迷宮探索助成金制度を上手く使え
魔大陸にもハンター協会はもちろん存在する。広く一般から討伐優先のハンターまで、仕事を斡旋する役割を担うこの協会は、この世界の人々に無くてはならない物なのである。
巷で邪神教アップデートと言われている物も、このハンター協会の躍進に大きく関係している物であるというのだ。
迷宮にて発見されるのは、邪神教がまだ盛んだった時期。つまりかなり太古のアイテムが掘り起こされるのである。それは、希少鉱石であったり、長い年月をかけて魔力がしみ込んだ装備や道具等である。
アーティファクト系統と呼ばれそれはぽつぽつと世の中に流通し始めた。その価値を定め、流通の一手を担う事になったのがハンター協会と提携する商会達である。
迷宮一番乗りに名乗りを上げたリヴォルブが一つの迷宮から伝説級の武具を持ち帰ったと報告に上がってから、それはこの世界のハンター達も巻込んだ、一攫千金を夢見る迷宮時代へと発展して行ったのである。
ハンター協会も膨大に増えたハンターのお陰で潤い、規模を少しずつ拡大して行っているのである。
さて、物事のインフラを準備する時期。それは商会にとって最も重要な利権争いの時期でもあるのだ。ウチのセバスチャンは、その辺の事情にかなり詳しくなっていた。俺が邪神に敗北を喫してから、混沌の時代が来る事を予測し、ハンター協会へ物流やその他事業提携の打診を行っていたらしい。
要するに、一攫千金迷宮時代の構成に一枚噛んだ彼の資産は膨大な物へと膨れ上がっているのである。
そして事もあろうか、彼の上司という存在でもある俺は、そんな彼の努力の結晶である現ハンター協会の『迷宮探索助成金制度』を利用し、今回の休暇に置ける魔大陸観光の資金に当てようと考えている訳だ。
ハンター協会のクエストは多々ある物の、最近のトレンドとなっているのは迷宮探索である。実利が一番大きいからな。
だが、この世界に迷宮と言えば俺が知る限りだが、魔法都市と迷宮都市にしか無かった筈だ。人々は、未だ迷宮と言う物に慣れていなかった。
故に、現代知識における迷宮の大まかな攻略法等を知っているプレイヤー以外。そう、この世界出身のハンター達の命は、迷宮の養分となってしまった訳である。
だが、ゴールドラッシュさながら。どれだけ人を消費しても次から次に人が殺到する状態なのである。経済的視点から見ると、人口の大幅減少は人類の危機とも言えた。
邪神教め!
そこで、未開の地探索ギルドとして一躍を担っていたリヴォルブと連携して迷宮探索をマニュアル化。階層毎に別れている迷宮の地図化等を行っていった。
人類一丸となって邪神の作り出した迷宮に挑む様な図が出来ている訳である。これは、リヴォルブとハンター協会の橋渡しとなった人物であるセバス。彼が本当の勇者なのであろう。
スーパー高校生どころか、ハイパー高校生であった。
そして、色々と試された中で一番死亡者が少なく、かつハンターやハンター協会も実利を得る事が出来る『迷宮探索助成金制度』が確立されたのであった。
大まかに説明すれば、この制度を利用するハンター達は、逐一協会へ迷宮探索レポートを提出しなければならないが、迷宮探索の準備資金は協会側が負担してくれるという内容なのである。
探索によって出たアイテムは貰って良し。
この旨味があるだけで、ハンターはこの制度をガンガン利用する。
そしてハンター協会は集まった膨大なデータを元に迷宮攻略におけるサポート体勢を整えて行く。
あれ、ハンター協会に旨味が無いじゃない? って思ってる方を居ると思うが、裏話をしておこう。これは全部セバスに聞いた話なのだが、物流の流れが太くなる事に寄って商会はかなりの利益を得て行く訳である。
ハンター協会からハンター達へ流れたお金は、ハンター達が盛んに消費する。薬代や武器の修理代、宿屋などその諸々、そして得たアイテムを売る時に商人を使うだろう。
そんなお金は、商会へ流れる仕組みになっている。
そして商会は、ハンター協会へ出資する。
セバスチャン、お前って奴は学校で一体何の勉強をしてるんだ。
戦闘に関してはいつもやられ役立った彼は、恐ろしい程の権力を手にする様になってしまった。最早執事じゃない。
「では、クボヤマさまのパーティは助成金の利用という事で、利用項目や規則等を記載していますこのマニュアルを一読して頂いて、代表者のサインをお願いします」
「ここのパーティランクって一体どういう事だ?」
俺は、ハンター協会の受付から手渡された察しを軽く眺める。そこにはパーティランクEと書かれた項目を目にする。確か前は個人個人にしかハンターランクと言う物は無かった気がする。
