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20.魔物加工チュートリアル

 最後の工程。つまり成体魔物肉の料理は、テントの傍の焚火で行われた。


 男を追いかけ焚火の傍に来た時には、すでに作業の準備は整っていた。

 調理を担当する先住民が一人、それを見守る族長。テントの補修をしていた御者も作業を終えたらしく、私たちとともに見物に参加する。


 私や村人たちに見守られながら、調理担当の先住民は大鍋に火をかけた。

 鍋に大量の油を入れて軽く熱すると、今度は細かく裂いた魔物肉。煮るように炒めながら、彼が取り出したのは見覚えのないスパイスと、砕かれた小石――ではない。

 粒の大きな岩塩だ。それを、惜しみなく鍋の中へと入れていく。


「肉にほとんど味がないから、強めに味を付ける。香りを補うために香草も多めに入れる」

「…………」


 む、と私は焚火を見つめたまま口をつぐむ。

 味付けね、味付け……。それに香草、と。


「油も風味付けを兼ねている。肉から油が抜けているから、他の獣のもので補うんだ」

「………………」


 う、うむ。

 油。油か…………。


「結局、素材の悪さを誤魔化すような調理になる。見ろ」


 と言って男が指さした先には、鍋の調理に並行して別の作業をする先住民がいた。

 彼らは深皿になにやら粉と水を入れ、パンでも作るように重たげに練っている。

 粉の一部は肉の入った大鍋にも渡され、どうやらとろみ付けに使われているようだ。


「……あの粉は?」

「夏芋の粉だ」

「夏芋」


 初耳すぎる。なんだそれは。草原の特産品?

 そして名前が夏芋と。……『夏』芋ね。

 ううむ…………。


「………………………………」


 ううむと唸る私に、男がなんとも不審そうな目を向ける。

 なにやら物言いたげな表情をよそに、しかし先住民の料理はどんどん進んでいた。


 すでに夏芋とやらの粉は捏ね終わり、彼らはそれを丸めて成型しているところ。

 捏ねた粉をこぶし大にちぎりとり、手のひらで軽く伸ばして具材を入れて包み込む。包んだら丸く平たく成形し、油を敷いた浅い鍋に並べ入れ、両面に軽く焼き目を付けたのち蓋をして少々。


 調理担当の先住民が蓋を取ると、ほっかりと湯気が立ち上った。


 まだ熱々のそれを、先住民は私たちに一つずつ手渡ししてくれる。

 受け取ってみれば、意外にも結構大きい。私の手のひらと同じくらいはあるだろうか。湯気とともに漂うのは、焦げた油の香ばしさと、ほんのり刺激的なスパイスの香り。朝食以降なにも食べていないこともあって、正直かなり食欲をそそる。

 同じく料理を渡された村人たちは、気を引かれつつも最初に口にする勇気がないらしい。


 まあ、見慣れない食べ物を見たら人間そんなものだ。特に、野蛮人と思っている相手ならね。

 それならここは領主として、私が最初の一人になるしかない。ファーストペンギン的にいただきます。ぱくっ。


 あっ、うま! これ普通に美味しいわ!

 調理方法からしてダンプリングとか具入りパンっぽいものを想像したけど、食感としてはかなり違う。芋の粉だからだろうか、ダンプリングみたいにもっちりともせず、パンのようなふわっとした感じでもなくて、もっと密度の高いねっちりとしたような歯触りがする。

 中の具材も、こうして食べると悪くない。低温で油を補ったからか、茹で上がりよりも肉が柔らかくなっている気がする。さらにはとろみをつけて具材をまとめたおかげで、食感の悪さがだいぶ誤魔化されている。

 具材の味付けはかなりスパイスが効いて塩辛いけれど、それを包むほんのり甘い芋の粉と合っている。芋で具材を厚めに包むことで、味の濃さと上手くバランスを取っているのだ。


 なるほどなるほど、こうするとパサパサとした食感も味のなさも気にならない。

 たしかに手間はかかるけど、狩猟の対象としてもいける味だ。私の反応を見て口にした他の村人たちも、表情を見るに評判は上々。むしろ村での悲惨な食生活が続いていたせいか、久しぶりのまっとうな食事に涙を流しているものさえいる。


 ううむ。魔物肉、悪くない。

 幼体を狩れないなら難しいかと思っていたけれど、これなら成体狩りを視野に入れてもいい。成体狩りも簡単ではないとはいえ、魔法発動後の魔物であれば幼体よりは可能性があるはずだ。


 ただし、ここでやはり懸念事項が一つ。

 それがなにかと言えば――――。



「――――お前の村、塩はあるのか」



 うむ、それ。

 内心を見透かしたようにかけられた言葉に、私はぎゅっと眉根を寄せた。


 声の主が相手が誰であるかは、もはや言うまでもない。

 ただし、声に振り向いて視線を向けた先。例の男の背後に立つ人物には、少し驚いた。


「族長が、話があると言っている。――もしも塩がなければくれてやってもいいと」


 男の後ろには、深い皺をさらに深めた老人が一人。

 先住民の族長が、相も変わらず鋭い視線で私を見据えていた。


「代わりに、取引がしたい、と」



ダンプリング(英語: dumpling)とは、小麦粉を練って茹でて、肉・野菜・果物・チーズなどを入れた焼き団子のこと(Wikipedia引用)


だそうです。

私は餃子として理解しています。


今回作ったのは具入りのいももちみたいな感じです。

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― 新着の感想 ―
 餃子というか…おやき?
[一言] 割と何処でも似たような物って出来るんだね…ロシアもたしか餃子みたいな料理ある。後はその土地土地で手に入る食材や風土で違いが出るくらい。
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