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ナッくん日記【フェレットとの生活】  作者: しいな ここみ
2023年 1月

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1/28(2) ミルクをあげる喜び

 ナッくんはミルクが大好きである。


 ミルクがもらえるとそれはもう、喜ぶ。


 しかし、じつは、ミルクをあげる私にとっても、それは喜びの時なのである。





 ミルクが欲しい時はとにかく私の前に来て、訴えかけるように見上げてくる。


 あるいは私が出掛ける前に、私がゴソゴソしていると、どこからか起き出して来て、『ミルク?』みたいな顔でトコトコ歩いてくる。





 ミルクの缶を私が手に取ると、『やったあ!』みたいにピョンと一回跳ねる。


 蓋を開けると動きが止まり、熱いまなざしでじっと私のすることを見守る。


 私がスプーンを持ち、粉ミルクを掬っている間にトイレへ走る。飲む前に出しておこうというのだろう。


 戻って来た時にまだ時間がかかるようだと、もう一回トイレへ走る。すぐに戻って来るので、トイレと私の前を忙しく往復することになる。


 今の季節はぬるま湯で作る。

 ポットの熱湯と水を合わせてぬるくする。

 分量をしくじってちょっと熱かった時は、冷ますのに時間がかかる。


 私がフーフーしている間、彼が待ちきれるわけなんてない。

 後ろ脚二本で立ち上がり、一生懸命、お皿の中を覗いてくる。

 前脚をお皿にひっかけようとする。


 ソワソワしすぎている。

『早く! 早く!』とワクワクが止まらない様子だ。



「はい、どうぞ」



 お皿を置くと、突っ込んでくる。


 お皿の中のミルクを一瞬、眺め回し、すぐに夢中でピチャピチャと飲みはじめる。


 飲みはじめるなり、目が真剣な悪魔のように吊り上がる。ミルクを飲む時はいつも顔が変わるのである。


 撫でても、何をしても、吸いついているようにミルクから離れない。まるで樹液に吸いつくカブトムシだ。


 とにかくそれはそれは嬉しそうに、美味しそうに飲んでくれる。


 これほど喜んでくれると、あげる私も嬉しくなるのである。





 飲み終えるとしばらく、とろける。


 絨毯に頬や顎の下を擦りつけて、まったりととろける。


『おいしかったあ〜……』みたいにミルクの余韻を楽しんでいる。


 私の隣に来て、まるで感謝の意思を伝えたがるように、ころころする。


 ころんと仰向けになって、幸せそうに、両手で顔を洗いはじめる。


 私が『ミルクをあげてよかった』と心から思わされるひとときだ。



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