第258話 社長に挨拶
「お疲れ様でーす。田島でーす」
『はーい、って田島くんか。何かあったの?』
「石凪さんから連絡もらってたので寄りました」
『あ、石凪君が!おっけー。今開けるよー』
ガチャンッと言う音が鳴ったあと入口のドアが解錠された。
パッと見は3階建てのアパート、ここが俺が勤めている自社ビル。
古いからエレベーターとかないけど逆に落ち着くんだよねー。
真っ白の壁よりもちょっとくすんだ色だから目に優しい。
副社長は2階のフロアにいるけど、まずは社長に挨拶してからかな?
俺は3階の部屋に移動する。
3階はソフトウェア開発スペース。
主にアプリやホームページ作成をメインに担当している部署がある。
その奥に社長室がある。
正確にはパーテーションで区切っただけで丸見えなんだけどね。
社長曰く社員の日頃の姿を見て体調チェックしないと気が済まないらしい。
前三徹した先輩が倒れて救急搬送されてから徹底して社員の健康状態を気にするようになったとか。
俺も自社勤務の時は色々声掛けてもらったよ。
そんなことを思いながらフロアに入ると自社メンバはおらず、奥の社長席の上だけ電気がついていた。
自社メンバ、早めに帰るからねー。
無駄な残業、ダメ絶対。
「お疲れ様です。田島戻りました」
「お、田島君。お疲れ。石凪君は2階の奥にいるよ」
「承知しました。社長もお変わりなくてよかったです」
「おうとも。62になったけどまだまだ現役だよ。ワッハッハー」
本当に社長は元気です。
馬之瀬源造社長は元々1営業支店だった熊本支店を子会社にまで大きく成長させたスーパーマン。
1人で県内有数のスーパーの売上管理システムの構築と各店舗への端末設置、連携確認まで実施した伝説を持つ人。
もう30年以上前の話らしいけど、その時はダンジョンなんてないからポーションとか移動速度アップ系バフなんて使えないからマジモンの体力おばけだと思うよ。
「じゃ、石凪副社長に挨拶してきます」
「おう、行ってらっしゃい」
俺は2階に移動する。
石凪新太郎副社長は元々東京本社勤務だったSE。実家の都合で熊本に戻ることになったのでうちの会社に転勤してきたのがきっかけだったそう。
転勤後直ぐに独立して、副社長に任命されたらしいけど、仕事をサクッと片付けてしまう腕前なのですんなり受け入れたんだって。
今でもバリバリ設計書とか作ってたり、開発されてるからすごいわー。
2階は主にデバイス開発、組込みソフトウェアの開発チーム。
こっちも奥の石凪副社長の席しか電気がついてない。
正直節電より目に優しくフロアの電気つけた方がいいと思うけどねー。
東京本社がうるさいんだろうなー。
「お疲れ様でーす。田島戻りました」
「お!お疲れ様。電話でよかったのに」
「いえいえ、帰るついでなので。何かあったんですか?」
「まぁーそんなことだね。とりあえずそこに座って」
俺は石凪副社長の前に座る。
何言われるんだろうなー……
この小説はフィクションです。実在の人物、団体などとは関係ありません。




