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軍の兵器だった最強の魔法機械少女、現在はSクラス探索者ですが迷宮内でひっそりカフェやってます  作者: しんとうさとる
エピソード7「カフェ・ノーラと恋の詩」

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5-3.拷問の心得はある




「はっ! これからが本番ってことだなっ!」


 勢いを増したトリーの拳をかわす。体を捻り、腕で攻撃をさばき、飛んできた蹴りをいなす。改めて観察すると彼女の体の至る所で不自然な魔素を感じ、それと同時に手足の動きが急加速しているよう。だから攻撃のタイミングを掴みづらかったのだと推測する。

 けれど仕掛けと魔素の感知さえできてしまえば問題ない。彼女の攻撃関連情報を更新し、次第に避け方にも余裕ができてきた。

 よって。


「消えたっ!?」

「こっち」


 彼女の攻撃をかわし、背後に回り込む。そして、その背中に拳を叩き込んだ。


「がっ!」


 彼女が真っ逆さまに地上へと落下していく。それでも激突の直前でなんとか姿勢を整えて着地。地面を蹴ってまた私の方へ、さらに速度を上げて接近戦を挑んできた。

 動きは速いのだけれど、そもそもトリー自身の格闘技能はそんなに高くはない。本格的に学んだことがないのか動きが我流でクセや無駄が多い。なので彼女の動き方を理解し、速度についていけさえできれば――


「ぐぁっ!?」


 対応は容易。蹴りを受け止め、代わりに腹部に掌打を振る舞う。空中を吹き飛んでいったところに、さらに十四.五ミリ弾を発射。さすがにそれは通らなかったけれど、こちらを見る彼女の目が最初とは明らかに変わっていた。


「こんの野郎っ……!」

「野郎ではない」

「うるせぇっ! こっから私も本気出してやるよっ!」


 そう叫んだ途端、彼女を中心として大規模な魔素の高まりを感知。無数の風魔導と思われる刃が飛来するけれども、驚異ではない。黒い翼で受け止めて、魔素の栄養として吸収させてもらう。


「……っ、ならっ!」


 再び足元から竜巻が迫ってくる。最初のそれとは感じる魔素が段違いであり、さすがにこれに巻き込まれてしまえばダメージは必至。とはいえ、当たらなければどうということはない話だ。

 翼をはためかせて回避。最初の時と同じように回避した方向へと竜巻が追いかけてくるけれど、それも織り込み済み。

 速度を調整し、ギリギリ追いつかれるかどうかという距離を保ちながら地上付近へ少しずつ高度を下げていく。そうして必死に逃げているさまを演出すると、さらに別方向からも同じような竜巻が迫ってきた。


「おら、逃げろ逃げろっ! 無様な姿を私に見せてみろよっ!」


 また一つ、また一つと次々に私の逃げ場を塞ぐように竜巻が増えていく。これほどの風魔導をいくつも同時に制御している時点で、やはり彼女も普通の人間ではないことは明らか。単に精霊の力に頼っているだけでなく十分な鍛錬の上で魔導を操っていることが推測できる。

