#31 第30話 旭日昇天・単刀直入
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新章突入+新キャラ登場の第30話、さっそく始めます!
入学式からの数日間は、洸たちにとって過酷の日々となったが、その後はしばらく何事もない日々が続くことになった。これはポセイドンの敗北を受け、ゼウスを頂点とする真の地球人たちが策略を練り直したことによって生じたものであったが、洸たちは当然のことながら知る由もない。
洸たちはポセイドン戦の翌日からも、バトル訓練と、地底への行き方の調査を中心とする翔也救出作戦に明け暮れる日々を過ごしていた。
ポセイドン戦の数日後──。
公園内にバトルフィールドを設置した洸たちが会話を交わしている。
「今日も僕の方は手掛かり一切なしだよ……」
「私も」
「俺もだ」
「あたしもニャ……」
「確かにそんな簡単に分かるなら苦労しないよな。俺らが見つけられるくらいなら既に他の誰かが見つけてるはずだしな」
「ゼロスさんともう一度会えたら教えてもらえるんはずなんだけどな」
洸の一言に久愛が続けた。
「カリン、あれからゼロスさんからは連絡なしだよね?」
「うん……ニャ……」
ポセイドン戦以来、ゼロスからのコンタクトが一切なかったため翔也救出作戦の方は頓挫していた。
「カリン、梅佳ちゃんとまた話した?」
「うん……今日も聞いたニャ……地底への行き方分かった?って……」
「やっぱり梅佳ちゃんも知らないって?」
「そう言ってたニャ……けど……」
「けど!?」
久愛の声で、洸とアヤトも一斉にカリンに注目する。
「翔也たんが連れ去られたことは、もう知っていたみたいだったニャ……」
「「「???」」」
「やっぱり、アイツ怪しいんじゃないか?」
アヤトの表情が険しくなる。
「知ってたのだとすると確かにどうやって知ったのかは聞きたいね」
「梅佳ちゃんにも訓練に来てもらうってのはどうかな? カリンとは仲が良いみたいだし」
「あたし、それも言ってみたニャ。前みたいに特訓してほしいって。でもあたしはバトルをしなくていいって言うし、最近様子が変ニャ……」
「「「???」」」
「カリン、様子が変て、どういうこと? 冷たくなったり?」
「違うニャ……前より、すっごく優しいニャ……」
「優しい?」
「何か企んでるんじゃないか? 気まずいから優しくしてるんだ。浮気する奴が本命に優しくしたりするっていうじゃん?」
アヤトが気色ばむ。
「バトルをしなくていいってどういう意味だろう?」
洸が言うと久愛が提案する。
「私、直接、梅佳ちゃんと会って話してみる。今からカリンと一緒に行ってくる」
「「今から!?」」
「うん、カリン、端末で連絡取れるでしょ?」
「うん」
「ふたりで行くのは危険じゃないか?」
そういうアヤトに対して久愛が答える。
「ここんとこ何も起こってないし、大丈夫でしょ。敵と遭遇したら連絡するから、そのときは助けに来て」
「梅佳たんがいたら大丈夫だと思うニャ……」
「わかった。久愛、念のため気を付けて。アヤト、僕らは訓練を続けよう」
洸も同行したいと気持ちがあったが、アヤトの気持ちを汲んで場を収めようとした。
「OK」
「じゃぁいってきます」
「いってくるニャ」
久愛とカリンは梅佳と会いに公園を出た。洸とアヤトはバトル訓練を再開する。
「アヤト、僕、ひとつ特性について気になったことがあるんだ」
「ん?」
「かつてのバトルにとらわれずに試行錯誤してみてさ、どうも僕って動物に関するスキル特性があるみたい」
「獅子とか鳥だけでなくってことか?」
「そうそう、それでさ、いわゆる空想上の動物を出したときはさらに攻撃力が上がってる気がするんだ」
