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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
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第148話 忙しいのは明日から

「それで、俺がこの街に来るように勧めたことになってるから、俺が身元引受責任者になる。外から来た者は、街の者の身元保証が必要でな。」



 たしかに。ルシェリードさんに勧められて来たなら、ルシェリードさんが私の身元を1番良く知ってるってことになるよね。

 ルシェリードさんに保障してもらうなら、「あやしいやつ」扱いにはならなそう。



「ありがとうございます。よろしくお願いします。」



 胸に手を当てて上体を傾ける。

 こんな面倒な女の身元を引き受けてくれるんだもん。感謝してもし足りない。



「いや、これも世界の望みのうちよ。」



 ルシェリードさんが目を細めて答えてくれる。

「世界の望み」ってなんだかすごい言葉。重々しい感じには聞こえないから、日本の「これも何かの縁」っていうのと似てたような表現なのかな。



 そういうのもフェラリーデさんに教えてもらいたいな。

 明日にでも聞いてみよう。



 それにしても、ルシェリードさんの笑い方ってクルビスさんそっくり。



(当たり前か。お祖父様だもんね。)



 ドラゴンとリザードマンなんだけど、やっぱりどこか似てる。

 血のつながりを感じるなぁ。



 ちらりとクルビスさんを見ると、こちらも微笑んでいた。

 うっ。ちょっとドキっとした。心臓に悪いなぁ。



「さて、急ぐ話はこれくらいだな。今日は疲れただろう。もう休んだ方がいい。」



 お気遣いありがとうございます。

 でも、今は結構元気なんですよね。気を失ってたからかな?



「眠くなくても、横になってるんだよ~?いろいろあって神経がさえてるから、今夜は眠れないかもしれないし。でも、安静が1番だからね?」



 ああ。それはあるかも。さっきも1人で考えてたら、後から後からいろんなこと思い出してたもんね。

 おかげで桜隠しの伝説まで思い出しちゃったし。役にたったけど。



「はい。眠れなくても横になっておきます。」



 わたしが安静を約束すると、メルバさんは満足そうに頷いてフェラリーデさんを見た。



「後で、リコのお茶を出してあげてくれる?蜜もたらして。」



「はい。メルはどうしましょう?」



「そうだねぇ。…ハルカちゃん。ミルクティーって好き?それともストレートの方がいいかな?」



「どちらも好きです。お茶は好きなので。」



 ストレートの方が美味しいお茶もあるしね。

 でも、アフターヌーンティーを楽しめるお店で、あの3段トレイと頼むならミルクティーかな。



「そっか。なら、メルも入れてくれる?その方が飲みやすいし。…甘い物は平気?」



「好きです。甘過ぎるものは苦手ですけど、果物の甘さとかはすごく好きです。」



 さすがに、「生クリームは飲み物です」っていうのはわからない。…妹がそうだったけど。

 あの子はよくケーキをホールで食べてたなぁ。うっぷ。



「うんうん。じゃあ、甘さは控えめにしとこうか。寝る前に飲むんだしね。」



 メルバさんが頷いて、フェラリーデさんが会釈して部屋を出て行った。

 これから用意してくれるんだろうな。すみません。ありがとうございます。



「ふむ。では、俺たちも出よう。ハルカ。俺はこれで中央に戻るが、何かあったらクルビスにでも言うといい。身元引受人として出来る限りのことをしよう。」



 ルシェリードさんのありがたい言葉にクルビスさんが頷く。

 心強い味方が出来たなぁ。頼れるひとがいるっていいよね。



「ありがとうございます。よろしくお願いします。」



 クルビスさんに向かって礼を取ると、クルビスさんも礼を返してくれた。

 しばらくここにいるんだし、クルビスさんになら相談しやすいよね。助かる。



「じゃ、そろそろ出ようか。長居してごめんね。」



「ああ。ではな、ハルカ。また来る。」



「俺は隣の部屋にいる。何かあったら声をかけてくれ。」



 話がまとまったところでメルバさん、ルシェリードさん、クルビスさんが椅子から立ち上がる。

 私はクルビスさんの話に頷いて、皆さんをベッドからお見送りした。



 明日から忙しくなりそう。

 覚えることが一杯だよね。



 とりあえず、メルバさんにも言われたことだし、安静にしてますか。

 お茶はまだかな?

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