第199話 屋敷の秘密
「南阿蘇さん。残りは蔵だけですけど、何があるんですか?」
「……正直私も半信半疑なんですよね。実物を見たわけじゃないので。とりあえずこちらの資料を見ていただけますか?」
「ふむふむ……」
南阿蘇さんから受け取った資料をゆりと見る。
資料に書いてあったのは前のオーナーさんの経歴。
前のオーナー、吉松辰次―よしまつたつじ―さんは、元福岡ギルドの支部長さんだそう。趣味でダンジョンから発見されたアイテムを集めることも好きだったそう。
足を治したポーションもそのツテで手に入れたそう。
封印しているものは極秘案件、閲覧時支部長クラスの承認が必要と書いてあった。
「封印してるって……またやばそうなやつがありますね……その蔵ってどっちですか?」
「二つあるうちの奥にある蔵、あの窓がない蔵ですね」
南阿蘇さんが指差す方を見る。
この家には蔵が二つあるけど手前の蔵は窓がついていてきれいに見えるけど、奥は入り口だけで、壁もなんか黒くなっている。
「見た感じやばそうですね……近寄らなければセーフなんですよね?なら大丈夫じゃないですか?」
ゆりの質問はもっともだ。
封印魔法は解除するには術者自身が解除するか、術者を超える魔力を持つ者が解除するしか方法はない。
封印魔法は術者が死んでも数年は効果を発揮するから早々破られることはないはずだ。
「問題はないと思います。ただ封印されているものがヤバイやつなので」
「「ヤバイやつ?」」
「……封印されているのは深淵のアイテム、しかもモンスターを封じたアイテムらしいのです」
し、深淵のモンスター?!
深淵に到達してる探索者って俺ぐらいしかいないはずだよね?
なんで深淵のアイテムが?
しかも熊本の片田舎に?!
「深淵のアイテムがなんでここに?そもそも誰が持って帰ってきたんですか?」
「深淵に到達してた人ってあらただけじゃなかったんですか?」
「そうですね。そもそも深層に到達してる探索者も数が少ないですし、ましてや深淵なんて到達してる探索者は公式発表としては田島さんだけです」
「公式発表としては?……つまり先に深淵に到達していた探索者が?」
「そうです。その方はもうほぼ引退されていますがね。ネットの噂では到達してるんじゃないかと言われてたりしましたが、正式発表はされませんでした」
「……『陰陽師のおりん」』
「え?おりん?」
ゆりは知らないっぽいけど探索者をやってるとその逸話は必ず聞いたことはある。
生ける伝説、日本の守護者、数々の異名を持つ探索者。
日本ギルドにいるもう1人のSSSランク、その名前だった。