「あ、そちらですか? 元々パーティでの戦力はそのパーティでの最高ランク者が基準だったのですが、迷宮探索は危険なので規則改定によって新しく追加された新基準となっております」
「ちょっとまって、それでなんで俺達がEランクなんだ?」
最低でもDはある筈だぞ。とうろ覚えの記憶を探りながら俺は受付の人に尋ねる。ちなみにハンターライセンスは無くした。記録は残っているらしいが、俺もルビーも再発行が必要らしい。
ちなみに銀貨一枚だった。二人で二枚。
「判断基準が六人一組となっております。え…と、今確認しました。クボヤマ様のハンターランクはDから変動が無い様ですね。ルビー様はCランク。パーティ基準でランク平均を割り出すと、Eランクになります」
要するに、ランクを数字で5だとすると、皆で30という数字になる。それを六で割ると平均ランクが5という訳だ。まぁ色々と細かい実績も加味して数値が変動するシステムなようだ。
連携が上手いチームだと、全員Bランクだとすると、パーティランクはB+〜Aだったりするそうだ。
「欲に目がくらんで少数で挑戦し、死亡してしまう事故が多発してしまったので、迷宮攻略のみ新規定を設けさせて頂いております」
なるほどな。
そして、助成金というのはパーティランクに比例して設定されているのである。ランクEは、一日銀貨三枚。パーティ単位なので、この世界は一ヶ月三十日だから、月単位で銀貨90枚貰える事になる。
「パーティメンバーの構成は随時変更可能となっておりますので、ご安心ください。二人は危険だと思うので改めてパーティを集め直して頂く事を推奨します」
受付さんからアドバイスを頂いた。が、しかし。迷宮よりも観光だ。とりあえず月単位で銀貨を貰えるみたいなので、貰える分だけ貰って、あとは適当に迷宮へと入って適当に規定レポートを報告しておさらばだと考えていた。
「二人で大丈夫だ。助成金は月単位での一括受け取りを希望する」
「申し訳ありません、現在のランクですと、魔大陸にある迷宮で行ける箇所はありませんので、迷宮での活動規定に引っ掛かってしまいますので助成金の申請をお受けする事が出来ません」
最初から言ってほしいよね。うん。
「ってかアンタ聞いた!? 私の方がランク上なんだけど!」
お前は受付の話を聞いていたのか。それどころじゃないのである。現職法王の俺に向かって私の方がランクが上だと宣う魔術さえ使えない市民プレイヤー。
「ですので、改めてパーティを集めてから申請頂いた方が助成金も含めて支給額も上がりますので……」
申し訳無さそうに言って来る受付の人。判るよ、うん。死亡事故を最低限にする為には、確りとした基準とそれを遵守する事が必要だ。ここは大人しく引き下がり、今日中にパーティメンバーを集めた方が吉と見た。
ランクDである俺が目指せる最高パーティランクは、Cが良いとこだろう。支給金額規定が迷宮攻略についてデカデカと用意された専用の掲示板に張ってある。それを見てみると……。
Eランク…一日銀貨3枚(一人当たり銅貨50枚、つまり5000ダリル)
Dランク…一日銀貨6枚(一人当たり銀貨1枚)+支度金一月銀貨10枚
Cランク…一日銀貨12枚(一人当たり銀貨2枚)+支度金一月銀貨20枚
C+ランク…一日銀貨12枚+支度金一月銀貨20枚+ボーナス一月銀貨20枚
となる。
Dランク以上になれば、支給額にプラスして支度金もつく。銀貨十枚はされど十枚だ。食費代になる。月単位で考えると90枚、190枚、380枚、400枚とかなりの数字になる訳だ。
ってか思ったのだけれど、Eランクよりしたが無いって事は、俺らは明らかにEランク以下だけど、お情けでEランクといった形か。
とほほ。と思わず言ってしまいそうな結論に、少し振らつく。いかん、精神的ダメージが足にきてる。精神力は膨大にある筈なのに。
目的が決定したな。
一先ずパーティを集めなければならない。
それも、迷宮に興味ないプレイヤー達である。
要するに名ばかり要員。
魔大陸にて、思わぬ自給自足の旅に。俺の頭はフル回転していた。如何にしてお金を稼ぐかと、そして如何にして休暇を楽しむか。
この二つの為に俺は勇往邁進するのである。そこには、セバスの上の立場でありながら平気でセバスの顔に泥を塗ってしまう行為を行う糞野郎が居た。
そう、俺の事である。
この世界の人は、プレイヤーも原住民も含めて基本的に日々を生きて行かなければならない。死ぬ事の無いプレイヤー達を集め、名ばかりパーティを作った所で結果なんぞ目に見えているのだが、果たして、そんなパーティメンバー達は見つかるのでしょうか?
乞うご期待。