「ほう? 動物にまつわる言葉は俺も試してみたんだが、俺の特性ではないな……俺は、刀とか矢とか、日本の古典的な武器とかに関係する文字が使えるみたいで。風はてんでダメ。雷はいけてるはずなんだけどな」
「アヤト、そのあたり、実戦形式で試してみない?」
「い、いやいや、ちょとまって、俺らまだ回復スキルもないし、久愛もカリンもいないから、大技を実戦形式で試すのはヤバくね?」
「あ、そうか」
そのとき、洸たちはバトルフィールド内に人の気配を感じた。
洸とアヤトが目をやると、アヤトと同じくらい高い背丈の、黄色い髪の少年の姿があった。同じ学校の制服を着ており、長い髪を後ろで束ねている。その少年は洸たちを鋭い目で睨んでいた。
「だ、だれ?」
「誰だ?」
「ん? オレ? あぁ、霜月勇希」
少年は洸たちを睨みつけたまま、どんどんと近づいてくる。
「あんたら先輩の葉月洸之介と神無月アヤトだよな?」
「そ、そうだけど」
「翔也さんをどこにやった?」
「「!?」」
「おい、聞こえてんだろ? 翔也さんはどこだって聞いてるんだ?」
「ちょ、ちょっと待って、君、翔也君の知り合い?」
「お前、先輩って分かってるなら口の聞き方、気をつけろよ」
「こっちが先に聞いてんだ。名前も名乗っただろ? 翔也さんとはもう数日間連絡が取れない。あんたらと会うっていうのが、オレと交わした最後の会話だ」
「あぁ、翔也君は……」
洸が答えかけたとき、勇希が仕掛ける。
「『キョクジツショウテン』」
勇希が唱えると、勇希の全身を黄色い光が覆い、その光は両手の拳に収束していく。
アヤトがすかさず応戦する。
「『タントウチョクニュウ』」
アヤトの左手に、黒い鞘におさまった日本刀が生じる。アヤトがバチバチっと帯電した黒鞘から刀を抜こうとした矢先──。
勇希が素早くアヤトとの間合いをつめて右拳を振り上げる。
「ちっ。はやっ」
抜刀が間に合わないとみたアヤトは鞘を持った左手でガードする。
バゴンッ──。ふっとばされるアヤト。
──パワーもなかなかあるな……。
アヤトは追撃に備え即座に立ち上がって身構えた。
「どうして質問に答えられねぇんだ!? 攻撃しようとするってことは、聞かれると都合が悪いってことだよな?」
「まって、誤解だよ」
臨戦態勢を解かない勇希。いつでも攻撃できるといわんばかりに軽く体を揺らしながら身構えている。両拳も『旭日昇天』スキルの効果で依然煌々と輝いている。
「翔也さんはどこだと聞いてるんだ!」
「話せば少し長くなるよ。落ち着いて。僕は翔也君の幼馴染だから」
「それは知ってる」
「僕たちは翔也君と一緒に闘ってきたんだよ。昔も今も」
「それも知ってる。翔也さんから昔の話は一部始終聞いてる。どうして翔也さんだけが行方不明になってるんだ。あんたら、なに吞気に楽しくわちゃわちゃやってんだ!?」
最後までお読みくださりありがとうございます。新キャラ霜月勇希、いかがでしょうか?次話では勇希と翔也との関係が明らかに!?ぜひお楽しみに!
ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。次話更新の予定は日曜日深夜(日付は8月21日月曜日)です!
□語句・スキル解説
◇旭日昇天
日が昇っていくときのように、極めて元気で勢いがあるさまをいう。
ここでは自身のパワーをアップさせる支援系スキルのこと。
◇単刀直入
本来、一本の刀で敵陣に切り込む様子から、転じて前置きなくすぐに本題に入ることをいう。
ここでは、一振りですぐに致命傷を与えられるような一太刀を食らわすスキルのこと。日本刀が出現しているのはアヤトがその特性をもっていて、イメージしたからである。
以上です。




