第134話 酔い覚ましはシロップ
気持ち悪いのが止まらない。
頭ん中をかきまぜられてるみたいぃ。
「ハルカッ。」
「ハルカさんっ。…おそらく、魔素酔いですね。クルビス、静かに運んでもらえますか?」
「わかった。医務局の奥か?」
「いえ、個室に移して下さい。準備は整えてます。」
ご、ご迷惑をおかけします…。
クルビスさんとフェラリーデさんの声を聞き流しながら、こみ上げる吐き気と戦っていた。
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「…知らない天井だ。」
王道だよね。
実際に異世界で言える人っていないと思ってたけど…。
(体験しちゃったよ。ここに来てから王道なことが続くなぁ。)
エルフに会って、ドラゴンに会って、魔法…術式だっけ?も見て。
そんで、目が覚めたら知らない天井でした…か。
…王道過ぎる。
私、世界なんて救えませんが?
「気が付かれましたか?」
暗くなったと思ったら、綺麗な瞳が覗き込んできた。
琥珀色だ。きれいだなぁ。
「ハルカさん?大丈夫ですか?」
え、あ、この声フェラリーデさんだ。
そうだ、私酔って気分が悪くなって…じゃあ、ここ病室?
「っ。大丈夫です。もう頭もすっきりしてますし。」
迷惑かけちゃった。
慌てて身体を起こそうとすると、やんわりと押しとどめられる。
「そのままで。無理はいけません。さあ、これを。酔い覚ましですよ。」
全てを包み込む癒しの笑顔でカップが差し出された。
中には青い液体が入っている。
青いって言っても、ブルーハワイみたいなどぎつい青じゃなくて、淡い水色みたいな薄い青。
綺麗だなぁ。キラキラしてる。…飲み物の色じゃないけど。
「酔い覚まし…ですか?」
何で出来てるんですか?
聞くのが怖いけど、聞かなきゃもっと怖くなる。
「ええ。ハルカさんは魔素酔いを起こされたのです。転移になれない方に良く見られる症状ですね。自分以外の魔素に拒否反応を起こすのです。」
魔素酔いですか。
乗り物酔いみたいなものかな?
…えっと、それでですね。
症状の説明はありがたいのですが、出来れば、これの元が何なのか教えていただけるとありがたいのですが…。
思わずカップを見ると、フェラリーデさんが説明を続けてくれる。
「そちらの酔い覚ましは、薬草を煎じたものです。その色は薬草の色が水に溶け込んだものですね。」
こっちの水って白いんだっけ。
じゃあ、元の薬草の色は青ってことかな?
(芝生が青緑だったもんねぇ。もしかしたら、こっちでは葉っぱって青みがかったのが多いとか?)
異世界の色彩には驚かされるばかりです。
ま、とにかく、中身が薬草だとわかったことだし、とりあえず飲んでみよう。
苦いだろうなぁ。
えいっ。いっきだっ。
ゴクゴクゴクッ
あ、甘っ。
何これシロップ?
「我慢してくださいね。『良薬は口に甘し』ですよ。」
ん?何か違うような…。気のせいかな?
…あまりの甘さに思考がしびれてる感じがする。




