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第278話 王女、語る

「その後タジマさんの素材として倉庫の中が公開された時、あるものが見えました。それが本物なのか確認したくて留学を決意したんです。外交や企業誘致はおまけ程度です」

「そ、そんなものが。どんなものなんですか」

「『大樹龍の瞳』……ナウロに伝わる伝承に出てくる龍の瞳です」


大樹龍はツリードラゴンの古代種。

左右合計12の目を持つ巨大な龍。

ナウロの言い伝えでは島々が争い、戦争が起きた際眠りを妨害された大樹龍が怒りに身を任せて数十の島を飲み込んだそう。

イミウル君もその時にいたらしく、精霊ごと食べる姿は災厄の化身だったらしい。


「自分たちの行いで大樹龍が暴れてしまったことを嘆き悲しんだ男がその命を犠牲に大樹龍に鎮まるよう願った。その願いを樹の神が聞き入れ、大樹龍を眠らせた。大樹龍はお詫びとしてひとつの目を犠牲に男を蘇らせた。それが初代ナウロ国王とされています」

「イミウル、龍には勝てない。そもそもアレは敵にしてはいけない」

「それほどのやつなんですねー。あれ?その話だと『大樹龍の瞳』って本物かどうか分からないやつじゃないですか?瞳を犠牲にして生き返らせたって」

「正確には瞳を死んだ男の心臓に埋め込んで生き返らせた……男の死後、宝玉となった瞳はそのままナウロの守護結界となりました」


男の心臓となった目がそのままナウロを守る結界となる……漫画みたいな設定だな。

けどその話はリアルだそうで、大航海時代でも植民地化されることも無く、ナウロが世界的に認められたのは50年ほど前のことだったので確かに信用出来る話ではある。


「ナウロの秘宝でもある『大樹龍の瞳』、それが最近危機に見舞われているのです。早く2つ目の瞳を探さないと」

「……なんというか壮大な話ですね。いちサラリーマンには遠く考えが及ばないです」

「けどさ、王女様。そこまでして『大樹龍の瞳』を集める必要があるの?瞳がふたつあったところで効果は変わらないと思うけど?」


ティム君が言うことも一理ある。

基本戦争とかないからね。


「それは……そうかもしれません……でも!ナウロは!」


一生懸命に力説するサヒーリ王女。

ナウロの為を思う行動だから必死なんだよね。

守るものがあると人は一生懸命になるからね。

けど、そこまでして手に入れるものかね?







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