第15話 挨拶は基本です
しばらくリザードマンの方を見ていたが、埒が明かないので諦めた。
なんで無視するんだろう。
戸惑いながらも、お茶を飲む。
今迄の話を聞いた後では、きちんと全部いただかなくては申し訳ない。私のために用意されたお茶だ。
ちゃんと左手はつないだままだけどね。
私だって気恥ずかしいけど、治療の一環と聞いては振りほどくことも出来ないし…手汗大丈夫かな?
ちなみにリザードマンは、顔の向きを緑のエルフの方に向け直して、私と繋いでない左手でお茶を飲んでいた。
こっちの方は見てもくれない。むう。
緑のエルフの方は面白そうに私とリザードマンを見比べながらお茶を飲んでいる。
…だから説明プリーズ!
「…そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。私は深緑の森の一族が一葉、フェラリーデと申します。どうぞリードとお呼び下さい。」
私の困惑の視線を華麗にスルーして、フェラリーデさんがカップを置いて、右手を胸にあてて軽く上体を傾けるようにして挨拶してくれる。
…そういや、言葉が通じたり危篤状態だった私の話に驚き過ぎて、自己紹介をすっかり忘れてた。
自分で思ったよりテンパってたんだなぁ。
自分の間抜けぶりに呆然としていると、リザードマンが私の方に身体を向けて、左手を胸にあてて先程のフェラリーデさんみたいに軽く上体を傾けて挨拶してくれる。
「俺はシーリード族のクルビス。このルシェモモの警備を預かっている。」
クルビスさんってば、魅惑のバリトンボイスが素敵です。
私も御二方の間に身体を向けて、右手を胸にあてて軽く上体を傾け見よう見まねで挨拶する。
コミュニケーションの第一歩は自己紹介だけど、何がタブーかわからないから、相手に合わせることにする。
「私はヒト族の里見遥加と申します。危ないところをお助けいただきありがとうございました。
突然こちらに来ることになり、正直まだ戸惑っております。厚かましいお願いですが、御二方に助けていただければ幸いです。」
種族はちょっと迷ったけど、ラノベにあった『ヒト族』を採用した。
お礼はもちろんだけど、これからのことを相談しないといけないから、お願いも言っておく。
ここにいるおふたりならいろいろ教えてくれそうだし。
「突然、ですか…。何やらいろいろとお聞きしなければいけないようですね。私の力の及ぶことなら喜んでお手伝いさせていただきます。」
フェラリーデさんが穏やかな笑みで頷いてくれる。
クルビスさんも目を細めて無言でゆっくり頷いてくれた。
「ありがとうございますっ。」
嬉しくて笑顔でお礼を言うと、クルビスさんは固まり、フェラリーデさんは苦笑していた。あれ?




