表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人メイちゃん、ストーカーを目指します!  作者: 小林晴幸
10さい:『序章』 破壊の足音を聞きながら
154/164

11-21.予定になかった闖入者



 

 炎に包まれた、村の真ん中で始まった老魔法使いの戦い。

 トーラス先生が此処にいるってことは、たぶん、村人さん達の避難誘導がひと段落ついたんだと思う。

 そうじゃなきゃ、足止めを必要とする程にもたついているか。

 どっちかはよくわかんないけど……準備期間は充分にあったはずだもん。

 きっと避難はトーラス先生の手を必要としないくらい進んでるんだと思う。

 ……そう思った方が、メイちゃんの心が安らかだから。

 だからそう思いこもうとしているって訳じゃないからね?!

 多分、セムレイヤ様に連絡したら確認も取れるんだろうけど。

 正直に言うと、セムレイヤ様に連絡して大丈夫って言ってもらいたいとも思ったけど。

 でもノア様(幻影)がいる間は、勘付かれる可能性があるので念話でのおしゃべりは禁止って約束していたから。

 自分の目で確かめに行きたい気持ちを堪えて、目の前の場面に集中しました。

 

 目の前で繰り広げられるのは、『ゲーム序章』でも佳境といえる現場。

 ここにリューク様達が遠からず駆け付ける、はず。

 つまりはこの戦いって、『ゲーム』では見られなかった部分なんだよね!

 師匠キャラとラスボスの幻影がタイマン張ってる訳だけど。

 ……これは、どっちが勝ってもいけない戦い。

 リューク様が来るまで、膠着していないといけない。

 

 ………………はず、なんだけどねえ!?


「おい、チビ共。体勢を整えろ」

「ヴェニ君? え、っと?」

「爺さんだけじゃ無理だ。勝てねえし、逃げらんねぇ。……が、爺さんの実力ならあの化け物に隙くらい作れるかもしれねえ」

「まさか!?」


「隙があったら間髪入れずに殴りに行く方針で用意しとけ」


 わあ、覚悟に満ちた漢の顔だね☆

 ……彼我の実力差を敏感に感じ取って、二の足踏んでた筈なのに。

 トーラス先生を見捨てるつもりはないってことなのか。

 それともトーラス先生がいれば勝てるとでも思ったのか。

 ヴェニ君が、まさかの参戦表明。

 ……しかも、メイ達も一緒に戦わないと駄目っぽい。

 無理だと言いたい。

 無理だと言ってしまいたい……!

 でも言えない!!

 なんてこったと頭を抱えた。


 だけど事態は、私の予想もヴェニ君の予測も超えて。

 予想外の方向に、暴走を始めた。


「喰らってもらいましょうぞ……我が極限の、最大火力(おくのて)を!!」

『ふん、老い耄れが……』


 開けた場所の全てを焼き尽すような、雷電が駆け巡る。

 トーラス先生の杖から放たれた魔力が、目に見える火花となって迸る。

 今のノア様は実体のない幻影だけど、この世界の生物が持つ魔力って言うのは元々『魂の持つ力』みたいな感じだった。つまり、実体をもたない精神体にも有効だったはず。

 それでも相手が神の幻影となると、下手な魔法は痛痒も与えず受け流されるだけ。

 だけど、トーラス先生ほどの実力者なら。

 決定打にはならなくても、蓄積ダメージは確実に降り積もる……!

 ノア様の最終奥義なら、なんとか……


 目の前で繰り広げられる戦いは、魔力によるもの。

 今までメイちゃんは獣人として生きてきたから、魔法とかそういうファンタジーな攻撃手段にはあまり縁がなかった。

 つまり、これがこの世界に生まれて初めて目にする、本格的な魔法戦……森を調査していた時のトーラス先生はあくまで私達の付き添いで、戦闘の補助はしても主導権はあくまで私達に譲り渡していた。使っていた魔法も、大したことのない威力のものばかりだったし。

 だけど今、目の前で繰り広げられているのは。

 一目でレベルが違うって知らしめられる様な、圧倒的な魔法の業。

 それを喰らっても受け流しちゃってるノア様(幻影)も凄いけど。

 私は何より、トーラス先生の繰り出す魔法の1つ1つに魅入られた。

 わあ、『ゲーム』画面そのままの魔法がいま、目の前で……!


 正直に言って、感動しました。


 そんなこと悠長に感じている場合じゃないって、わかってたんだけどね!

 だけど目を奪われずにはいられないような、超常現象の乱舞だったんだよ!

