術師レイに対し、青年戦士マジは頭を悩ませた。


「あ~~~~~~~うん、レイにはどうしてもお金が必要な理由があるんだね。分かった、大分危険だけど、一応まだやりようはなくはないから頑張ろうか」


「うん。ありがとう。マジ君」


 最終的に偶然を装って野薔薇団(ワイルドローズ)と合流すればクエストの達成自体はできる。そこで、獣人砦襲撃直前までは野薔薇団(ワイルドローズ)と接触しないように後を付ける事にしたのだ。


「妙だね」

「マジ君?」


 既に日も沈み、薄気味悪くなった湿地林は異様な静けさを漂わせていた。少し離れた場所には野薔薇団(ワイルドローズ)の設営した野営地の光と煙が見えている。


「魔獣の生息域なのに静かすぎる。遠吠えすら聞こえてこないだなんて……」


「普通は聞こえるものなの?」


「ここいらは夜狼の生息域なんだ。彼らは遠吠えによって集団を統率する習性があるし、それ以外の魔獣も大体夜には唸り声をあげるし、小鳥や小動物は驚いて逃げちゃうから物音は結構たつんだよ」


「へ~~マジ君は物知りなんだね」


「……私は君のことが大分心配になってきたよ。レイは今まで冒険者やっててよく生きてこられたね」


 冒険者の洗礼を受けている者からすれば、青年戦士マジの知識は常識であり、知らなければ魔獣の餌になっていてもおかしくはない。


「本当はボク、冒険者なんかじゃないんだ。マジ君は何となく察してると――」


「あ~~ちょっと待ったレイ。それ以上を私が聞いてしまっても本当に大丈夫なのかい?」


「うん。今のボクはもう貴族でもないから……それにマジ君に隠してるのは何か嫌だって思ったし……」


 そしてレイは、それまで深く被っていたフードを取り外したのである。そして、鮮やかな栗色の髪がふわりと肩へとかかり、柔らかそうな深紅の瞳を覗かせたのだ。


「うっ、すまないレイ」


 青年戦士のマジは胸元を抑えてうずくまる。


「突然どうしたの?」

「罪深い私をグーで殴ってくれ」

「え!?」


「不覚にも男にときめいてしまったんだ! いくら恋人がいない時間が年齢と等価であるとはいえ、ついに私にもこの病気が発症してしまったのだと思うと。もうこの先生きのこれない……」


 青年戦士マジはそのままがっくりとうなだれてしまった。このように女日照りが過ぎると病気(ガチホモ)を発症してしまい、男娼を利用して性欲を発散する男性冒険者の数もそこそこいたりする。


「あ、あの、ボクは別に……お――」

「いや、いい、いいんだ。君は他罰的になれない優しい男なのは私には良くわかる。だったら私は、自ら己を罰さなければならない!」


 ついに青年戦士のマジは自分で自分を殴り始めてしまった。その苛烈さは鼻から血が吹き出る勢いである。


「もう、話聞いてよ!」


 己に体罰を科し続けるマジの耳元で、レイは叫んだ。


「うわっ!」

「落ち着いた?」

「す、すごく落ち着いた」


 青年戦士のマジは挙動不審に目元を泳がせながらコクコクとうなずく。


「ボクの本当の名前はレイア・レッドフィールド。帝国貴族、レッドフィールド子爵の第八番目の嫡出子なんです」


「……レイア?」

「今まで偽名を名乗っててごめんなさい」


「正直私には偽名を名乗る理由はわからないが、レイアにとっては重要な事なんだな」

「はい」


「よし、なら"男同士"親ぼくを深めあうためにそこで一緒に立ちションでもするか!」

「は、はい?」


 この後に及んでも青年戦士マジはレイア・レットフィールドの事を男であると思い込んでいるのであった。それは、女冒険者から拒絶されて生き続けてきたという悲しき性から生まれる誤解である。


魔法使いの位置づけを何となく書いてるものの、誰得感があったりなかったりする。悲しい事に冒険者やってて恋愛が成就するケースは稀である。


 マジ君とレイアちゃんはゾンヲリさんのテリトリーに侵入してしまってるので、残念ながらぶっ殺……すのはちょっと心苦しくなってきた今日のこの頃。なお、派手に野営の狼煙をあげてしまってる野薔薇団の方は遠くから丸見えなわけですが……。


 まま、エアロ(風魔法)

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