第16話 料理の時間~マンティコアの尻尾の殻焼き~
「うっし、着いたー。さぁ、火起こしを始めようかねー」
上層2区のセーフルームについた俺はいそいそと火起こしを始める。
スマホは三脚においてコメントが見えるようにする。
火起こし、昔なら着火剤とかを使って火をつけてたけど今は魔法があるから便利。
パッと炭に火がついて火力を維持できるからねー。
火が着いたら持ち込んだ鉄網を乗せてその上にマンティコアの尻尾を乗せる。
網、1人用の小さめのやつだったけどギリッギリ乗ったよ。
マンティコアの尻尾は4つの節があったのでとりあえず2節分を焼いてみる。
もし美味しくなかったら残りはポイする予定。
……だってカニだもんね。
「焼いてる間暇だから駄弁るかー……ってそもそもなんで中層にマンティコアがいるんだ?あれって下層の4区とか更に下に行くと出現するんじゃなかったっけ?」
『東京のダンジョンなら中層でもごく稀に出てくるぞ。年に一回ぐらい:コナモン』
『福岡は話聞かないなー:アニー』
『下層で何かあったから逃げてきてるとかか?それにしても珍しいことに違いは無いが:紅生姜』
モンスターの移動は予測不能、それもダンジョンの常識だ。
モンスターの生息域もギルドや先行して進んでいる探索者の情報だから、正確ではないことはたしかなんだけど……
「……にしても、白川ダンジョンに結構潜ってるけどこんなに下層のやつが出てきたことは今までなかったなー。本当にイレギュラーが発生したのかもなー。はー。やれやれ」
『初見です。白川ダンジョンに潜ってる感じですか?:イオ@D3G』
は!?初見さんが来た!!!
初見とか何時ぶりだろう?
この配信は知り合いと雑談していることが多いから初見さんなどはコメント無しで別の配信に移動してしまいがち。
前アニーにも言われてたけどどーしてもしゃべることがなくて知り合いの話題になってしまう。
マジ、初見さんが来たの久しぶりすぎるー。
「初見さんいらっしゃーい。白川ダンジョンに潜ってきて今飯を作っているところです。今日は珍しい物が取れたのでゆっくり調理中です。」
『……もしかしてですけどマンティコア尻尾ですか?マンティコアって白川ダンジョンだと出現しないって聞いてたような……:イオ@D3G』
「あー、出現しないわけではないですよ。下層ぐらいまで潜るとたまに出てきますよ。まぁ今回は幸運にも手に入った感じですな。サクッと食べてみようかなーって思ってます。」
『は、はぁ……:イオ@D3G』
そう、これはイレギュラーなのだ。
この前のオーガ並みにイレギュラー。
詳細をつっこまれると痛いので、サラッとお茶を濁したいところです。




