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英雄ドルドラス三世  作者: 三国志浪
11/26

デコボココンビ

カドリア達は目立たぬ様に城を抜け出した。町中を通ると武術大会で凄くにぎわっている。その様子を見てカドリアは目を輝かせた。

「ローエル、少し街の様子を見てもいいかな?」

「カドリア様、お言葉ではございますが今は急がねば・・・」

「そうだよね。急ごう」

寂しそうに微笑むカドリアを見ると、ローエルの胸が苦しくなった。

「少しならば構いません。少しですよ」

念を押すようにローエルが繰り返す。それを聞いたカドリアは、

「うん。ありがとう」

そう言うと嬉しそうに微笑んだ。その顔を凝視できずにローエルは深々と頭を下げた。3人で街の中をぶらつくと、さまざまな屋台が出ており、中には武術大会の勝者を当てる賭けをやる店も出ていた。賭け率を見ると、「ザリガロ」という男が断トツで一番人気である。

(このザリガロという者が有名らしいな。ザリガロか。覚えておこう)

すると一人の長身の男が群衆をかき分けて入ってきた。その肩に小さな男が乗っている。

「おい、いくらまで賭けられるんだ。」

賭け屋の主人だろうと思われる男が、長身の男を見上げながら、

「5万までだ。」と答えた。

「ケッ、けちくせえな。なあ、コマル」

長身の男は方に乗っている小男に話しかける。

「うん、けち臭い。」

コマルと呼ばれた小さな男が答える。

「けちで結構だ。で、どうすんの?」賭け屋の主人は素っ気なく聞き返す。

「賭けるよ、賭ける。えっと、俺の名前は?」

長身の男は暫らくオッズ表を見ていたが、顔を上げると、

「おい親父、こりゃ~いかさまだぜ。」

それを聞き群衆がざわめく。店主は、むきになって、

「難癖つけるんじゃねぇ~。どこがいかさまなんだ?」

「だって、優勝者となる俺の名前がねえ。」

「お前の名前?何て名前だ」

「俺は徒歩部門に出るボルシェ、こいつは騎馬部門に出るコマル」

「はい、コマルです。」

肩に乗っている小男は丁寧に自己紹介した。

「有名な奴はほとんど載せたがなぁ。あんたらの流派と戦績は?」

「戦績?流派?そんなものは無い。我々はこういう大会に出るのは初めてだ」

それを聞いて、店主だけではなく群衆の中からも笑い声がおこった。

「それじゃここには載せられないねぇ。おっ、そうだ。ほら、ペンを貸すから自分で名前を書き足しな。」

そういうと店主がボルシェにペンを渡す。

「おっ、そうかい」

そういうとボルシェは、徒歩部門に自分の名前を、騎馬部門にコマルの名前を書き足した。それを見て群衆が大いに笑う。

「賭け率は?」

「まあ、10倍でいいだろう。」店主は適当に答える。

「ほう、では50万になるか。悪くない。親父、これは優勝した時の賭け率だよな?その後の隊長戦に勝ったらどうなる?」

その言葉を発すると、今度は群衆があきれたように野次を飛ばし始めた。

「お前さんたち、我が国の英雄であるお二人の隊長さんにも勝つつもりかい」

「当然だ。で賭け率は?」

「20倍」

「よし、乗った」

即座に、ボルシェがコマルに5万、自分に5万、合わせて10万を差し出す。コマルも肩から降りると同様に10万を賭ける。

「確認しておくが、もしも優勝しても隊長に負けたら金は入らないからね?」

「当然だ」

その答えを聞くと店主は、

「毎度あり」といい、ホクホク顔で金を受け取った。

「その言葉はこっちのセリフだぜ。合計200万、親父用意しておけよ。じゃあな」

そういうとボルシェは肩にコマルを乗せて立ち去る。二人がカドリアの前を通る時に、カドリアが、

「肩、重くないんですか?」

と話しかけた。ボルシェはカドリアの方を見ると、

「おっ、こりゃー奇麗な坊やだ。それがなぁ、重くないんだな。ほとんど重さを感じない。」

そういうとボルシェは右肩をぐるぐる回す。その上でコマルが小刻みに体を動かしている。どうやらバランスを取っているらしい。

「お前も俺たちに賭けな。大儲けできるぜ。じゃあな、奇麗な坊や」

そういうと二人は去っていった。

「面白い男が居るな。ますます武道大会が見たくなった。」

「カドリア様、そろそろ向かいませんと」

ローエルが控えめに言う。

「そうだね。向かおう」

3人は先を急いだ。

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