第41話 NO NAME
読みとり始めて一時間がたった頃、マシーンの音が止んだ。
やっと出力が終わったみたいだ。
「……合計討伐数880万を超えてますよ……しかも深層のモンスターもすごい数討伐してるじゃないですか……」
「いやー、ネットで深層のモンスターは美味しいと聞きまして、学生時代にしこたま潜ってまして……」
「……当時Eランクでしたよね?」
うぅ、福崎さんからの視線がいたいです……
モンスターの美味しさは強ければ強いほど美味しい。
ある探索者がネットで呟いたことで発覚した事実。
深層は下層と比べて段違いの世界。
弱肉強食が日常茶飯事。
その世界で生き残っていたモンスターはその命を守るために無駄なものが削ぎ落とされて美味しくなる。
……あと魔力が多いやつも美味しいそうだ。
知らんけど。
「しかも!このNO NAMEってなんですか!?最低でも7頭!他にもちょいちょいはてなマークが付いてるやつもいるし!何なんですか!?」
「あー……多分あれかなー。確かに、あの時は死にかけましたねー」
「新種のモンスターですか?もう何が来ても驚かない自信がありますけど、詳しく教えてください」
「……深淵のモンスター、しかも普通にしゃべってきたのでボスクラスのやばいやつでした」
「へ?」
大学時代、深層からさらに下――深淵に興味が出たときに足を踏み入れたことがあった。
軽いノリで行ってみたけど、深淵は文字通り別次元の環境だった。
今思えば異世界に転移させられてたんだろうなー。
深淵での探索は楽しいことが多かったけどそれ以前に死にかけることが多かった。
特に深淵のさらに奥、荒廃した大地が広がる場所で、俺は出会った。
……人の言葉をしゃべるモンスター、いや化け物達に。
確か何たら12王とか自己紹介されたけど、流石に覚えられないよ。
向こうの言葉、難しい。
ボロボロになりながら7番目の王を倒して、運良く帰還用のレアアイテムが出たので急いで帰ってきたんだったなー。
それ以来深淵にいくのはやめてるんだよね。
てか、探索に時間がかかるし。
時間軸がズレてるからか向こうで3年ぐらい探索してたけど帰ってきたら1ヶ月しか経ってないもんね。
もう学生生活ボロボロよ。
「へー、そうだったんですねー……って深淵までいってたんですか!?深淵なんてまだ日本で到達した人いないんですよ!?何さらっとコンビニ感覚で行ってるんですか!」
「いやー、若気の至りってやつですよ。そもそも戦闘メインだったし、飯食べるにしても美味しいもの少なかったし」
「そういうことを言っているんじゃありません!田島さんって化け物か何かですか?!」
……バケモノって、ひどいなー人間ですよ人間
ちょっと色々あって強くなりすぎた系のやつですよ。
多分。




