7/23 ハム事件の真相を推理する
5月15日のことである。
被害者Sは夕食時、サラダにハムを合わせて食べていたところ、まだ1枚入っているハムの袋を奪われた。
犯人は白いイタチで名前は夏。
夏は奪ったハムを口にくわえたまま、テレビ台の下に逃走。
慌てて追いかけた被害者Sがテレビ台をどけて見ると、逃走した犯人がテレビの裏ですっとぼけた顔をして立っており、ハムはどこかに消えていた。
さらに探したところ、ハムの袋だけが見つかった。しかし被害者が犯人を追い詰めるまでの時間はほんの数秒。その間に犯人が中身のハム1枚を完食してしまうことなど不可能である。また、犯人にハムを食べる趣味はなく、ただの悪戯目的の犯行であったことから、神隠し事件として処理された。
刑事部長が聞く。
「愛田谷刑事、この事件、どう思うかね?」
「はいっ」
愛田谷善三刑事はぼさーっとした顔をして答えた。
「聞いてませんでしたっ」
刑事部長がスルーする。
「ではハリー刑事に聞こう」
「これはやはり神隠しですよね」
若いハリー・ブレット刑事は熱のこもった声で答えた。
「凄いな。こんなことってあるんですね。俺、オカルト大好きだから興奮しちゃうよ。ああ、興奮したらコーラが飲みたくなっちゃった!」
頭を抱えてから、刑事部長は最後にサラス刑事に聞いた。
「君はどう考える? ベテランの勘による推理を聞かせてくれ」
「ごく最近、類似の事件があったって聞いたぜ」
71歳の老刑事ゲイリー・サラスは渋い声で答えた。
「被害者が仕事から帰ってみたら、部屋の真ん中にハムの袋が落ちてたそうだ」
「ああ、あったな」
「今、確認したが、7月14日だ」
「被害者は同じSだな」
「そう。それでSは前に盗られたハムの袋だけが出て来たものと勘違いした」
「事件当日にハムの袋だけは見つかっていたことを忘れていたんだよな」
「ああ。若くはないが、俺よりは大分若いくせにな。ボケてやがるんだ」
ゲイリー・サラスは被害者のことをバカにすると、話を続けた。
「つまり、同じことだったんだよ」
「……どういうことだ?」
「被害者はゴミ袋からよくゴミを夏に盗られていたらしい。Sは夏の常習被害者だったんだ。ベッドの下から冷凍食品の袋が出て来ることとか、よくあるらしいぜ」
「バカだな。ゴミ袋ちゃんと閉めとけ」
「だから、つまり……」
ゲイリー・サラスが推理の最終段階に入る。
「事件当日に、テレビ台をどけた後、よく探したら出て来たというそのハムの袋も、盗られたばかりのハムの袋じゃなかった。それより前にゴミ袋の中から盗られたものだったんだ」
「じゅうぶんあり得るな……。それで辻褄が合う」
刑事部長はうなずくと、聞いた。
「では……、消えたハムはどこに……?」
「ギターのソフトケースの中だ!」
ゲイリー・サラスがズバリと推理した。
「犯人の夏はよくその中に入り込んで寝ていると聞く! そして被害者Sはまだそこを調べていなかったという! そこだ! そこに違いない!」
Sはぺこりと頭を下げると、恥じ入るように言った。
「今日、仕事から帰ったら調べてみますm(_ _;)m」
ゲイリー・サラスさん(by 四宮楓さま♡)





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