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-幕間-賢人の塔2



 どれだけ進んだのだろうか。

 息を付く暇すら無い。


 気を許せば、変な蔓でも掴んでしまったら。

 俺は暗い闇の底に一直線に消えて行くだろう。


 道を照らすのは、バックに括り付けたランプの灯りのみ。

 朧げな灯りが、深い孤独から、俺を守ってくれる。


 使い魔のラトラスが示した道は本当に合っているのか。

 もう何度も反芻した。


 でも、一度登りだしたらもう下を見る事は出来ない。

 深い深い、闇が……思わずつばを飲んだ。


 ゲームの世界で、これだけ恐怖心が膨れ上がるなんて絶対に無い。

 バーチャルゲームが発売された当初は、たしか大きなゴーグルを付けて、ジェットコースターに乗るゲームが大きく話題を呼んだ。


 美少女ゲーム。いわゆるギャルゲーも大きく反響を産んでいた。

 日本は、何故か他国から変態だと言われる技術だけ大きく進歩するのだ。


 そしてついにVRMMOという名の、ビッグタイトルが発売される。

 俺はRVFと言われる、バーチャルファイト系のゲームを良くやっていた。


 大きなコロシアムの中心で一対一で向かい合い、スタートのゴングが鳴ると同時に命を削る戦いを行うのだ。


 自分でアレンジしたスキルや武器を用いて戦う。

 リアルファイトさながらのゲームは、スリリングで楽しかった。


 負けた時は死ぬ恐怖というよりも、敗北の悔しさの方が強い。

 それはゲームだから。

 自分自身が死ぬ事がないからだった。


 それとは全く違う感覚が襲ってくる。

 どうしようもない焦燥感と共に、もしかしたら下に散らばっていた白骨達は、大きく砕けていたし、ここから落ちて全身の骨が折れてしまった人達なのかもしれない。


 賢人の塔と呼ばれているから。

 知恵を試す場所なのだろうかと思っていたが、とんだ勘違いだったようだ。


 半分に割ってみないとここの構造なんてわかりっこ無いが、幾ばくにも罠や魔物が設置された場所があるのだろう。


 そして無駄な道もあれば一人しか通れない道もある。

 こうして深い孤独を味わって思った。


 この塔は……一人で来いと告げているのだ。

 真っ暗な孤独の中、一人で危険域に踏み込む勇気があるのか。


 気が狂う……なるほどな。

 これは一つのメッセージだ。


 太陽の国だと言われるジャスアル。

 どうしてこんな辺境に賢人の塔が経つのか。


 何となく繋がりが見えて来た気がした。


「……恵まれていた……のか」


 散々自問自答は繰り返して来た。メリンダ師匠の元で修練に励んで変わったつもりでいたのだが、未だに人と関わるのが億劫な自分がいた。


 彼女が、師匠が、何を伝えたかったのか。

 最終試験の答え。


「それは、登りきってみないとわからないな」


 深い闇の中で考えていても切りが無い。

 俺には支えてくれた人が居る、こんなどうしようもない人間をな。


 さっさと登りきってから考えよう。

 俺は見よう見まねで覚えた占い師の目を言うのを使用する。


 ずっと先が見通せる訳ではないが、最善の一手くらいはわかるだろう。

 そして一本ずつ、剣と杖を残すと、後は全部亜空間に閉まった。


 初めからこうしておけば良かった。

 必要なものは最小限に。


 身軽になって再び上へ上へと登って行く。





 ——光が見えた。

 自問自答の果てに、多々ひたすら闇を進んだ。


 そして辿り着いた。

 石で作られた一つの部屋。


『……何を望み、何を為す』


 中央には老人が佇んでいた。

 俺は闇の穴から這い上がると、陽の光を浴びる老人に言う。


「もし、全てを破壊する力が欲しいと言ったらどうする?」


 長い間休憩も為しに塔を登らされていたんだ。

 少しくらいやり返したって良いと思った。


 老人は言った。


『……それが望みか』


 冗談が通じないタイプだった。

 俺は一つ溜息をついて言葉を返す。


「初めは……一人で頂点を、強さの頂きを目指そうと思っていた」


『……思っていた?』


 才能無しだといわれても、一つの才能を持ち合わせていないと、そう目の前で断言されても、諦めきれなかったし、何でもやる覚悟でいた。


 自分の全てを犠牲にしてもな。

 でも今は違う。


「恩返しが、したいんだ」


『……ほう』


 俺をずっと心配してくれたギルマスに。

 手引きしてくれたあの神父に。

 悔しさを教えてくれた侍に。

 新しい生き方を教えてくれた師匠に。


「知りたいんだ、もっと多くを」


 人との付き合いなんて最低限で良いと、

 ギルドはただ強くなる道具だと、

 仲間は利害の一致だと、

 腹が減るのは生物だからだと、

 恋心を抱くのは病気みたいなものだと、


 気付けば色々なものを否定して来た人生だった。

 ゲームの世界ではない、リアルでも。

 俺はいつだって一人だった。

 認めていたのは唯一ロバストだけだったし、俺は依存していたんだな。


「一つ抜ければ、世界はこんなに明るくて、こんなに広い」


 賢人の塔からは景色が一望できた。

 遥か雲の上に位置するその部屋は、光を阻むものが無い。


『……では、知って何を為す』


「……それは」


 言葉が詰まった。


「そこまで大きい事は考えてないな」


 人によって自分の世界の広さは違う。

 俺がかなり狭かったように。

 懐が広い奴だってごろごろいる。


「ただ知りたい、恩返しがしたい。それだけだ」


 理由なんて無い。

 そんなものに理由なんて必要ない。


『……リージュアよ』


 老人がそう呟いて口笛を吹いた。

 何も遮るものがないその口笛の音色は、どこまでも伸びて行く。


 鳥の鳴き声が聞こえた。

 老人の傍らに、巨大な鳥が姿を表した。


『……乗るが良い』


 俺は一つ頷くと、その鳥の上に乗った。

 羽毛はかなり暖かく、心地よかった。


 大きく羽ばたく音がする。

 そして大空へ。


「すごいな」


 どこまでも続く山脈、

 どこまでも続く森、

 どこまでも続く川、

 どこまでも続く道。


『……世界は、広い』


 その通りだ。


『……同時に、狭い』


 俺の事か。


『……この光を、景色を、感動を失うな』


「わかった」


『……合格じゃ、賢人の力はきっと主の役に立つじゃろう』


 鳥は大きく旋回すると、元来た方向へと戻って行く。

 そして、しばらくこの老人と俺の修行生活が始まった。









 あくまでハザードの解釈。

 そして闇の中に一人で居て数日経っています。


 魔法学校の暗黒迷宮が屁でもなかったのはこういう経緯があるから。



新作!!

覇拳-素手で魔物を狩る派遣社員(時給1300円)-

http://book1.adouzi.eu.org/n6741dg/

連日更新中。お願いします。

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