表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の幼馴染が魔王でドS!  作者: めらめら
第1章 覚醒!
9/18

殺戮の宴

 ガンスが、右手を大きく振りかぶった。

「ふんが~~~~!」

 月光を冷たく反射した、人狼の巨大な水晶戦斧(クリスタルアックス)が、メイア向かって振り下ろされる。

どごっ!戦斧の一撃が、アスファルトを砕いて道路に大穴を開けた。

だが見ろ。いつのまにか、狼の狙った先に少女の姿は既にない。


 ふわり。


 あ。ガンスが頭上を仰いだ。メイアが舞っていたのは、空中だった。

人狼の戦斧を紙一重で避けるとそのまま、驚くべき跳躍を見せて彼の頭上に飛んだのだ。


 おお。


闇を舞うメイアの両の手に濛々と滾っているのは、狼の腕を瞬時に凍らせた、黒い魔炎。


「おわりだ!」

 そう言ってメイアは両の掌をガンスにかざした。


 ぼふうう!


メイアの掌底から噴き上がった黒い炎が、一瞬で人狼の全身を包む。だが……!


「がはは!無駄無駄無駄無駄~~!!」

 ガンスの高笑い。なんということだ、メイアの『炎』が、人狼の全身を覆った鎧に弾かれ、さらにはその表面に生えた幾本もの水晶柱に吸い込まれていく!


 ぶんっ!


 人狼がすかさず、左手に生えたもう一方の戦斧を空中のメイアむかって振り払う。


「ちっ!『(シルト)』!」

 空舞うメイアがそう叫ぶと……!


 がしっ!戦斧が何かに阻まれた。

……マントだった。メイアの体を覆ったマントが、一瞬で黒銀に輝く装甲と化して、人狼の戦斧を防いだのだ。


だが人狼の一撃は強烈。


「うぁああ!」

 メイアの体は、そのまま地面に叩きつけられ路上を転がった。


「ばかめ!何のために『キルシエ』を連れて来たと思ってる!」

 ガンスが、地面に転げたメイアを見下ろして笑う。


「お前ら『吹雪の一族』の業を封じるためなんだよ~~!」

 勝ち誇る人狼。

ああ見ろ。狼の纏った鎧の水晶柱は、メイアの黒炎を吸いこみ、封じて、闇の中でチラチラ不気味に光っているではないか。


「……なるほど……!犬コロなりに知恵を巡らせたか……」

 どうにか立ちあがったメイアがひとり呟く。


「だが……!」

 メイアが、ガンスを見上げると凄絶に嗤った。


「しょせんは犬!アサハカなんだよぉ!」

 少女は右手の指をパチリと鳴らした。


点火(zunden)!!」


 と、


 ごおお!


 ガンスの水晶甲冑に封じられて、チロチロと燃えていたメイアの炎が、再び、水晶柱の中で、猛然と燃え上がった。


「な、なにぃいいい!」

 驚愕の人狼。


 ばりん、ばりん、水晶柱が内側から膨れ上がり、次々と砕けて行く。

人狼の纏った鎧は、キラキラ光る破片と化して、地面に散乱した。


「そ、そんな~!」

 後には、斧だけは残った生身のガンス。


「あちゃー、やっぱだめか!あたしの『ランク』じゃメイアの炎は無理!」

 キルシエの落胆した声。


「きゃ、きゃい~~~~ん!」

 ガンスが、今度こそメイアから尻尾を巻いて逃げ出した。

だが間髪いれず、ぱちり。メイアのフィンガースナップ。


 ぼわっ!


 狼の後脚から炎が上がり、


「うぐうう!」

 ガンスは地面に転げた。


「ほれほれ犬コロ!さっきは調子こいてくれたなぁ~~~!」

 メイアが、嗜虐の笑みを浮かべてガンスに近づいていく。

黒衣の少女はガンスを睥睨すると、彼の右手にツと白魚の指を添えた。


 そして……

ぶちぶちぶち!メイアが、華奢な体からは想像もつかない腕力で、人狼の右腕から、水晶戦斧を引っこ抜いた。


「うぎゃ~~~~!痛い痛い痛い痛い痛い~~~~!!!」

 苦痛に泣き叫ぶ人狼。


「あははははぁー!いい声だぁ~~!」

 メイアが、緑の瞳をギラギラさせながらサディスティックに嗤った。


「ガンス!えーい!援護射撃~!!」

 みかねて、闇の奥のキルシエが一声。すると、


 ぴしん、ぴしん。


闇を舞う桜吹雪の中で、何かが軋んだ音をたてた。


 びす!


