6.村の様子を見てみよう(3)
いなかった! よかったー!!!!
村の様子見は無事に終了! 他の作業の様子も、草集めの集会場と同じように鋼鉄の精神で居座って、ざっくり状況を把握できた。一緒について回ったヘレナと護衛二人が揃って胃の痛そうな顔をしていたけど、私はぜんぜん気にしないから大丈夫。
ついでに狩りに行っていた男衆が戻ってきたときに、少ない獲物も分けてもらってきた。
なんかみんな嫌そうな顔をしていたけど、これも別に気にしない。だってこっちは領主だからね。治める対価はちゃんともらわないとね。
ちなみに徴収した獲物は、捌いて調理までしてもらった。
村での食事内容を把握したかったのはもちろん、そもそもいるはずだったコックが逃げているのだから仕方ない。王都からここへ来るまでの道中では、野営時は御者に調理を任せていたけれど、彼も専門家ではないからね。今は馬が一財産だし、しばらくは本来の仕事に集中してもらおうと思う。
で、村の食事内容がなんだったかというと、ちょっとの肉と刻んだ首狩り草の浮いたスープに、水でうすーく溶いた小麦粉のクレープが一つ。おしまい。
まあおおよそ予想通りというべきか。小麦粉は、来年の作付け用のものを食用に回しているらしい。村人たちの話によると、作付け用の種子類だけは保管倉庫が別だったために、前領主に燃やされずに済んだのだそうだ。
おかげで、なんとか今は首の皮一枚で繋がっている状態だ。
というか、私としては繋がっているのがちょっと意外だった。正直、もう首は完全に切れていて、その日の食事もないくらいだと思っていた。
でも、少ないながらも食事は全員に行きわたっている。
狩りの収獲は人によってまちまちだけど、多いからと言って食事を多くとるわけでもなく、手ぶらで帰ってきた人が食いっぱぐれることもない。誰も手柄を独り占めせずに、すべて捌いて鍋の中だ。
配る内容は平等で、狩りに出た者も出ていない者も、女子供もわけへだてない。食事は集会場に集まって村の全員で一緒に取り、食事時に姿の見えない者は呼びにも行く。
少ない食事を分け合う姿は、まるで一つの家族みたいな光景だった。
こういうの、なんて言うんだっけ。原始共産制?
人数が少ないのと、極限状態で協力し合わないといけないのと、あとは極端な指導者がいないからこそ成り立つ景色なのかもしれない。
豊かではないけれど、正直悪い光景ではないと思う。この状態が維持できるのなら、これはこれで平和な一つの在り方なのだろう。
まあ維持できないから大問題なんですけどね。
冬が来れば狩りはできず、作付け用の小麦もいずれは尽きる。そして尽きたら来年は小麦の収穫ができなくなる。そうしたら、結局全員共倒れだ。
そもそも、今全員に食事が行きわたっているのも、たぶん昨年の冬とその後の病気で人口が激減したからなんじゃないかな。もともと、収穫量に対して人口が多すぎたんだと思う。それで必要な食料を確保できず、冬や病気を乗り越えられない者が出て、結果的にちょうどいい数に落ち着いてしまった、と。
なんだかひどく皮肉な話だ。
ただ、不謹慎だけど私としてはありがたい。
この状態なら、収支はトントンややマイナスという程度。ジリ貧なのは間違いないけれど、今すぐ崩壊の危険性はなさそうだ。
あとは、ここからどうやって余力を捻出し、冬季の備えをするかというところ。
さあ、ここからがお待ちかね。
楽しい楽しい、数字いじりのお時間だ。




