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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第一章 フィオナの逆襲

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16 再捜査 4

 ドゥウェインさんから受け取った資料を確認する。

 当初は、「言い訳捜査」だけして担当部署に引き継ごうと思っていたが・・・


「言い訳捜査」とは、その名の通り「頑張ったんですが、駄目でした」という言い訳を作るための捜査だ。捜索依頼の担当部署には毎日山のように捜索依頼が届く。限られた人員ですべてをきちんと捜査するなんてできない。だから、言い訳程度の捜査をする。

 それをやっていないと、後々重要事件の被害者だったことが判明した場合や対象者が貴族や有力商会の関係者だった場合、「ちゃんと仕事しろ!!舐めてるのか!?」と大目玉を喰らう。当然、出世にも響く。

 だが逆にそれさえやっていれば、ほとんど怒られることはない。


 今回の場合、商業ギルドと数件酒場を周って聞き込みをして終了する予定だった。

 でも資料を見るかぎり、きちんと調査したほうがいいと判断した。捜索依頼が出ているのはナナというCランクの魔導士で、実力もそうだが、奇抜な衣装と特徴的な言動で冒険者ギルドでは、一種の有名人だったようだ。

 活動を始めたのは、俺が就職して冒険者ギルドに顔を出さなくなった昨年からだ。俺が知らなくても不思議じゃない。


 資料によると、全身ピンクの衣装を身に纏い、ザ・魔道士というトンガリ帽子にマスカレードマスクを装着している。何かにつけてオーバーリアクションで、決め台詞はなんと「星に代わって、お仕置きですわ!!」だ。

 風魔法が得意で、魔物を討伐した後は決まって、「また、つまらない物を狩ってしまいましたわ!!」と言うらしい。


 これって・・・


 この痛いキャラを俺は知っている。

 こちらの世界ではない。前世の日本で子供の頃に流行っていたアニメの魔法少女だ。彼女も転生者だと思うかもしれないが、そうではない。

 というのも、俺は学生時代の野外実習で後輩たちに、このアニメをこちらの世界風にアレンジして話したことがあった。ほとんどの学生が面白半分に聞いていたが、一人だけ、食い入るように聞き入っていた学生がいた。その学生はその後、何度も魔法少女の話をするようにせがんできた。ごく普通の少女が変身して、巨悪と対峙する設定に心を奪われたらしい。


 その学生というのはフィオナ嬢だ。



 次の日、俺は冒険者ギルドに向かった。

 ドゥウェインさんが応対してくれる。


「もう見つかったのか?」

「手掛かりは掴めました。それで彼女の活動記録を確認したいのですが・・・」

「いいぜ、すぐに用意させる」


 すぐに資料を突き合わせる。


「それにしても、こっちはダメもとで頼んだんだが、流石はアレクだな」

「偶然が重なっただけですよ」

「こっちは見つかればなんでもいい。報酬は弾むぜ」


 運がいいことにメインの殺人未遂事件の犯行日、ナナは前日からダンジョンに潜っている。同行したのは「オールアウトアタッカーズ」だ。この時、最高踏破記録を更新したので、ギルドで大宴会が開かれている。当然、ドゥウェインさんも覚えていた。


「よく覚えているぜ。でもナナは、『私は魔法少女ナナ。星が呼んでいますので、失礼します』とか言って宴会に出ずに帰ったぞ。実力はあるが、変わった奴なんだ」

「そのことを法廷で証言していただけますか?」

「いいぜ・・・ていうか、法廷って何の話だ?」


 後はフィオナ嬢と魔法少女ナナが同一人物だと証明できれば、アリバイが成立する。

 また、他の軽微な事件2つのアリバイも成立した。これなら何とかなるだろう。後はフィオナ嬢がどう言うかだけど・・・


 ★★★


「嘆きの塔」に帰り、フィオナ嬢から事情を聞くことにした。


「フィオナ嬢、正直に言ってほしい。君は魔法少女ナナだね?」

「ど、どうしてそれを・・・」


 フィオナ嬢は真っ赤な顔をして、俯いてしまった。

 それから1時間が経過したが、何も話してくれない。彼女の立場に立って考えると、こんな恥ずかしいことがバレたら、生きていけない気持ちだろう。俺だったら自害するレベルだ。


 こんな時、どうするんだ?


 捜査研修では、相手の立場に立って、話しやすい環境を作ると指導を受けた。

 なので、一計を案じることにした。


「魔法少女ナナ・・・驚かずに聞いてほしい。実は俺も魔法少年なんだ。すべては星の導きさ」


 俺は魔法少年ではないが、フィオナ嬢のキャラ設定に付き合うことにした。


「貴方が、魔法少年クルクルだったのですね・・・分かりました、正直に言いましょう・・・って、センパイ、付き合ってくれなくていいですよ。私のためにそこまでしてくれたんですから、正直に言います」


 フィオナ嬢が言うには、俺と冒険者の活動をしたことがきっかけで、冒険者に興味を持ったそうだ。それで俺が卒業した後に冒険者活動をしようと思ったみたいだ。当然、侯爵令嬢フィオナ・スペンサーとして活動することはできないので、どうせならと思い、魔法少女ナナとして冒険者活動を始めたそうだ。

 そして、だんだんと楽しくなって、言動もエスカレートしていったそうだ。前世でいう厨二病が発症したのだろう。


「自分でも、かなり痛いことをしていると分かっていました。だから、取調べでも、本当のことが言えませんでした」

「じゃあ、無断外泊や無断欠席も冒険者活動の所為で?」

「そうです。皇太子妃になると、二度とこんなことはできませんからね。なので、学生寮に無理を言って、住むことにしたんです。冒険者活動を優先していたので、成績はかなり落ちましたけど・・・」


 真相は分かった。

 後はどう裁判を乗り切るかだ。相手が相手だからな・・・

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