 あまりにも魔法が吹き荒れ放題なので、戦いの現場は一種の無法地帯というか……危険区域と化しました。


「あはははは……アレに乱入?」

「漏れなく流れ弾喰らいまくって消し炭になっちまうぞ、ヴェニ君」

「俺が悪かった……。ありゃ、介入は無理だな」

  

 戦場に飛び込めば、即・蜂の巣間違いナシです。

 ヴェニ君も顔を引き攣らせて、弟子達に下した殴り込みの指示を撤回しました。


 決定打にはならない魔法の嵐。

 最初に受け流された時点で、トーラス先生は私の読み通り蓄積ダメージ狙いに方針を切り換えた。

 今はコツコツ、数を放ってノア様(幻影)の足止めと疲労を狙っているのがわかる。

 ……本当なら、もうとっくに老体で疲労の激しいトーラス先生の方が体力の限界を突破して潰れちゃっていても、おかしくはなかったんだけど。

 多分、本来の『ゲーム序章』だったらとっくにそうなって、トーラス先生も戦い方を考えていたんだと思うけど。

 疲労の限界に挑戦するような、こんな無茶。

 なのに今のこの世界(・・・・・・)には、限界への挑戦を後押しするようなアイテムが存在した。しちゃっていた。


 そう……ロキシーちゃんが売り出した、特製栄養ドリンク『獅子奮迅G(ゴールド)』っていうアイテムが。


 あの栄養ドリンク、回復薬(ポーション)の類じゃないと思うんだけど……それなのにトーラス先生の限界を押し留める。その活力を奮い立たせ、気力を助ける。

 あはははは……アレ、本来はなかった筈のアイテムだよねー?

 …………もしかして私はまた、やっちゃったのかな。


 バタフライ効果ってやつを。


 老人なのにいつまでも衰えない体力と魔力に苛立ちを募らせたのは、乱れ撃ちを連打され放題のノア様(幻影)の方でした。

 煩わしげに攻撃魔法をノア様だって放つのですけど、封印されている上に幻影体だからか、ノア様の望む様な大きな魔法は撃てないらしく。前世で読んだファンブックの情報によると、小さな魔法は使い慣れていないそうで……以外に、自分の技量的な問題で苦戦されている様子。使える魔法の威力制限が、今のノア様にとって最大の敵です。

 だからノア様が攻撃しようとすると、まずは威力制限に引っ掛からないかどうかってところから確認が必要になるんだけど。

 その間にも蓄積ダメージ狙いでトーラス先生がばんばん魔法をぶつけてくる。

 下界の民の魔法をわざわざ避ける、防ぐという概念がないのか、それともプライドが邪魔をするのか、ほとんど対応せずに喰らいまくりで。トーラス先生撃ち放題だよ!

 やがて、その状況があまりに煩わし過ぎたのか。


『老い耄れが、調子に乗り追って……貴様なぞ、わざわざこの私が相手をするまでもないわ!!』


 ノア様(幻影)がキレた。


 そしてノア様(幻影)は、本来ならシナリオになかった暴挙に出ました。


『我が前に参れ、ラヴェントゥーラ!』


 ……ノア様(幻影)が叫んだのは、私も『ゲーム』で聞いたことのある名前で。

 聞いた瞬間、えってなりました。

 え、マジで……?って。

 だってそれ、この場ではありえない展開だったし。

 本当に全く、こんなことになるなんて思ってなかったから。


「――御前に」


 そして、そいつが現れちゃった。


 ノア様の呼びかけに、僅かの間も挟まず。

 本当に即応って感じで何処からともなく響いたのは、乾いた怜悧な男性の声。

 僅か声に遅れる形で、ノア様(幻影)の前に姿が現れました。

 初っ端から、ノア様(幻影)に跪いたその姿。

 うわぁーお、どっかで見たことあるー。

 どっかって言うか『ゲーム』で見たよ、あの姿―。


 ……っていうかアレ、ちゅ、中ボスぅぅぅううううううううううううっ!! 『ゲーム』本編の中ボスだよ、中ボスなんですけどぉぉおおおおおっ!

 本編中ボスが何故ここに!?

 序章では影も形も出てこない筈なのに!

 え、っていうか、えっ?

 これ一体、どんな状況!?

 本来、ここで師匠キャラと熾烈な戦いを繰り広げ、村を消滅させてリューク様達に絶望をもたらす筈の、ノア様(幻影)。

 ノア様の目的の1つに、わざとセムレイヤ様に化けた姿をリューク様に見せることで、リューク様の憎悪がセムレイヤ様に向くよう仕向ける、というモノがあった筈なんだけど。

 えっと、え、え、え!?

