第79話 スキル発動
広場に入った俺にスカルドラゴンが気づいた。
ゆっくりと顔を上げてこちらを見つめる。
……うへぇ、この辺のモンスター狩りまくってたな。
よく見たら周り一面血だらけだ。
「……ってこいつも手負いじゃん。何事?」
スカルドラゴンは一対の翼と4本足のはずだが、右側の翼と前足があるはずの部分がゴッソリ失くなってる。
:ふぁ!
:あれがスカルドラゴン?
:なんか割れてね?
:ドラゴンか?あれ
:もう瀕死じゃね?
:叩けば折れそう
グララララララララ!!!!
スカルドラゴンが吠えて、俺に向かって走ってきた。
「うわ!はやっ!」
ギリギリで噛みつき攻撃を回避
振り返ると俺が居た場所、地面ごとえぐり取ってる……
これはヤバイねー……
「うーん、これは秘密にしてたやつを使わないと無理だね。うん」
:落ち着いててくさ
:スカルドラゴンえっぐ
:おっさんの本気はよ
:スカルドラゴンワンパン期待
「いや、ワンパンは出来ないよ!多分!」
手負いでも深層モンスターだからね。
あと手負いの方が殺気だってるから攻撃強くなるし。
:ほんとでござるかー?
:無意識ワンパン、あると思います
:ワンパン!ワンパン!
コメントに心配の声がない……
もう少し心配してもいいんじゃない?
スカルドラゴンは噛み砕いていたのが地面だけなのを気づいたようで俺を探して首を左右に振りだした。
よく見ると顔も右側が欠けてる。
……これは早めに深層に入らないといけないかも。
「んじゃ、ちょっと本気見せますかー。スキル『巨人の拳』」
俺の宣言と共に右腕が赤く染まると形が変わっていく。
『巨人の拳』は俺の秘密にしているスキル。
正確にはスキルではないけど、まぁそれはおいおい。
腕の変形が終わると、明らかに人間の腕ではないなにかになっている。
拳のサイズだけで俺の顔の3倍ぐらいに巨大化している。
……うん、毎回ビビるぐらいに凶悪な見た目だよな。
:おっさん、変形キター!
:第二形態かよ!
:あと2つぐらい形態残してそう
:禍々しい
:でっけーこぶし!!!
「形態変化は疲れるからやらないんだけどそーもいってられなさそうだし。じゃとりあえず一発」
ジャンプしてスカルドラゴンの顔まで飛び上がる。
「そーれっ!どーん!!!」
ヒビが入っている顔面に拳を突き立てた。




