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第290話 ランファへの依頼

「で、樹鹿王の説明は終わり。女将と呼ばれている理由は死者を最後に持て成す場所が宿屋になってるからだ。最後に酒を飲ませてくれる場所だから」

「極楽浄土に行くか、地獄に行くか。不安に思うヤツらが最後に騒ぐ場じゃ。神が作った救いの場、とも呼ばれとるがな」


死者の宿。

ロクから話だけは聞いたことがある死者の国と現世の間にある宿。

宿と言うよりは規模的には都市らしいけどね。

人、亜人が溢れて死者の世界に行く前に騒げる最後の場所だって。

ま、ランファ曰くヨーロッパにあるらしく、日本とかアジアは閻魔大王が裁くらしいからね。

俺が見ることは無いね!

死者の国なんかに行きたくもないけどね!


「元々は神の酒を作る洞窟だったんだけどね。ご先祖さまが近くに住んでたってことで、神から役割を与えられて定住したのよ。まさかここまで大きくなるとはご先祖さまも思ってなかったんじゃない?」

「酒造りですか……親方、飲んだことあるんです?」

「バカをいえティム。その酒を飲んだら一発で死者の世界に行くことになるぞ!死者として旅立つために飲まされる酒なんじゃ」

「ひぇ!神の酒ってそんな効果が!恐ろしい……」

「生身の者が飲めるもんじゃないよねー。一応神も飲むやつだし。飲むとほかほかするよ」


身を清めるとは名ばかりの全身炎が吹き出す酒なんだそう。

……パリピでも飲まんやろ。

火が出るほどの酒、飲む神も凄いけどね。



~~~~



お茶を飲みながら喋っていると時間が1時間ほどたっていた。


「さて、雑談がすぎたかな?今日はランファに用事があったんだよ!薬が欲しくてさ」


ロクがポンッと手を叩いてランファに声をかける。


「薬?お前は自前の果実食べてたら問題ないじゃろ」

「いやいや、アンブローシアは命を吹き返すけど体調は治らないからね」


エイクス・ユルニスは角に果実を付けることがあるらしい。

エリクサーや万能薬の素材、アンブローシアが有名。

アンブローシア、食べると死人でも生き返るほど甘くて美味しいらしいね。

他にも仙桃も実るらしいよ。

鹿の角ってすげー。


「今日欲しいのは死鈴草を使った解熱剤とノクターンライオンの肝を使ってる整腸剤かな?新人が食あたりと風邪をひいてねー」

「……死鈴草も、ノクターンライオンも馬鹿みたいに珍しい素材だぞ?どんな風邪をひいたんじゃ?」

「風邪は普通だと思う。ただ種族が珍しいから常備薬じゃ効き目が悪くてね」





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