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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
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第134話 酔い覚ましはシロップ

 気持ち悪いのが止まらない。

 頭ん中をかきまぜられてるみたいぃ。



「ハルカッ。」



「ハルカさんっ。…おそらく、魔素酔いですね。クルビス、静かに運んでもらえますか?」



「わかった。医務局の奥か?」



「いえ、個室に移して下さい。準備は整えてます。」



 ご、ご迷惑をおかけします…。

 クルビスさんとフェラリーデさんの声を聞き流しながら、こみ上げる吐き気と戦っていた。








 *******************



「…知らない天井だ。」



 王道だよね。

 実際に異世界で言える人っていないと思ってたけど…。



(体験しちゃったよ。ここに来てから王道なことが続くなぁ。)



 エルフに会って、ドラゴンに会って、魔法…術式だっけ?も見て。

 そんで、目が覚めたら知らない天井でした…か。



 …王道過ぎる。

 私、世界なんて救えませんが?



「気が付かれましたか?」



 暗くなったと思ったら、綺麗な瞳が覗き込んできた。

 琥珀色だ。きれいだなぁ。



「ハルカさん?大丈夫ですか?」



 え、あ、この声フェラリーデさんだ。

 そうだ、私酔って気分が悪くなって…じゃあ、ここ病室?



「っ。大丈夫です。もう頭もすっきりしてますし。」



 迷惑かけちゃった。

 慌てて身体を起こそうとすると、やんわりと押しとどめられる。



「そのままで。無理はいけません。さあ、これを。酔い覚ましですよ。」



 全てを包み込む癒しの笑顔でカップが差し出された。

 中には青い液体が入っている。



 青いって言っても、ブルーハワイみたいなどぎつい青じゃなくて、淡い水色みたいな薄い青。

 綺麗だなぁ。キラキラしてる。…飲み物の色じゃないけど。



「酔い覚まし…ですか?」



 何で出来てるんですか?

 聞くのが怖いけど、聞かなきゃもっと怖くなる。



「ええ。ハルカさんは魔素酔いを起こされたのです。転移になれない方に良く見られる症状ですね。自分以外の魔素に拒否反応を起こすのです。」



 魔素酔いですか。

 乗り物酔いみたいなものかな?



 …えっと、それでですね。

 症状の説明はありがたいのですが、出来れば、これの元が何なのか教えていただけるとありがたいのですが…。



 思わずカップを見ると、フェラリーデさんが説明を続けてくれる。



「そちらの酔い覚ましは、薬草を煎じたものです。その色は薬草の色が水に溶け込んだものですね。」



 こっちの水って白いんだっけ。

 じゃあ、元の薬草の色は青ってことかな?



(芝生が青緑だったもんねぇ。もしかしたら、こっちでは葉っぱって青みがかったのが多いとか?)



 異世界の色彩には驚かされるばかりです。

 ま、とにかく、中身が薬草だとわかったことだし、とりあえず飲んでみよう。



 苦いだろうなぁ。

 えいっ。いっきだっ。



 ゴクゴクゴクッ



 あ、甘っ。

 何これシロップ?



「我慢してくださいね。『良薬は口に甘し』ですよ。」



 ん?何か違うような…。気のせいかな?

 …あまりの甘さに思考がしびれてる感じがする。

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