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俺の幼馴染が魔王でドS!  作者: めらめら
第1章 覚醒!
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グダグダな月曜日

「あ゛~、眠みー、だりー、宿題やってねー!」


 花冷えが寝坊の身に堪える月曜の朝だ。

いつも通り、遅刻ギリギリで家を飛び出した如月(きさらぎ)せつなは、ゲッソリした顔で学校に向かっていた。

母親は、仕事のトラブルとかで、ここ一カ月は熊谷に出張中。父親は元よりほとんど家にいない。

離れて住んでいる姉のなゆたは、たまに家の片付けとせつなの『監視』にやってくるが、今週は彼氏と旅行らしい。


 つ・ま・り、今はせつなのやりたい放題。如月家はまさに、彼の城だった。

昨日も、せめて数学の宿題だけは終わらせようと思ったのに、その前に「10分だけ……っ」と思ってゲームに手を伸ばしたら、はいおしまい。

FPS『コール・オブ・アウターゴッズ』で5時間は撃ちまくりまくって、ベッドで気が付いたら朝だった。


「もー、せつな君、少しはシャキッとしなよ!」

 死んだ目で通学路を歩くせつなに横から呆れ顔でそう言ったのは、かわいらしい小顔にショートカットの黒髪をはずませた彼のクラスメート。


 せつなの幼馴染でもある、嵐堂鳴亜(らんどうメイア)だった。


遅刻大王のせつなを見かねて、ここ最近はわざわざ如月家まで、彼を迎えにきているのだ。


「それよりさ、せつな君、これ!今日のお弁当……」

 彼女がせつなに、おずおずと弁当箱を手渡した。

なんと、不在の両親にかわって、メイアが彼の昼飯まで用意しているのだ。


「うぅ……」

 せつなは、三段重ねのゴッツイ弁当箱をメイアから受け取った。


  ずっしり。


「今日のおかずは、麻婆豆腐とブリ大根だから!」

 愛くるしい笑顔でそう言うメイアだが、ビミョーな顔のせつな。

食べざかりのせつなだったが、メイアの『お弁当』は、なんだか色々と重いのだ。


「あ、あのさメイア、明日からさ、もう弁当はいいよ!」

 なんてことだ。せつなが、ぞんざいにメイアに言った。


「俺さ、購買のカツサンドとか焼きそばパンの方がいいんだよね……」

 この朴念仁(ぼくねんじん)が!!死ね!!筆者なら感涙にむせぶようなシチュエーションも、アホのせつなは何とも思っていないのだ。


「そ……そう……!じゃ、しょうがないか……」

 寂しそうに俯いたメイア。ギリッ!伏せた彼女の口元から、一瞬、歯ぎしりが漏れた。


 そんな、微妙かつグダグダなテンションで通学路を歩いて行く二人だったが、今朝はなんだか様子がおかしかった。

路肩に何台もパトカーが停まって、大勢のお巡りさんが、慌ただしく走り回ったり、近所の人に聞き込みをしているのだ。


「なにか事件かな…っと」

 微妙な空気をごまかすように、辺りを見回しながらそう言うせつな。その時、


「ん……?メイア?」

 隣を歩いていたはずのメイアが、いなかった。振り向くせつな。


メイアが、彼の何メートルか後方で、立ち尽くしたまま、何かを見つめている。

細い体がワナワナ震えていた。


「せつな君……あれ……」

 道を戻って来たせつなに気付いたメイアが、通学路から一本奥まった路地を指差した。


「いったいどうしたんだよ?」

 せつなは、彼女の指の先を追った。


 コロコロコロコロ……


「何だ……あれ?バレーボール?」

 せつなは、彼女が指差したものが、なんだかわからなかった。

大きさは確かにバレーボールくらいの球体が、ゆっくりと路地の奥に向かって転がっていくのだ。

だが、ボールではなかった。その表面は、フサフサとした緑色の毛で覆われているのだ。


「ま……毬藻!?」

 せつなは我が目を疑った。

確かに、巨大な毬藻としか形容しようのない毛玉が、電柱や自販機にぶつかり、弾みながら、せつな達から遠ざかっていく。


「こ……これは!」

 せつなが目を輝かせた。


UMA(未確認動物)だメイア!つかまえるぞ!」

 『つちのこ』や『チュパカブラ』が大好きなせつな。


「ちょっと、せつな君!遅刻するよ!」

 我に返ったメイアがせつなを引き止める


「えーい、放せ!メイア!俺達が第一発見者なんだぞ!」

 彼が毛玉を捕まえようと路地裏に走り出しかけた、その時だ。


「二人とも、そんな所で何してるんだ!」

 警官の一人が、せつなとメイアに気付いて寄ってきた。


「メイア、あとせつなも!何してるんだお前ら、もう学校だろ!」

 警官が目を丸くした。


「あ、兄貴!」

 メイアがきまりの悪そうな顔で下を向いた。

やってきたのはメイアの兄の乃斗(ナイト)

メイアとは一回り歳の離れた彼は、警察官として多摩署に勤務しているのだ。


「だって、あれを見てよ!…あえ?」

 路地裏を指さしたメイアは、拍子抜けして声を上げた。

すでに巨大な毛玉は路地の角に、その姿を消していたのだ。


「消えた……いつの間に……」

 無念の表情のせつな。せめて携帯で録画しとくべきだったが、その暇も無かった。


「そんなことより、おまえら学校だろ、こんな所うろついてないで早く行け!」

「でも兄貴……」


「……行け!」


 ナイトが語気を荒げた。

せつなとメイアは面食らった。妹のメイアも、ナイトのこんな厳しい顔を見たのは初めてだった。


「……わかったよナイト兄、行こーぜメイア!」

 せつなは渋々、メイアと学校に歩きだした。

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