表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/168

ハザードの選択

 ——戦慄した。


 ぐちゃぐちゃに潰されたもう人とは思えない死体から、無理矢理意識だけを……いや、魂を引っこ抜かれているかの様だった。


 ロッソの狂った様な叫び声と、シャドーの断末魔が重なり合う。ハザードにはただただ息を呑んで事態を見ている事しか出来なかった。


《ウオアアアアア———!!!!》


 変死体から実態が浮かび、もみくちゃになりながら歪んだ空間に吸い込まれて行くシャドーから、色んな光が発せられていた。


 走馬灯なのか?


 まるで夢の中に、記憶の中に、シャドーというなのパズルをぶちまけた様だった。そしてそれも、余す事無く歪みの中に吸い込まれて行く。


 ビデオの撒き戻りの様に最近の記憶からどんどん古い記憶まで、そしてついに、ロッソは有り得ない領域にまで手を染めてしまった。


「ギャッホゥ!! おいおいおいおいコレマジやべぇぞ!? ——はは、リアルのアイツの記憶じゃねーかっ」

「ッッ!?」


 消え行くパズルのピースの中に、ヘッドギアを装着して眠るシャドーの姿があった。そして、場面はどんどん変わって行く。


 残虐性、ゲームの世界でまで人殺しの快感に溺れいく男の始まりは、飼っていたオウムの首を手で圧し折って殺した時だった。


 小動物の殺傷は、どんどん大きくなって抑えきれなくなって行く。そして、惹かれ合う様にロッソに巡り会ったのだった。


「おうおうおう懐かしいなぁ!! これ、マジで逝っちまったのか?」


 愉快痛快に顔を歪ませて笑うロッソ。

 有り得ない狂気に、ハザードは震えを感じていた。


 如何なる戦いでも、冥界で無限とやり合った時も、精神は透き通る様にクリアな色を見せていたハザードだが、一応仲間とも言える存在を容易くぐちゃぐちゃにしてしまったロッソに、いや、確証を得なかったが、本当にリアルでの殺人を犯してしまったこの男に、ただならぬ恐怖を感じるのだ。


「ひっさびさだったぜ、この感覚———中坊の頃以来かなぁ」


 有り得ない力の行使を存分に味わったロッソはそう呟くと、思い出した様にハザードの方を向き直る。


「……殺人鬼め」


 ぽつりと呟いたハザードの言葉を耳にしたロッソはまた笑う。


「ギャッハハ!! そういやてめぇはアイツの仲間だったなぁ……殺したら、クッケケ、こ殺したらどんな顔するかなァ……アァッ!!!」


 フラフラと歩み寄るロッソが加速した。


「ディーテ!!!!」

(委細承知した!!!!)


 魔紋と賢紋が輝く。ハザードの足は一瞬でどす黒い魔人の足に変質する、そして魔人の持つ脚力で大きく跳躍し後退する。


 目の前が、——ドゴッォ!!

 崩れ去った。


 大迷宮の床が、壁が、天井が、まるで木片の様に破裂して飛び散る。


(我が友! 逃げろ! 逃げの一手を打て!)

「うるさい、黙れ」

(なっ!?)


 賢明に心に語りかけるディーテ。

 友を思う悪魔大王の叫びも虚しく。




 ———ハザードは心に決めていた事があった。




「負けても良い。ただ、物語のバトンくらいは繋がせて貰う」




 ———それは、一つのエゴかもしれない。




(……最早何も言うまい。我が友よ、そして我が友の友のために、我が輩も死力を尽くそうぞ)


