第40話 珍しいって良いこと?
「自分で言うのも何ですが、私もクルビスも一族内ではとても珍しいのです。」
あ。やっぱりそうなんですか。
「私の髪はこの通り濃い緑色でしょう?」
フェラリーデさんが自分の髪を一房持って見せてくれる。
確かに。綺麗な緑色。夏の葉の色っていうか…。
(あの森がちょうどあんな感じの緑だったなぁ。)
5時間もいたから、あの緑は目に焼き付いている。
あの色が一番近いかも。
「ハルカさんのいらしたポムの小道があるでしょう?あの道を含めた森一帯を「深緑の森」と言います。
私の髪はあの森の色に似ていると言われています。」
あ、そうなんだ。今日来たばかりの私がそう感じたんだもんね。
そりゃ、ここの人たちだってそう思うか。
「時々、私のような髪の色の子供が一族に生まれます。その子は生まれ持った魔素の質と量が共に高いため、森の祝福を受けた子供として大事にされます。」
森の祝福かあ。いいなあ、そういうの。
珍しいことを怖がるんじゃなく、力があることを恐れるんじゃなく、祝福だって祝ってあげるんだ。
「いいですね。森の祝福って、すごく素敵な響きです。」
浮かんだことがするりと口から出た。
うわっ。何だか恥ずかしいセリフを言ったような。自分で言ってて照れるわ。
「ありがとうございます。クルビスも黒一色を身にまとって生まれて、家族にも一族にもとても喜ばれたのですよ。」
クルビスさんを見ると、目を細めて答えてくれた。
「ああ。俺のひい祖父さんが黒一色でな。そっくりだって言われて育った。」
クルビスさん誇らしげだ。きっと立派なお祖父さんなんだろうなぁ。
いいな。そういうのも。似てるところがあるのって、気恥ずかしいけど嬉しいもんだよね。
「そういうのもいいですね。きっと立派なお祖父様なんでしょうね。」
私が言うと、クルビスさんはますます目を細めて嬉しそうにする。
うん。いいな。私、親に似てるって言われてこんなに嬉しそうにしてたかな?
「ええ。このルシェモモの礎を築かれた方ですよ。シーリード族の中でもとても尊敬されています。クルビスと同じく黒一色で、とても強くて尊敬と憧れの対象でした。」
立派なお祖父さんだなぁ。地元の名士って言われるような方なのかな?
ん?なんか引っかかったような…。気のせい?
「そんなわけで、一般に、一色というのは珍しいことではありますが、良いことだと認識されています。ルシェモモの住民のうち、1%が一色のみの「単色」と呼ばれていますね。」
1%かぁ。珍しいっちゃ、珍しいかな。異常って程ではないみたい。
にしても、単色って。まんまだなぁ。わかりやすくていいけど。




