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第263話 王女、精霊を呼ぶ

「とりあえず実力確認ということで、あそこにいるモンスターを倒してみますか。あれ見えます?」

「あれは……スライムですか?それにしては大きい……」


俺が指さした先にいるのは3メートルを超える大きさの緑色の塊。

濃い緑の中に赤い球が浮いているのがうっすら見えるからモンスターと判断できるぐらい動かない。


「あれはモスグリーンスライム。ほとんど動きませんが対物対魔法に優れていて中々倒せないモンスターとして日本でも有名です。リスナーもそうだよね?」


:モスグリーンってあれか、下層のボスにたまにいるスライム

:あれ、討伐報告少なくね?

:クリーチャーズが3回ぐらい挑んで勝ってた

:火も効かない、殴っても弾かれる。その割には素材が少ないんだっけ

:探索者泣かせ


「へー、このコメントはリアルタイムなんですねー。見た感じ中々倒せないモンスターだということは分かりました」


そう言ってサヒーリ王女がにっこり笑う。

スライムに向けて歩き出すと身体から魔力が溢れ出す。


「ワタクシ一応Sランクですので。スライム程度であれば雑作ありません。が、タジマ様に実力を見せねば行けませんので最初から本気でいきます。」


サヒーリ王女の周りに魔力が集まる。


「民を守り、我を守りたまえ。出てきて!『イミウル』!」


サヒーリ王女が宣言すると溢れていた魔力が形を作り出し、人型にまとまっていく。


ドッスゥゥゥン!


まとまっていた魔力が具現化し巨大な鎧を着た巨人が地面に立った。

武器は大盾と剣、よく見ると木目や蔦が見えるから木属性っぽいな。

これがサヒーリ王女の精霊ってことか。


「イミウル!スライムを倒して!」

「ウゴゴゴゴ!」


巨人―イミウル―が唸り声を上げたかと思うとスライムに向かって歩き出す。

スライムに近づくと剣を掲げて一振。

ザシュッと音を立ててスライムが切れる。


「ほぉ!すごっ!」


俺は驚きの声を上げた。

イミウルの剣を受けたスライムが再生しようとすると傷口がブクブク動くが再生が始まらない。

よくよく見るとスライムと剣の間に魔力の線が出来ている。


「イミウルは樹木、しかも食虫植物の精霊。その剣で傷をつけた相手の体力を吸収し自分の力に変換することが出来ます。どんなモンスターでも完全に無傷であることは出来ませんから1太刀与えればあとは耐久するだけです」

「ひぇー……そりゃ凄い……ほぼ無敵では?」

「そうでもありませんよ。回復量は一定なのでそれを超えるダメージを受ければイミウルは倒されますし、ワタクシが倒されてもダメです」


精霊魔法を使う人って自身がいちばんの弱点、って前ネットで見たな。

なかなか難しそうな魔法だねー


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