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俺の幼馴染が魔王でドS!  作者: めらめら
第2章 魔軍集結!
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メイアの目覚め

「メイア様が、御自身の魔力を尽して放たれた魔氷の一撃で、『鬼神の爪』は砕け、融合しようとしていた二つの世界、『人間界』と『魔影世界(シャテンラント)』は、再び元の姿に還っていった……」

 藻爺(モージ)がせつなに言った。


「だが、吹雪の塔の頂上から闘いの成り行きを見届けた我らは、最後の最後で愕然とした。力尽きたメイア様が、落ちていくその先には、急速に縮んで、消えていく『接界点』があったのじゃ。メイア様の御身体(おからだ)は『接界点』のその先、人間界に消えていった……」

 藻爺(モージ)が呟く。


「それが、十年前のことじゃ……。なぜ、魔王衆バルグルがメイア様を邪魔してまで『接界』を望んでいたのか、今でも良く解らぬ。なぜなら、バルグルもまたメイア様を追うように『人間界』に姿を消してしまったからじゃ……」

 藻爺(モージ)が震える。


「以来十年、メイア様を失った吹雪の国は、他の魔王達に蹂躙され、引き裂かれた……。メイア様をお慕いする我ら臣下は『人間界』に逃げのびて、身を潜めながら、メイア様を探し求めたのじゃ」

 藻爺(モージ)はメイアを見た。


「人間界? だって、さっき『接界』は防いだって……?」

 首を傾げるせつなに、


「うむ。『鬼神の爪』が砕けた後も、世界は完全に元に戻ったわけではなかった。吹雪の塔の周辺の各所には、二つの世界を繋ぐ幾つもの小さな『綻び』が残ったままになったのじゃ。我等はその綻びを通じて、人間界に逃げのびた……」

 藻爺(モージ)が答える。


「だが、メイア様を探し当てることの難しさに、ヒトの世に出た我ら臣下は絶望した。人間界に出た我等の力は『魔影世界』に居た時の数百分の一に削がれ、互いの力を認識する『魔気』も、遥かに弱まってしまうのじゃ。これでは到底、メイア様を探し当てる事など叶わない……。我らが諦めかけたその時、再び『あれ』が始まり、メイア様が、御姿を(あらわ)したのじゃ!」

 昂る藻爺(モージ)


「でも待てよ! メイアは、俺が知ってた時から、もうずっと、『この世界』の人間だったんだぞ! 今更魔王なんて……?!」

 納得のいかないせつなに、


「おそらくは十年前、メイア様の魂が、この世界の人間の肉体に宿ったのじゃ。理由は解らぬが……?」

 藻爺(モージ)もまた毛玉を傾げた。


「十年前のあの時……あの時から先の事は、あたしも記憶が曖昧なのだ……」

 ふと、せつなの背後から、静かに語りかけて来る声が在った。


「……メイア!」

 振り返ったせつなの前で、俯きながらそう言ったのは、いつの間にか目を覚まして布団から半身を起したメイアだった。

 

「闇の中で微睡(まどろ)みながら気がつくと、あたしの魂はこの異世界の人間の肉体と、分ちがたく結びついていた……」

 メイアが澄んだ声で、誰にともなく訥々と呟く。


「あたしは、半分眠り、半分目覚めながら、この世界での『メイア』の生活と……」

 メイアが顔を上げた。


「せつな、お前を見ていた……」

 メイアが緑色の瞳で、せつなを、まっすぐに見つめて、そう言った。


「メイア……!?」

 せつなの胸の鼓動が高まる。顔がカッカと熱くなる。


 と、その時……!


「どわ~! なんだこれは~!」

 メイアの悲鳴。今になってようやく、自分の体を包むメイド服に気が付いたのだ。


「ふ、ふふ……吹雪の魔王たるこのあたしに、こんな服を……! せ~つ~なぁ~!!」

 ばっ! メイアが布団から跳ね上がると怒りに燃える目でせつなを睨んだ。


「でっ!? ちょまっ! メイア! 違う! 違うんだ!」

 事態の恐ろしさに気付いたせつなが、ジリジリとメイアから後ずさりながら、必死に弁解するも……!


 がきっ! 次の瞬間には、フリフリのエプロンドレスから伸びたメイアの脚が、せつなの鼻面に強烈な飛び膝蹴りをかましていた。


「ぶごわぁ~~~~!!」

 鼻血を撒き散らしながら畳を転げるせつなの、その背中を、


 むぎゅっ!


 メイアの素足が容赦なく踏みつけて、せつなを畳に擦り付けた。


 ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎり!


「メイア! 違う! 濡れ衣だって! 俺じゃないんだ~!!」

 せつなが、助けを求めるように閻羅老人の方を見上げる。

だが、燕尾服の老人は何も知らないかのように、シレッとせつなから目をそらした。


 ……こ、このジジイ!!


 せつなは愕然とした。

絶対に自分の趣味に決っている『メイドさん』などという趣向をメイアに押しつけておいて、この老人は全ての責をせつなに負わせようとしているのだ。


「う……ぐぐぐぅ……!!」

 閻羅老人の狡猾な策謀に歯噛みしつつも、メイアの仮借ない踏みつけの前に、ただジタバタするしかないせつなであった。


 みしみしみし。せつなの肋骨がおかしな音をたてはじめた。


 ……やべ……死ぬかも……

 

せつなが、ぼんやりそんなことを考え始めた、その時。


「まーまー、ねーちゃん! こいつも悪気はなかったんだ! 許してやってくれよ!」

 莉凛が、まるで自分は関係ないかのようにメイアにそう言うと、彼女を制してせつなから彼女を引き剥がした。


「お前はだまっておれ!!」

 びしゅっ!怒りの収まらないメイアが莉凛を向くと、彼の顎むけて瞬速のジャブをかました。だが……


 ばしっ!メイアの放った目にも止まらない突きを、莉凛が片手で受け止めた。


「あたしの突きを受けた……! お前はいったい……?」

 そういって緑の目を丸くしたメイアに、


「冥条莉凛。明日からお前と同じ学校なんだ。いきなり喧嘩はよそうぜ!」

 そう言って莉凛はニカリと笑った。


「くっ!」

 渋々拳を下ろしたメイアの前に、


「そんな事よりメイア様!」

 藻爺(モージ)がメイアの前に転がり出て言った。


「闘いにお備えくだされ! 再び『接界』が始まろうとしております……! この地にも、既に何人もの『魔王衆』が集って来ておりますぞ!」


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