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9/15 ナッくんじゃなかった
寝転んでスマホを見ていると、背後で気配がした。
コトコトと音がして、何かあったかくて柔らかいものが背中に触れてきた。
首の隙間から手を後ろに伸ばしてみると、もふもふしたものに手が触れた。
「ふふ……。なっきゅん」
愛情をこめて、撫でてあげた。
「キミは……」
優しく撫でていた手を──
「こういうのが好きなんだよねっ!?」
ぎゅっと強く、顔を掴んでいるつもりで、握った。
ナッくんの顔が、てるてる坊主の顔のように、ぐしゃっと潰れた。
前からトコトコとナッくんがやって来た。
『何と遊んでるんだ?』
そんな顔をして私を見る。
後ろを見ると、それは衣装ケースの上からずり落ちてきた毛布だった……。





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