 魂で繋がっているディーテには、ハザードの揺るがない意志が良く読み取れた。記憶も共有している、彼は握りこぶしに誓っているのだ。


「最も、負けるつもりは毛頭ない。みんなでディズニーいくんだ」


 ハザードは本気だ。


 一つの杖を地面に叩き付けると、バックパックの中から杖が六本浮かび上がり、そしてハザードの周りに配置される。


「あん? 何やっても一緒だよばぁーか」


 砂煙の中からヒタヒタと迫って来るロッソ。


「———七星圏……無限魔法」

「お?」


 ロッソは身体に急激な負担を感じた。縛り付ける様なそれでいて全身を削り取る様な、殴りつける様な原因不明の攻撃。


「何しやがったァァァアアア!!!」

「貴様、神父に一度も勝てなかったよな? ———俺は一度だけ勝利したぞ?」


 目を血走らせて激昂するロッソに向けて、ハザードは不敵に顔を歪ませた。


災禍ワウス!!! 滅びろォ!!!」


 魔王サタンが邪神の欠片を集めている際によく使っていたありとあらゆる災厄が一瞬にしてその身に押し寄せ風化させてしまう力。


暗黒の深淵(ダークアンドダーク)!!!」


 ハザードらしい戦い方。一遍に収束する力には、無限の闇の広がりを意味するディーテの力をぶつけて相殺する。そうして相手の手札を裁きつつ、己の秘技で迎え撃つ。


 それがハザードのやり方だった。

 ロッソが止まった。


「めんどくせぇな……雑魚が調子に乗りやがって」


(くるぞ!! 構えろ我が友!!)

「占眼しかないか!!」


 ハザードの瞳が白くなる。師であるメリンダから受け継いだ占い師の先を見通す眼。刻々と迫り来る運命に抗う為に、ハザードは何度も使用していた。


 過ぎた力には相応の負担がかかる。

 そして、視るものによっても同じだった。


悪魔の証明(デモンズプロバディオ)。——ただ闇を永遠に出し続けるだけのボッチ野郎が、どうして存在を担う俺に勝てると思う? はっは、証明できねぇな! 俺はお前でお前も俺で、同じ闇の穴から生まれた存在だ!! だがはい、明確な違いが存在する。俺は邪神でお前は違う」


(我が友よ、対抗しうる理由が無いぞ彼奴———我が輩達の間に大きな溝を作ってしまった)


 常識が塗り替えられた訳ではない。


 サタンもまたディーテが生み出し続けて来た闇の中でしか生きられない存在だったのも事実。闇に影響し合うサタンとディーテはお互いがお互いを必要としている。


 ただ、明確な差を突きつけた。

 相性が悪かったのだ。


「……視ろ、確りとだ」


 大局を大きく動かす悪魔の能力に対して、同じ様に運命を除く事の出来る瞳を持つハザードは必死に対抗していた。


(もう止めろ我が友。我が友!!!!)


 ハザードの眼はもう随分前に未来を見通した時から、限界を迎えていた。そして、眼には亀裂が入りそこから血の涙が溢れ出していた。


「俺は……友達が馬鹿にされて、黙っていられる程の愚か者じゃない」


 きっとある筈の綻びを突く。


「同じ闇から生まれたんなら……もっと……」

「残念、———死刑」


 ロッソも待ってくれる程、お人好しではない。視る事に集中し過ぎて動きが止まっていたハザードに肉薄すると、災禍が渦巻いたその右手を振り下ろそうとする。


(暗黒の深淵! 七星圏! 我が友! ハザードしっかりしろ!!!)


 かつて一人の神父の補助を行う小娘達を思い出し、ディーテも同じ様にハザードの代わりに能力を行使しようとする。


 無理矢理起動させた力は不完全で、何よりも格下宣言により深まり過ぎた溝。ディーテの努力も虚しく一つの災禍に全てのまれてしまった。


(……これまでか……切り札を使う間もなかったのか)


 諦めかけたその時。

 遥かにしたから全てを消し飛ばす光の奔流がほとばしった。


「うおおおおおお!!!」


 慌ててガードするロッソだったが、神聖な光は彼の力を大きく削ぐのに役に立ったらしい。同時に、彼の気を大きく引く事に成功する。


「ギャッハハハ!! この光、この力!! 下に嫌がったのかテメェエエエエエ!!! ギャハッギャハッ! 殺してやるよ神父様ヨォオオオッッ!!!」


 抉られた迷宮の大きな穴へとロッソは飛び込もうとする。

 そこでハザードは我を取り戻した。


「礼を言うぞ神父。心が折れかけていた……あの光は本当に暖かい」


(切り札をここでつかうのか!?)


