第77話 美形は大変
「買いかぶりですよ。ゆっくりお話しする機会があったから男性だって思ったんですし。
フェラリーデさ…リードさんは整ったお顔立ちをしていらっしゃいますから。初対面だとそういうこともあるかもしれませんね。」
エルフだって知ってて話してましたし、エルフについての予備知識もありましたし、私の場合はズルしてたようなもんですから本質を見るなんて大層なもんじゃありません。
私が穏やかに否定すると、クルビスさんがゆるく首を振った。
「いや。リードが何回男だと言っても取り合わないやつの方が多かった。中には話を聞かずに付きまとうやつもいてな…。ハルカはリードが真面目に「自分は男だ」と言ったら信じようとしてくれるだろう?」
「それはもちろん。」
そりゃ、真面目に言われれば、そうなのかなって思いますよ。
頭から否定したり、取り合わないなんてことはしません。
頷くと、クルビスさんが嬉しそうに目を細めた。
…これ、よっぽど信じてもらえなかったんだろうな。しかも、ストーカーっぽいのもいたみたいだし。
で、クルビスさんはそれを知ってるんだ。
だから、こういう言い方になるんだと思う。
(美形も大変だなぁ。)
フェラリーデさんお気の毒様です…。
その麗しいお顔で苦労なさったんですね。
フェラリーデさんの苦労を思って同情していると、クルビスさんが周囲を見渡してから私のほうを向いて話す。
「よし。ここも特に異常はないようだから先に進むか。」
そう言って両手を私に向けて広げてくる。
…お姫様抱っこ再開ですね。よろしくお願いします。
「…ふっ。リードが喜びそうだな。」
移動を開始すると、クルビスさんが笑ってつぶやいた。
何をですか…って、もしかしてさっきの話ですか?
私が不思議そうに見上げたのがわかったのか、クルビスさんが話してくれた。
「ハルカがリードを男だとわかっていたと知れば、喜ぶだろうなと思ってな。リードはハルカを気に入っていたから。」
えっ。気に入られてたんですか?
そんな、あんな美形に気に入られるなんて恐れ多いっ。
私が驚いていると、クルビスさんが話を続ける。
「リードの話について行っていただろう?初めて聞く話ばかりのはずなのに、混乱するどころか質問までしてた。それをずいぶん評価していたからな。」
いやいやいや、単に必死だっただけですって。
他に情報源が無いんですもん。
一生懸命聞いて、異世界のことを少しでも把握したかったんですよ。
それに、フェラリーデさんの話ってすごいわかりやすかったですし。
クルビスさんから思いもよらない話を聞いて、ギョッとして首を横に振る。
これは過大評価だ。欲しい情報を提供してもらえたから食いついただけなのに。
「いいえっ。何もわからないから必死で聞けたんです。それに、フェラリーデさんのお話がとても丁寧でわかりやすかったからですよ。」
私の言葉を聞いて、クルビスさんが私の顔をジッと見る。
何でしょうか?




