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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
プロローグ

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2/22

2 のんびり刑務官ライフ

 この世界は俺が前世で暮らしていた地球で言うと、中世ヨーロッパ程度の文化レベルだ。

 地球と違うところは魔法が存在し、ジョブと呼ばれる神の加護が存在することだ。ジョブによって習得できるスキルや魔法に雲泥の差がある。

 つまり、ジョブによって将来が決まると言っても過言ではない。


 俺のジョブ「マルチタレント」は、かなり珍しいジョブらしく、ジョブ鑑定の際、鑑定士を大いに悩ませた。結局、過去にあまり例がないレアジョブだが、有用なジョブとは思われなかったようだ。なので、ジョブだけで「あいつすげえ!!」ということにはならなかった。

 だけど、ジョブの影響からか子供の頃から勉強も運動もそれなりにできたし、魔法もそれなりに使えた。転生させてもらったあの女神様には感謝しかない。


 そんな俺だが野望がある。

 公務員となり、安定した生活を送ることだ。そのために()()()()に努力はした。()()()()というのは、俺が生まれたサンドル子爵家は領地を持たない法衣貴族だが、裕福ではないにせよ、生活に困ることはなかったからだ。兄二人と同様に帝都アルトモの貴族学校に通わせてもらった。ここで一定の成績を収めれば、それなりのところに就職できるのだ。

 チート能力はないが、極貧で命の危機に晒されることもなかった俺は、人並みに努力したことで今の地位を手に入れたのだった。


 ではなぜ刑務官かというと、それは最も安定した生活が送れると判断したからだ。それに他の文官に比べて、試験が簡単というのも大きかった。面白味の無い仕事で、しかも出世も望めないことが原因だと分析する。真面目に刑務官をしたところで、世界が救われるわけではないし・・・


 もちろん現代日本の刑務官を馬鹿にしているわけではない。

 凶悪な犯罪者たちを「人権、人権」とうるさい現代社会において、安全にかつ適正に収容しておくことは、かなり大変な仕事だと思うし、日の目を見ない職場で頑張る刑務官に尊敬の念を覚える。


 だが、この世界は違う。

 というのも、司法制度が全く現代日本と違うからだ。このオンボーロ帝国に刑務所は1箇所しかないし、収容されることも稀だ。軽微な犯罪の場合は罰金刑かムチ打ち刑、重罪の場合は即刻死刑。中程度の犯罪者は、奴隷として鉱山などで強制労働させられる。そもそも裁判自体がほとんど行われない。裁判を受ける権利があるのは貴族と一定の税金を納めている平民だけだ。後は簡単な手続きで、領主に処罰権がある。


 ではなぜ、刑務所があるのか?


 これは国家機密で、噂の域を出ない話だが、そこでは怪しい人体実験が繰り返されているらしい。

 なので、今のところ俺のような新人が刑務所で勤務することはない。現在、俺が勤務しているのが、通称「嘆きの塔」と呼ばれる貴族用の収容施設だ。ここは現代日本で言うと拘置所のような施設だ。刑務所と拘置所の違いは、刑務所が刑を宣告された受刑者が収容されているのに対して、拘置所は裁判中、又は裁判を受ける前の者が収容されている。


 現在「嘆きの塔」に収監されているのは女性3名。

 つまり彼女たちの面倒を見るだけでいい楽な仕事なのだ。全員が貴族又はそれに準ずる身分で、常識があるし、文句も言わない。当然、問題も起こさない。


 本当に理想的な職場だ。派閥争いもないし、大きな出世は望めないけど、安定した生活が送れる。

 俺の目標は勤続20年による男爵位の叙爵だ。10年で一代限りの騎士爵が叙爵されるので、当面の目標はそれかな。

 そうなれば、前世でできなかった結婚もできるだろう。



 ★★★


 収容されている女性三人について解説しておこう。


 一人目は金髪縦ロールの美少女、フィオナ・スペンサー侯爵令嬢だ。

 実は貴族学校の2年後輩に当たる。正直、気まずい。

 貴族学校には最高学年である3年生が新入生の面倒を見る制度があり、俺の班が彼女の班を担当していた。なので、それなりに面識はある。

 罪状は同級生に対する殺人未遂、それに付随する嫌がらせの数々だ。

 彼女と1年間接してみて、絶対にそんなことをするような子じゃない。誰かに嵌められたという噂すらある。皇太子と婚約していたようだが、婚約が破談になるかもしれないようだ。何とかしてあげたい気持ちもあるけど、首を突っ込むことはしない。だって、安定した生活が脅かされたら困るからな。かわいそうだけど・・・


 二人目はスレンダーで筋肉質な獅子族の女性、リオネッサ将軍だ。

 あまり世情に詳しくない俺でも知っているくらい有名な将軍だ。数々の功績を上げて、叩き上げで将軍の地位まで登りつめた方だ。

 罪状は、ある作戦の失敗の責任を取らされて、軍法会議にかけられている。もちろん、深くは聞かない。お互いのためだ。


 三人目は全く謎の人物だ。

 いつも深くフードを被っており、マスカレードマスクを常時着用している。囚人がマスクなんて着けていいのか?と思うが、前任者からの引継ぎでは、「何も聞くな。何も探るな。この意味が分かるな?」とのことだった。

 かなり高貴な身分の方らしい。因みに「閣下」と呼ばれている。

 もちろん、俺は何も詮索しない。


 彼女たちには、それぞれの事情があるのだろうが、俺には関係ない。

 ただただ、安定した生活が送れればいいからな。

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