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仲間の座、ヒロインの座


「ほんっとに! 相変わらず何度も何度も世話かけるぜあの嬢ちゃん!」


 迷宮都市の石造りの建物を飛び越えながら、銀狼と化したバンドは首を横に大きく振ってうんざりする。


「それよりクボヤマはどこにいったんだ?」


 バンドの毛を鷲掴みにして振り落とされない様にバランスを取るエヴァンは当然の如く疑問に思った事を聞く。


「仲間に連れられてとっくに迷宮の中だろうさ!」


 バンドは歯噛みする。

 一言くらい声を掛けてくれたら良いものの、獣人の国ナチュラヴィアでもそうだった。勢いに任せてぶん殴ってしまったが、クボはこういう所が本当に抜けている。


「自分一人で戦ってると思うなよおおおお!!!」


 銀狼の悲痛な遠吠えが響く。

 遠吠えの方角を、遥か上空を見上げれば、一羽の鴉がグルグルと旋回していた。


「……うーん、誰かの使い魔だよなぁアレ。本当に危機を知らせてくれたってのか?」

「ああ、クボヤマの友人が迷宮都市全域に目を光らせてるってよ……化物か」


 そしてその使い魔が教えてくれた。


 "真紅の髪の女性が危険"


 スカーレット。バンドはそれがルビー・スカーレットのことであると一瞬で気付いた。何しろ、ここまでの騒動の発端が彼女であり、魔大陸に渡って来る所から迷宮都市に来るまでの全て、彼は巻込まれ続けているのだから。


「はぁぁ……船の時間ずらせば良かったかなぁ……」


 今までを思い返して弱音を吐くバンドに、エヴァンが聞く。


「後悔しているのか?」


 バンドは一旦黙る。

 そして一つ溜息をすると言った。


「はぁ…………後悔なんてするもんかよ」


 銀狼と竜の子は迷宮都市を駆け抜ける。

 仲間を救う為に。








---




<ギルド-福音の女神(GoodNews)-の大聖堂にて>


 聖王国ビクトリアの中央聖都にあるギルド-福音の女神-。


 そのギルドは、ギルドマスターの本職である"神父"になぞらえて、大きな教会の形をした建造物でもある。


 目の前に女神教団の総本山である大教会があるというのに……。


 当時、真っ向から喧嘩を売って行くスタイルで造られた建物は、ハンター協会から認可を受けた指定ギルドだという事で、教団の老獪達の口を封じる。


 尚且つ。


 強敵から絶対的な守備力を誇っていた女神教団とそれらが治める都市の一部が邪神の軍勢によって壊滅させられ大打撃を受けるという失態。


 慌てふためくも、それぞれで利権争いをしている老獪達。そんな中で邪神を返り討ちにしたのが、福音の女神のギルドマスターである————現職法王クボヤマだった。


 お気づきだと思うが。


 中央聖都ビクトリアの中心に、そびえたるは二つの大教会(その内ひとつはギルドだけどね)。その二つのトップに君臨するのがクボヤマなのである。


 教団の老獪達は、最早何も言えない。エリックの隠し球でこそあれ、前職である特務枢機卿という立場ならば、いくらでもどうとでも出来たものの……。


 彼等は馬鹿ではない。

 自ずと理解していたわけだ。


 虎の子ジュードが死んでしまった今、邪神に太刀打ちできるのは彼しかいないと。


「あれ、セバスは?」


 人気の無い大聖堂に少女が二人。


 一人は赤毛で白いブラウスに赤いスカートとローブを身に纏った少女。

 もう一人はエルフによってデザインされたドレスタイプの戦闘服を身につけた金髪の女性。


 赤毛の少女が大聖堂に安置されている本に話しかけると、本が光りだして答えた。


『セバスチャン様は、女神教団の本部に呼び出されているようです』


 本の返答を聞いて、少女は二人とも呆れた表情をする。


「あいつも大変ね……」

「師匠がサボってるからデスカ?」


 本は疑問に機械の様に返答する。


『クボヤマ様が消息を絶ってから、ギルドマスター代理権を持つセバスチャン様が呼び出される回数が激増しています。一応彼の皺と白髪の統計も取ってありますが……』


 そう言った本に対して、赤毛の少女はバッサリ斬り捨てる。


「それはいいわ」


 それを聞いた本は、


『本当に苦労かけますね……セバスチャン様』


 と心の中で囁いた。


「それより、例のアレは?」

『ハザード様より承った七つの元素を利用した転移魔術ですか?』

「あ、ナギちゃん。なんだかんだ上手くやっテルみたいなんデスネ?」


 もう一人の少女が口を挟むが、ナギと呼ばれる赤毛の少女は意に介さない……かと思われれば、その頬は少し赤く染まっていた。


「ウィズ……余計な事言ったら燃やすから」

『私はこの世界で唯一の破壊不可属性をかねそな』

「自滅論ぶn」

『大変申し訳ございませんでした。ささ、セバスチャン様に代わりまして私がティータイムの準備をいたしましょう』


 空中にぽっかり空いた穴から小洒落たテーブルと椅子と入れた手の紅茶が注がれたティーカップがおりて来る。


「ありがとう」

「ありがとうゴザイマス」


 赤毛の少女は紅茶を啜りながら言う。


「って違うわよ。時間が無いの、今はあなたと戯れてる場合じゃないわ」


 行儀よく椅子に座って紅茶を楽しみながらも少女は、タンッと小さく机を叩いて突っ込んだ。その様子を見てもう一人の少女はクスクス笑っている。


「"そこ"にずっと居たんだから、そっちの方はどうなってるのよ?」


 ——そこというのは、大聖堂にある運命の聖書が安置されていた台座だ。


『居心地は大変よろしゅうございましたよ? ——天界への繋がりは認識できますが、私が扱う魔力とはまた畑が違うという見解です』

「そっかぁ……」


 飽くなき探究心を持つ少女は、とても残念そうにしている。

 それを横目で見ていた少女も同じ様な面持ちだ。


「ここがクリアできれバ……師匠のプライベートルームへいけるとイウノニ!」

『エリー様の精界への扉は既に開かれている筈が……?』

「違うノ! そうじゃナイノ!」


 エリーと呼ばれる金髪の少女は、まずクボヤマが家族の様に慕っている"三人のとある少女達"の間に加わる事を画策している様だ。


『精界もまた、興味深い場所なんですが』


 色々と思案した本は、言葉を入念に選んでからそう一言だけ告げた。


「さて、MINEにも書いてある通り、皆でギルマスの尻を拭う時が来たみたいね」

「色々とウワサがありマスが……正ヒロインは私のモノデス!」


 飲み干したティーカップを戻すと、少女達は立ち上がった。


『座標はユウジン様から頂いてます。ですが、距離がありますので暫しお時間を』


 影が薄いながらも絶対的な力を持つ、この世界に一つだけの本が光りだす。





 四大元素に二つの対極の元素。

 そしてそれぞれの元となる七つ目の元素が交じり合い一つの術式を構築して行く。





『長距離転移は骨が折れますね。私、破壊不能属性ですけど——』





 魔法陣では無い。

 魔法陣を構成するスペルが、三次元的な動きで二人を包み込む。


 それぞれ意味を持ったスペルが形を作る。

 新しい構築式だったりするのだが、実は前例が居る。







『それではお二方、準備はいいですか? ——コチラが魔素、世に満ちたる根源の世界です』











 少し地の文の書き方を変えたりして。

 @tera_father



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