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第二十八話 作戦会議

 翌日、若干新鮮な気持ちで目覚めた。

 千陽ちゃんとのデートから一日明けたけど、妙な消失感は消えない。

 友達である事には変わらないはずなのに、不思議な感覚だ。

 勿論、振ったことを後悔なんて、そんな最低な事は考えていない。

 ダサいし、なにより千陽ちゃんに失礼だと思うから。


「もっとしっかりしないとな」


 振った後に幻滅されるのは両者にとって良くないし、これからも変わらず接していこう。

 そして、俺は本当に気になっている人との関係をはっきりさせたい。


 とかなんとか考えながらスマホを見ると、まだ午前六時だった。

 日曜だし、姉は起きていない。

 とりあえず暇だから呑気に二度寝と洒落込む。

 布団に潜り込むと、隣で姉が寝返りを打った。

 やっぱり男子高生が大学生の姉と同じ部屋で寝てるのって、変な感じだよな。

 しかもうちの姉は寝相が悪いし。


「布団からはみ出してるし。ってか暑いのはわかるけどもっとちゃんとした格好で寝て欲しいな……」


 Tシャツにショートパンツという酷い服装の姉。

 実家にいる時はパンツ一枚や、裸体で眠っていたことを考えるとマシになった方だけど。

 それでも、ブラくらいつけて欲しい。

 目のやり場に困る。


 姉のだらしない姿から目を逸らしていると、スマホにメッセージが届いた。

 グループに招待されたらしい。

 こんな早朝から誰が?と怪訝に思いながら確認したら、招待主はまさかの叶衣さんだった。


「か、叶衣さんっ!?」

「んぅ……? えいちゃ……」


 つい大声を出して姉を起こしかけてしまう。

 すぐにまた眠りについてくれたけど、大きな声を出すのは我慢しよう。


「ってかなにこのグループ」


 よく見ると、招待されたグループはクラスの女子だけがいるグループだった。

 間違えたのだろうか。

 わからないけど、なんか無視するのも気が引けたから参加してみる。


『櫻田君よろー』

『早起きだね』


 すぐにメッセージが届き、焦りつつも返信。

 続いて『櫻田君も参加してね』というメッセージと共に、グループ通話が開始された。

 な、なんなんだ本当に。

 俺はそーっと部屋から出て通話に参加した。


「も、もしもし」

『あ、櫻田君? あたし月菜だけど』

「か、叶衣さん。どうしたのこんな朝に」

『ちょっとした作戦会議』

「作戦会議?」

『そう、あのウザい男子を叩きのめす作戦』


 寝起きの頭では正確に把握できないけど、ウザい男子っていうのは藤咲と山野とか、叶衣さんのふざけた噂を流した男子の事かな……?

 困惑している俺を他所に、グループ通話に参加していた他の女子が話を始める。


『マジウザいよね。月菜の噂流したやつ懲らしめなきゃ』

『女子を勝手にヤリマン呼ばわりとかサイテー』

『自分たちが相手されないからって幻滅だわ』

『だよね。山野くんカッコいいかもって思ってたけど、この前の櫻田君への絡みとか見ててほんと嫌いになった!』


 やはり俺の予測は正しかったらしい。

 それにしても凄い嫌われ方だ。


「で、でもなんで俺をこのグループに?」

『なんでって、あんた散々嫌がらせされてるんでしょ? 当事者だし、一応意見の交換はしておこうと思って』

「そ、そうなんだ」

『実は既にあいつら二人と仲の良い男子から言質取ってるし、後はタイミング見計らって潰すだけ』


 逞しい彼女の姿勢につい笑ってしまった。

 言われっ放しの叶衣さんではないという事だ。


「わかった。じゃあ俺も手伝うよ。何されるかわかんないし、何かあったら俺が叶衣さんの事守るから。迷惑かけたし」

『ッ!? ……なにそれ。まぁいいや、よろしく』

「うん」


 元はと言えば俺の告白が原因で色んな事を言われた。

 ここで俺が守ってあげなくてどうするのか。

 尻拭いは俺がやるべきだ。


『あ、でもあたし達が企んでることは悟られないように』

「安心して欲しい」


 そもそも俺には男子の友達なんて、ただの一人もいないんだ。

 悟られる可能性は皆無。

 入学して一ヶ月くらい経ったのに、悲しすぎる境遇に涙が零れそうだけど、叶衣さんに頼られて嫌な気はしない。


 電話を終えて俺は寝室に戻った。


「おはよ瑛ちゃん」

「ねーちゃんおはよう」

「……なんか表情が凛々しいね」

「気のせいでしょ」


 まじまじと俺の顔を見つめてくる姉に苦笑しながら、俺は頬を掻いた。

 作戦、上手くいくといいな。

 叶衣さんの濡れ衣が晴れるのを俺も望んでるから。

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