 ここで退場しちゃうの!? しちゃっていいの!?

 というかこれって一体どんな状況!? ボスの強さ的には型落ちで良いの!? それとも逆なのどっちなの!?

 実体をもたない幻影だけど、現時点では絶対に勝てないよう設定された序章のイベントボスと、神々の時代からノア様に忠誠を誓って来たスタイリッシュで出来る男のオーラを放つ神(弱体化)の本編中ボスじゃ……え、これ一体どっちが強いの?

 ノア様とはいえ、幻影だし。中ボスの方はちゃんと実体があるみたいだし……格が上なの、どっち!?

 め、めううぅぅぅ……メイちゃんの頭が大混乱、だよぅっ

 この場において、どう考えても厄介な相手のいきなりすぎる登場に。メイの頭は現実逃避も兼ねてか混乱しまくって、特に重要でもない方向で思考が走る。

 そうなっても仕方ないくらい、メイは動揺していました。


 キャラ……って現実世界でそんな呼び方をして良いのか、今更ながら疑問だけど。

 だけど私が知ってる情報は、『キャラクター』としてのものだから。

 だから、そういう表現をするけど。

 いきなり現れたあのキャラを、私は知っている。

 名前をラヴェントゥーラ、さっきも連呼した通り『ゲーム』に複数いる中ボスの1柱です。

 ノア様に忠実な男神で、セムレイヤ様の眷族によって下界に封じられていたんだけど……神々の戦争の割と初期の頃に封印されたので、零落して魔物になるのを免れた神でもある。

 経年劣化で緩んだ封印を破って自由の身となり、封印の影響で不調を引きずる体のままノア様の下に馳せ参じたって設定だったはず。

 『ゲーム』の中盤までは弱体化しているって話だったけど、それでもそんじょそこらの魔物よりはよっぽど強い。はず。

 でも、あるぇー? ……おかしい。

 この神様が封印を破るのって、まだもうちょっと先の未来だったはずなのに……なんでもう自由の身になってんの?

 え、これ、どういうこと???

 考えてもわかるはずのない、答えの見えない疑問に。

 『ゲーム』のシナリオが、明らかに狂ったこの事態に。

 メイは動揺して狼狽えるばかり。

 そして周囲の状況は、そんなメイちゃんが落ち着くのを待ってくれる筈もない。

 事態は刻々と、傍観者の心の安寧なんて考慮せずに変化していく。


「なんじゃ、この存在感……まるで、上位の存在の様な」


 何かを感じ取ったのか、戦いの現場ではトーラス先生も動揺を見せている。

 だけど動揺しながらも、その間も間断なく手元の杖から魔法が炸裂しまくっている。

 状況に流されない、とらわれないでやるべきことを迷いなく、やる。

 そんなトーラス先生、仕事人ぶりが素敵です。


 ちなみにノア様(幻影)とトーラス先生の間に割り込む形で現れたもんだから、中ボスさんは跪いた背中にトーラス先生の魔法をばんばん喰らっているよ。現在進行形で!

 でも意に介した様子もなく、涼しげにノア様(幻影)だけを見ている。

 アレはスルーしてるのかな。それとも気付いてないだけなのかな。

 どちらにしろ、トーラス先生の魔法が効いていないのは確かっぽい。

 

 そんな、この場面で現れるには最悪の神材に。

 ノア様(幻影)は冷徹な声音で命じました。


『そなたに我が代わりの名誉を与える。あの老い耄れを傷め付けてやるが良い』

「御意」


 御意って言っちゃったよ―――――!?

 うわ、ヤバい相手が了承しちゃいました。

 って了承しちゃって良いの!?

 まさかのまさか、有得ない筈の選手交代に。

 メイは、かっぱり開いた口が塞がりませんでした。

 

 え、これ……シナリオどうしよ。


 というかこの場に、リューク様達が来ちゃったらどうしよ!?


 ……どうやら、急遽ですけど。

 メイの望む未来の為にも……シナリオ修正を図るべく、何かしらの行動を起こさねばならないようです。


 問題は、中ボスの存在。

 ……ってことは、要は、ですけど。

 とりあえずこの場から中ボスを退場させちゃえば……まだ何とかストーリーの修正は効くよね!?

 誰かお願いだから、修正は可能だって言って(セムレイヤ)様!




主人公が戦わない最終章ってアレかなって思いまして。

戦わざるを得ない強敵、出してみました。


ただし封印の影響で戦闘中は●●●●になります。


さあこの●●●●に入る言葉とは……!?

 a.ドジッコ

 b.マサイ族

 c.ツンデレ

 d.魔女っ子

 e.カピバラ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