 でも、問題はない。

 私に夢中なせいか、トリーの高度も下がってきている。地上との距離を確認して、私は彼女の方へと一直線に加速を開始した。


「はっ! 私を巻き込もうってか? 魂胆が見え見えなんだよっ!」


 ニヤリとトリーが笑って私を待ち受ける。

 そんな彼女に向かって私は――ミサイルを発射した。


「そんなもの――……っ!?」


 それを彼女が迎撃するよりも先に、私が弾丸を放つ。腕から放たれた十四.五ミリ弾がミサイルを貫き、私と彼女の間で爆発を引き起こした。

 炎と煙に包まれる。その中を突き破って、彼女へと肉薄していく。


「ちっ、舐めんじゃねぇよ……!」


 でもあくまでそれは目くらまし。彼女と激突する直前にバーニアを全力で噴かす。上空へと急旋回し、彼女の視線を頭上へと誘導することに成功した。


「逃さねぇってのぉ……!?」


 私を追いかけようとトリーが獰猛に口を歪ませる。が、それがすぐに驚愕に変わったのが見えた。

 彼女の脚を、私の作り出した影がつかんでいた。黒いタイツに絡みつき、動きを阻害する。もちろんたいした抵抗にはならないが、数秒彼女を留め置くには十分だ。

 影の触手をトリーが引き千切る。けれどその瞬間には彼女自身が竜巻に巻き込まれていた。


「こなくそっ……!」


 さすがに自分の術でやられるほど間抜けではないらしい。多少の傷は負ったようだがいずれも軽傷。すぐに風魔導を解除して、姿勢を整えていく。

 そこに。


「スイッチ」


 右腕の引き金を引く。腕をガトリングモードに変形して、小口径の弾丸が凄まじい速度で吐き出されていった。

 マズルフラッシュが断続的に私の顔を照らす。トリーも音に反応していたけれど、弾丸の嵐には反応しきれなかったようで、次々と彼女の肉体を傷つけていく。

 それでもパッシブで何か防御機構のようなものが働いているのか、微かに弾丸の軌道が逸らされて致命的な傷には至らないようだ。もっとも、十四.五ミリ弾でも彼女には届かなかったのだから私もガトリングモードにそこまでの期待はしていない。

 弾幕を隠れ蓑にして、冥魔導による矢を構成。黒き矢を展開し、ガトリングガンの弾丸に混ぜてトリーへと発射した。


「ぐ、このっ……ぎ、ぎゃあああああっっっ!!」


 弾丸に翻弄されながらも何とか一の矢、二の矢はトリーも回避した様子。けれど、三本目が彼女の左肩を貫いた。

 さらに四本目を発射。そのうえで翼をはためかせ、バーニアによる加速も追加してトリーへ一気に接近していく。


「こぉのぉ……! クソッタレのガキ――がはっ!?」


 四本目にも貫かれて怨嗟が彼女の口からあふれてきているけれど、その無駄口を押さえ、地上に向かってさらに加速。翼の黒い光とバーニアの青白い光をたなびかせ、流れ星となった私たちはやがて轟音を立てて地上へ墜落した。

 倉庫の壁を貫き、コンクリートの地面をえぐり取って停止。到底生身の人間では耐えられない衝撃ではあったはずなのだけれど――


「ぐ、ぎ、げほっ……! クソガキが! 殺してやる、殺してやる、絶対ぶち殺してやる――」


 トリーは相変わらず私に向かって血と一緒に怨嗟を吐き出し続けていた。この頑丈さ、やはり精霊と融合しているとみて間違いないと思料する。

 ここで終わらせるのは簡単。大切なシオを傷つけたのだから死を以て贖うことが当然ではあるけれど、情報は必要だ。


「問う。貴女を創ったのは何処の誰? 聖フォスタニア? エスト・ファジール帝国? それとも民間組織?」


 尋ねたところ、トリーからは血の混じった唾を吐きかけられた。どうやらこれが回答のつもりらしい。

 さて、どうしたものだろうか。幸い拷問の心得はある。彼女は頑丈だけれど、逆に考えれば多少の無茶(・・)でも壊れないということだ。

 まずは。再び十四.五ミリモードに腕を変形させ、銃口を彼女の目に押し付ける。トリーの瞳に恐怖が宿り、「ひっ……!」とくぐもった悲鳴が聞こえた。


「安心してほしい。貴女なら死にはしない。ただ――死ぬより痛い目に遭う、それだけ」


 ゆっくりと銃口を押し込んでいく。彼女が暴れるも、それも影の触手で縛り付け押さえつける。

 けれども。


「はーい、お姉さま。そこまでにしてくださりますか?」


 戦場にそぐわない明るい声が響いて、私は引こうとした引き金を止めたのだった。





お読み頂き、誠にありがとうございました!


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