1/28(2) ミルクをあげる喜び
ナッくんはミルクが大好きである。
ミルクがもらえるとそれはもう、喜ぶ。
しかし、じつは、ミルクをあげる私にとっても、それは喜びの時なのである。
ミルクが欲しい時はとにかく私の前に来て、訴えかけるように見上げてくる。
あるいは私が出掛ける前に、私がゴソゴソしていると、どこからか起き出して来て、『ミルク?』みたいな顔でトコトコ歩いてくる。
ミルクの缶を私が手に取ると、『やったあ!』みたいにピョンと一回跳ねる。
蓋を開けると動きが止まり、熱いまなざしでじっと私のすることを見守る。
私がスプーンを持ち、粉ミルクを掬っている間にトイレへ走る。飲む前に出しておこうというのだろう。
戻って来た時にまだ時間がかかるようだと、もう一回トイレへ走る。すぐに戻って来るので、トイレと私の前を忙しく往復することになる。
今の季節はぬるま湯で作る。
ポットの熱湯と水を合わせてぬるくする。
分量をしくじってちょっと熱かった時は、冷ますのに時間がかかる。
私がフーフーしている間、彼が待ちきれるわけなんてない。
後ろ脚二本で立ち上がり、一生懸命、お皿の中を覗いてくる。
前脚をお皿にひっかけようとする。
ソワソワしすぎている。
『早く! 早く!』とワクワクが止まらない様子だ。
「はい、どうぞ」
お皿を置くと、突っ込んでくる。
お皿の中のミルクを一瞬、眺め回し、すぐに夢中でピチャピチャと飲みはじめる。
飲みはじめるなり、目が真剣な悪魔のように吊り上がる。ミルクを飲む時はいつも顔が変わるのである。
撫でても、何をしても、吸いついているようにミルクから離れない。まるで樹液に吸いつくカブトムシだ。
とにかくそれはそれは嬉しそうに、美味しそうに飲んでくれる。
これほど喜んでくれると、あげる私も嬉しくなるのである。
飲み終えるとしばらく、とろける。
絨毯に頬や顎の下を擦りつけて、まったりととろける。
『おいしかったあ〜……』みたいにミルクの余韻を楽しんでいる。
私の隣に来て、まるで感謝の意思を伝えたがるように、ころころする。
ころんと仰向けになって、幸せそうに、両手で顔を洗いはじめる。
私が『ミルクをあげてよかった』と心から思わされるひとときだ。





by