「うぅ!」

 メイアの右肩に、何かが突き刺さった。肩をおさえるメイア。刺さっていたのは、透明な水晶に覆われた、桜の花びら。


 ぴしん、ぴしん。


 風に舞って、鋭い水晶に覆われた花の弾丸が、メイアめがけて飛んでくる。


 だが、


「くだらん!」

 メイアが、信じられない力で人狼の巨体を持ち上げると、彼女の正面にかざした。


「ぐぎゃ~~~!」

 メイアの楯にされて、全身を水晶針(クリスタルニードル)に貫かれて蜂の巣となったガンスが、毛むくじゃらの全身を捩らせて絶叫する。


「無駄だ『花の精』!黙ってそこで見ていろ!」

 メイアが闇の奥を睨んで峻烈な一声。


「お前の『仕置(しおき)』は……後でたっぷりしてやる……!」

 少女はそう言って、黒衣を揺らしてニタリと笑った。


「びくっ!!」

 花吹雪からキルシエの声。


「じゃ……じゃーあたし帰るから!メイアの『お世話』はよろしくね、ガンス!」

 そう言って、キルシエの声が闇に遠ざかっていく。


「こ、こら!キルシエ~~!」

 ガンスが絶望の声を上げた。


「ふぅぅぁああァ!どぉしたぁ!その程度かぁ~~~犬コロぉお~~~!!!」

 なおも猛り狂うメイアが、頭上に持ち上げた人狼にそう叫んだ。

彼女の右手に、再び魔炎が滾っていく。炎は彼女の手を覆うと、黒く輝く、氷の刃を形作った。


「ぐぐ……!メイア!頭にのるなよ!調子コいてんのはてめーなんだよぉ!」

 満身創痍の人狼、なおも不敵にメイアに呻る。


「てめーがバルグル様に引き裂かれる姿!地獄でたっぷり見物してるぞ!」

 ガンスの咆哮。


「はッ!地獄で吼えてろ!」

 メイアが冷たく一声。次の瞬間!


魔氷鉄槌シュバルツァイス・ファウスト!!!」

 狼の頭部に、冷たく輝く氷の拳が叩きこまれた。


「ぐがああ!」

 ガンスの断末魔。がきっ!一瞬の後、人狼の頭蓋はひしゃげて、粉々に砕けていた。


 どさり。


メイアが、事切れた人狼の体をアスファルトに投げ捨てた。


 なんという凄惨な光景だろう。

無残に引き裂かれた人狼の体をメラメラ覆って、凍らせ、朽ちさせ、微塵と砕いて行く黒い魔炎の光芒。

その炎の揺らめきの只中で凛冽に光ったメイアの緑眼。口の端を淫らに歪めて冷たく笑う少女の姿は……!


「おお……!メイア様……完全復活じゃ~!」

 毛玉を震わせ藻爺(モージ)が歓声。


「せつな、無事みたいだな……」

 メイアが、せつなの方を向いた。


「う……うぅ!」

 痛みをこらえて、どうにか路上から立ちあがったせつなは、メイアを見た。


「メ……メイア……!」

 せつなは息を飲んだ。

改めて目の当たりにするメイアの変貌。全身を焔模様に覆った艶かしい黒衣。桜の舞う風にたなびくビロードのマント。


 緑に光った瞳がせつなをまっすぐに見つめている。


だが、そんな異様な姿なのに、せつなは、自分の顔が火照り、胸の鼓動が速まって行くのを抑えられなかった。


 きれいだった。


幼馴染みの姿を見て、そんなふうに思ったのは、初めての事だった。


 だが……


 メイアが、ツカツカとせつなの目の前に歩いてきた。

そして、せつなから視線をそらして下を向いた。

冷たく整った少女の顔に、禍々しい影がさした。


「か……カツサンド……!!」

 メイアが顔を伏せたまま、ボソリとそう呟いた。


「へ………?」

 せつなは( ゜д゜)ポカーンだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