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俺の幼馴染が魔王でドS!  作者: めらめら
第1章 覚醒!
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不吉な影

「……ねえ、さっきのあれ、何だったのかな?」

 せつなと並んで早足のメイア。

「わかんね!UMA(未確認動物)か、ドッキリか……それよりさ」

 せつなが尋ねる。

「ナイト兄、あそこで何してたんだよ?他にもお巡りが沢山来てたしさ!」

「わからないけど……多分『あれ』だよ」

 答えるメイアの顔は暗い。

「『あれ』って、まさか通り魔の!?」

 せつなは驚いて彼女の方を向いた。

今月に入ってから、もう三件目になる市内の連続通り魔殺人。

その四件目がこんなに近所で……!せつなは何だかうすら寒い気分になった。


「犯人、まだ捕まんねーのかな?指紋とか証拠とかあるんだろ?」

 メイアに聞いても詮ない事だが、そう言わずにいられなかったせつな。


「それは……兄貴からは絶対に言うなって言われてるんだけど……」

 メイアが目を伏せて小声になる。


「『犯人』は人間じゃなくて『野犬』なんじゃないかって……」

「野犬?」

 せつなは首をかしげた。


 きんこんかんこーん。

始業を告げる鐘が聞こえた。


「やば!遅刻だ!」

 せつなとメイアが走り出した。

二人は、私立『聖痕十文字学園』の厳めしい校門を駆け足でくぐった。


 #


 どうにかこうにか、2年C組の教室に駆けこんだせつなとメイア。

「あら~二人とも、今日もなかよく遅刻ギリギリなんだから~~」

 前の席に座る風紀委員の炎浄院(えんじょういん)エナが、眼鏡を光らせながら意地悪く二人に言った。

 西安達ヶ原の大地主、炎浄院家のお嬢様だが、本人は微塵もそんなことを感じさせない真面目な佇まい。ルーズな事が我慢できない性分なのだ。


「うっさいなー!今日は仕方なかったんだよ!」

 言い訳がましく着席するせつな。その時。


「やっべー!間に合った!セーーフ!」

 学ランを肩に羽織った時城耕太ときしろコータが、慌ただしく教室に駆けこんできた。

せつなの親友だが、これまたせつなに輪をかけたボンクラ。万年遅刻大王の名をせつなと争う、学年の『双璧』だ。


「こ……コータくん……!」

 エナが困った顔で彼から目をそらした。


「こらっ!お前はセーフじゃねーだろ!」

 教卓からコータの襟首をひっ捕まえたのは、担任の緋川七瀬(ひかわナナセ)

飄々とした物腰の美術教師だが、生徒のサボり、遅刻には鉄拳も辞さない『武闘派』だ。


「で~~!す、すんませーん!」

 ナナセに締めあげられて涙目のコータ。


「コータくん……かわいそう……」

 エナは、いたましそうな顔で、伏し目がちにコータを見ていた。

 

 #


 昼休み。教室でせつながコータとだべっていた。

「なにしろ、検死しようにも『遺体』は、ほんのチョッピリしか残ってないんだってさ!」

 コータが焼きそばパンを食べながら、嬉しそうに話している。


「衣服や持ち物もズタズタにされてて、被害者の身元を確かめるにも苦労してるんだって!!警察は『野犬』の仕業だと思ってるらしいけど、いるか~?そんな犬?」


 親友の話を聞きながら、せつなは嫌そーな顔でほうじ茶をすすっていた。

朝方きいたメイアの話は、半ば公然の話として学校中に広がっているらしい。


「コータ、もうわかったからその話はやめろって。あとメイアにも話すなよ!」

 せつながコータを制した。

この手の猟奇話はコータに負けず大好きなせつなだったが、近所で実際にこんなことが起これば暗い気持にもなる。

その上、今日も宿題忘れの件で、担任のナナセにたっぷり絞られたのだ。


「だいたいコータ、今の話、一体誰から聞いたんだよ?」

 眉をよせていぶかるせつなに、

「今のって…『野犬』の話?ああ、メイアだよ」

 コータが牛乳を飲みながら、あっけらかんと答える。


「あいつの兄貴、刑事だろ。何か知ってるんじゃないかと思って昨日聞いてみたんだ。誰にも言うなって言われたから、誰にも言うなよ!」

 あちゃ。せつなは椅子からずりおちた。

コータに話したという事は、学年の全員に話したのと同じことだ。


「それよりさ、知ってるか?例の『お化け屋敷』に誰か引っ越して来たんだってさ!」


『お化け屋敷』?せつなは眉をひそめた。

 聖ヶ丘の中腹に構えられた大邸宅だ。

もう何十年も誰も住んでいない、荒れ放題の通称『お化け屋敷』。

長野の大富豪が東京に構えた別邸だと、まことしやかに言う者もいるが、本当のところはよくわからない。


 あそこに人が……せつなのうなじの産毛がかすかに逆立った。


 何かが、気になった。


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