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俺の幼馴染が魔王でドS!  作者: めらめら
第2章 魔軍集結!
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猛り立つ闇吹雪

「『接界』が始まる……って?」

 メイアと相対していた莉凛が首を傾げて藻爺(モージ)を見下ろす。


「待てよ毬藻のじっちゃん。呼び水になった『剣』は、このねーちゃんが壊したって……そう言わなかったっけ?」

「『ねーちゃん』じゃない! 私はメイアだ!」

 憮然とするメイアを脇目に藻爺(モージ)に尋ねる莉凛。


「感じるのじゃ。この一月の間、ヒトの世で削がれていた我が魔力が、急速に増していくのを……」

 藻爺(モージ)が毛玉を膨らませて答える。


「十年前の戦いでに砕け散った、強烈な魔気が、鬼神の爪の欠片が、再びこの地のどこか一つ処に集まって、復活を果たそうとしておる……!」

 毛玉は緑の繊毛を震わせて再びメイアに向き直った。


「メイア様! いま再び、『人間界』と『魔影世界(シャテンラント)』との境界が、崩れ去ろうとしております! メイア様のお目覚めも、魔の者達の襲撃も、その前兆……」

 飛び跳ねながらそう言う藻爺(モージ)に、


「ああ、わかっている藻爺(モージ)。さっきの連中はバルグルの配下。奴らもまた、力を取り戻している……」

 メイアの瞳が緑に光る。


「バルグル! 奴には色々聞きたい事がある! 『接界』のはじまりも、私の魂がヒトの身体に在るのも全て、何か理由があるはずだ!」

 メイアが、自分の両手を見つめながら、静かに、だが毅然とそう言った。


「相手はバルグルだけではありませぬぞ! メイア様!」

 なおも昂った毛玉が跳ねる。


「十年前の接界に興味を惹かれた他の魔王達もまた、この機に乗じてヒトの世に顕われ始めておるのです!」

 憤懣やるかたない藻爺(モージ)の声。


「奴らは……! 吹雪の国だけでは飽き足らず、女神の戒律を破り、人間界までも手中にせんと……!」

 悔しげに震える毛玉。


「……面白い! 鬼神の爪が復活するというのなら、再び私の氷で封じるまで! 己が分を(わきま)えずに世を乱そうとする者は、たとえ魔王衆といえど容赦はせぬ!」

 メイアの両手から、蒼黒い魔気が漂う。


「この闇吹雪くメイアが、片端から喰らい尽してやろう!」

 巨大毬藻を足元に従えたメイド服の少女が、表座敷の天井を見上げて敢然と叫んだ!


「……あの~、盛り上がってるところ悪いんですが……」

 メイアに踏みつけられて畳に潰れていたせつなが、ようやく何とか立ち上がると、息も絶え絶えに二人にそう言った。


「僕、もう帰ってもいいっすかねー? 明日も学校だし……」

 メイアに殴られ、首を絞められ、蹴られて、踏み潰されたせつな。

 もういやだ。早く家に帰ってプレステやって寝たい……!

 心のいろんな部分が折っぺっしょれた彼が、卑屈に笑いながらメイアにそう尋ねると……


「なん……だと……!」

 メイアが緑の瞳をギラリと光らせて、せつなを睨んだ。


「ひぃいいい! ごめんなさぁい!!」

 たちどころに土下座して、畳に額を擦りつけるせつなに、


「そうだな、せつな。もう帰るか! 明日も学校だしな」

 メイアが、あっけらかんとそう言った。


「あ……あえ? でも帰るってどこに……?」

 畳から顔を上げて唖然とするせつなに、


「あたしはあたしン()、おまえはおまえン()だろ? 何を言っているのだ?」

 あきれ顔でうっすらと笑うメイア。


「……というわけだ、莉凛、ご老人、世話になった!」

 そう言って莉凛と閻羅老人に会釈するメイア。


「ねーちゃ……メイア、元気になったみたいで何よりだぜ! また明日な! でも……」

 莉凛が、燃える髪を揺らしながらメイアのメイド服を矯めつ眇めつ。


「そのなりで、夜道は危ないんじゃねーか? タクシー呼ぼっか?」

 気遣う莉凛に、


「要らぬ心配だ、私は魔王。それに……」

 メイアが、唇の片端を歪めると、右手の指をパチリと鳴らした。


 ぼおおっ!!


 黒炎が、メイアの全身を覆う。

 炎に覆われ、クシャクシャと縮れ、崩れたメイド服は、メイアの体に密着すると、まだら模様に彼女の体を覆いながら、ウネウネその姿を変えていった。


「ふぉおおおお……」

 息を飲むせつなの前で、メイアを覆った黒炎が消える頃、今や彼女が身にまとっているのは、心なしか闇色を深めた聖痕十文字学園のブレザーだった。


「ああ……! メイドさん……!」

 ホッとしたような、少し残念なような溜息を洩らすせつなを尻目に、


「ご老人、そこの鞄を!」

 さっきの戦いでもどうにか無傷で残った自分のスクールバッグを閻羅老人から受け取るメイア。

 彼女がバッグのサイドポケットから取り出したのは、自分の携帯だった。


  ピッ! プルルルル…… プルルルル…… 

 

 メイアが携帯から発信。


「あー、兄貴? うん、あたし……ごめん! 今から帰るから! うん、ごめんマックでエナちゃん達と大事な話が……うん、お夕飯は冷蔵庫の奴を温めてよ! じゃあまた……うん、ほんとごめん、すぐ帰るから!」

 どうやら兄のナイトに電話しているらしい。


「へ……?」

 せつなは、またしても( ゜д゜)ポカーンだった。


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