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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
プロローグ

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5 お料理改革 2

 こんな時、どうしたらいいんだ?


 答えが思い浮かばない。

 一応、貴族学校で習った教科書には粘り強く、話し合うことが推奨されている。まあ、この世界も前世の日本も同じで、粘り強くが何時間なのかは記載されていないし、具体的な内容も記載されていない。まあ、そんなものだろう。


「クマーラさん、仕事なんですから最低限の・・・」

「うるさいねえ!!その最低限ってやつを見せておくれよ。料理のことを分かっていない素人に言われたくはないね」

「私は貴方の上司で、貴方は私の職務上の命令に従う義務があるんですよ!!」

「だったら辞めてやってもいいよ。そうなったら困るのはアンタだよ。いかがわしいことをされたとか、無理やり言い寄られたとか、有ることないこと言ってやってもいいんだよ」

「そ、それは・・・」


 クマーラさんは、自暴自棄になっている。

 絶対にそんなことはしないとは言い切れない・・・


「分かりました。とりあえず、最低限の仕事をお教えします」

「やれるもんならやってみな。こんなゴミのような食材で、できるならね」


 貴族用の収容施設とはいっても、当然予算は限られている。

 見た感じ碌な食材はなかった。パスタっぽい物はあるけど・・・


 あれ?これなら何とかなるんじゃないだろうか?

 どうせなら、なぜこんな食材だけでこんな美味しい物が?と思わせられれば・・・


 俺が作ろうと思ったのは、貧乏人のパスタとして有名なペペロンチーノだった。

 オリーブオイルとニンニクと唐辛子、それにパセリだけで作る単純なパスタだ。前世は貧乏なフリーターだったから、節約レシピは熟知している。


 俺がペペロンチーノを作っていると、クマーラさんが馬鹿にしたように言う。


「そんな味もしない香りだけの食材で、旨くなるはずがないだろうに・・・」


 ペペロンチーノは単純なパスタだが、非常に奥が深い。

 ニンニクの焦がし具合や塩加減、乳化具合で大きく味が変わる。その辺はジョブの「マルチタレント」のお蔭で上手く調整できたけどな。


 クマーラさんだけでなく、折角なのでフィオナ嬢たちにも食べてもらうことになった。


「これをセンパイが作ったのですか?信じられません・・・」

「私が将軍だったら、間違いなくセンパイを料理長にしただろうな」

「ほう・・・このような粗末な食材で、ここまでの味を出すとは・・・」


 当のクマーラさんはというと、絶句していた。


「クマーラさん、どうですか?」

「最低限どころか、最高の料理だよ。レストランをオープンさせた当時のことを思い出したよ。旦那と二人で、安い食材を工夫して料理してさ・・・そんな旦那との思い出が蘇ってきたよ・・・」


 ふと見ると、クマーラさんは涙を浮かべていた。


「天国にいる旦那が今の私を見たら、きっとこう言うだろうさ。「大した腕もないのに、何を不貞腐れてるんだ!!」ってね・・・センパイ、ありがとうな。これからは真面目にやるよ。それでセンパイの料理を教えてほしい」


「教えるなんて、とんでもないですよ。アイデアは出しますが、作るのはクマーラさんです。俺が作ったペペロンチーノだって、クマーラさんが工夫して作ればもっと美味しくなりますよ」


「そうだね・・・なるほど・・・もっと美味しくできたけど、敢えてこの程度の味に留めたってことだね?」


 そうではない。これがデフォルトなんだが・・・

 だけど、クマーラさんには本当のことは言わず、話を合わせた。


「そうですね。たとえば、魚の塩漬けを入れたり、トマトベースに変更しても面白いですしね」


「じゃあ、すぐに作ってみるよ。それと三人にも謝るよ。不味い料理を食わせちまってね」


 そう言うとクマーラさんは厨房に戻って行った。


 それからクマーラさんは、真面目に仕事をしてくれるようになった。



 ★★★


 ある程度、貧乏節約料理をクマーラさんに教えたことで、食事は劇的に改善した。

 カレー、おでん、肉じゃが、唐揚げ、天ぷらなど、誰が作っても不味くなりようのない料理を中心に教えたのだが、今では勝手にアレンジして、俺が作るよりも美味しい料理を提供してくれるようになっている。流石はプロの料理人だ。


 これで全て上手くいったと思ったが、予想外のことが起きた。

 ある日の夜、俺の部屋にクマーラさんが訪ねて来た。


「センパイには世話になったから、どうしてもお礼がしたくてね」

「気にしないでください。仕事ですから」

「でもそれじゃあ、私の気が済まないんだよ」

「お構いなく・・・」


 言い掛けたところで、いきなり押し倒された。

 クマーラさんは熊獣人だ。一言で言えば毛むくじゃらの大きなオバちゃんだ。しかし、若い体は反応してしまう・・・



「初めてにしちゃあ、なかなかやるねえ。また頼むよ。でも惚れないでくれよ。死んだ旦那に操を立てているからね」


 どんな操だよ!!


 ツッコミを入れることはできず、しくしくと泣いた。俺はこの世界での初めてを奪われたのだった。

 しばらくして、あることに気付いた。


 これってヤバいんじゃないのか?


 普通なら、従業員と上司が関係を持ったら、現代日本だったら両方クビになってもおかしくない。

 恐くなってすぐに規則や法律を調べた。こちらの法律では何の問題もないようだった。クマーラさんも俺も独身だからな。二人の合意があれば問題はないようだ。

 でも俺は合意してないような・・・


 だけど、訴えるなんてできないよな。


 俺はこのことはそっと心に仕舞うことを決意するのだった。

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