 ディーテの問いにハザードは頷いた。そして狂った様にゲラ笑いを浮かべるロッソの方を向く。元々ここへ来て視力なんかとうの昔に無くなりかけていた。


 運命を占った代償だった。

 でも守る為なら、何だってやってやる。


「解放するぞ! ——む(我が友後ろに気をッッ!)——ぐっ……?」


 胸から剣が生えていた。

 心臓が、一度大きく揺れた。


 震える身体を動かして、後ろに視線を向けると。

 ミストがハザードの影から出現し、彼の身体を貫いていた。


「この機会を幾度となく待ち望んでいた」


 その影の男も大きな怪我を追っていて満身創痍だった。


 二人はクボヤマが迷宮都市にやって来る前に大きな戦いをして、二人とも満身創痍になっていたのだ。


「……気が、付かなかった」

「諸刃で懐に突っ込んで影に侵入するなんて、思いも寄らないだろうからな。クフフフ、クフフフフフ」


 影の男も口からツーっと血を流して青ざめた顔をしているが、それ以上にハザードを確実に仕留めた事に対する喜びが大きい様だった。


「舐めんなよ」

「——ッ!?」


 ハザードの瞳に光が戻る。

 見えてない筈なのに。


「聖なる軍勢だっけな、それとも自動治癒か。どちらにせよ運が良かった。心臓が潰れていても、少しは動ける」

「こ、コイツ……」


 剣が胸を貫いたままだったが、ハザードは大きく身体を反転させ、ミストを殴った。そして、そして情けなく尻餅をついたミストに向かって呪文を唱える。


「ディメンション・奈落の揺り籠。——貴様は殺す価値もない。永遠に苦しめ」


 ディメンション・ゲートから一つの種が零れ落ち、ミストの膝の上で芽吹いた。とんでもない速度で、ミストの傷口や穴という穴から蔓が体内へと侵入して行く。


「ひっ!? い、いやだ!!」


 抵抗も虚しい。奈落の揺り籠と言う物は、冥界でプルートが育てていた植物を一つくすねて保管していた物であった。


 クボヤマがやられた物よりもランクは落ちるが、冥界さんの植物は魂を喰らって成長し続ける。そしてこの種は小さな治癒能力を持っていて、半永久的に宿主から魂を削り続けては回復させ、を繰り返すのだ。


「……限界か? いいやまだ後少し時間があるな」

(……本当に出すのか?)


「ああ、心を読めばわかるだろ」

(はぁ、これも定めか?)


「まぁバトンは必ず繋ぐ。人質を取られた状況じゃ、戦いにくいだろうからな」

(ここまでか、いやそれでこそ我が永遠の友である)


 ディーテとハザードの会話はここでストップする。

 無限の極みに辿り着いた時、再びアレと邂逅を果たした。


 冥界を逃げだした"無限"だ。

 そして、あの時逃がした事を盾に、ハザードは一つだけ願いを聞いてくれる様に話しを付けた。


 一応自分の力の一端を扱う程の才覚に。

 無限も興味を示す。


 そして、力を一度だけ貸す事に同意した。













「聞こえてるか?




 今が願う時だ




 俺の願いはただ一つ




 ロッソに囚われた女を




 安全な場所へ




 解放してやってくれ」







《対価は?》







「あの時取り逃がした俺の全てを持って行け」







 突風というのか。

 地下に大きな風の様なものが吹き抜けた。


「—————未来に福音を———」


 ハザードの抜け殻は確かにそう言っていた。

 そして、ディーテを含むハザードの持ち物は全て。


 何もかも。

 そう、何もかも。


 無限に取り尽くされてしまった。

 数多ある意志の内の一つに。


 ハザードに帰る場所はもう無い。

 そして抜け殻は優しく微笑んでいた。



















「ちょっと……なんで何も着てないのよ。ってか一体ここはどこなのよー!」







 ……やってしまった。

 今日はもう書く気起きないっす。


 寝たら復活するかもだけど。








 @tera_father

 ツイッターとかよろしくお願いします。




 最近新しいの書いてます。

 ドタバタほのぼのハートフルボッコメディーです。


 《チート能力?-いいえ超絶バッドステータスです-》

 http://book1.adouzi.eu.org/n3555dg/

 是非どぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