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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第一章 フィオナの逆襲

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12/22

12 フィオナの憂い

第10話と第11話を逆に投稿してしまいました。申し訳ありません。

 本当に理想的な人生を歩んでいる。

 トラッシュの事件以降は厄介な「お客さん」もやって来ないし、このままゆっくりと時が過ぎればと思っている。


 今日もいつも通り、朝の報告を行う。


「今日も異常ありません。これより勤務に就きます」

「基本通り勤務せよ」

「了解しました」


 報告してみて思ったが、最近フィオナ嬢に元気がない。

 異常と言えるほどではないけど、少し心配だ。口数も減っている。


 どうしようかと悩んでいたら、ミケがやって来た。

 珍しいことにフィオナ嬢に面会ではなく、俺を訪ねて来た。


「実はセンパイに頼みたいことがあるのニャ」

「聞くだけは聞いてやる」

「実はフィオナのことだニャ。もうすぐ裁判があるニャ・・・」


 ミケが言うには、フィオナの裁判がもうすぐあるのだが、フィオナの弁護人がまだ見つかっていないという。


「フィオナは確実に無実だニャ。でも、それを証明するために動いてくれる人がいないニャ。それでセンパイにお願いに来たのニャ」

「ミケ、流石に力になれないぞ。俺はただの刑務官だし、捜査権があるわけでは・・・」


 言い掛けて気づいた。すぐに法律書をめくる。



 刑務官は以下の場合、捜査に従事することができる。

 1 法務大臣又は司法局長、捜査局長、刑務局長の指示がある場合

 2 自身が担当する被告人又は受刑者に対して、捜査が必要と認める場合



 1のケースは、トラッシュの件で行った捜査協力だ。

 俺はそんなつもりはなかったけど、法律上は俺が捜査局長の指示を受けて、捜査活動をしたということになるみたいだ。


 今回は2のケースだ。フィオナ嬢は俺が担当している被告人だから、捜査権を行使することができる。新人研修では、捜査局でも研修したので、ある程度のことは分かる。

 となると、後は弁護人の関係だが・・・


 被告人は以下の者に弁護人として選任することができる。

 1 男爵以上の爵位にある者

 2 法務省で10年以上勤務した者


 この国に弁護士という職業はない。

 1の正式な貴族として認められる男爵以上が条件というのは、貴族の地位を高めるためだろう。2は天下り先の確保だろうか?法務省の役人にも平民はいる。多分、利権の確保だと思われる。


 俺は子爵家の三男とはいえ、俺自身は爵位を持っていないし、まだ勤続2年目の新人だ。

 弁護人になることはできないな。となると・・・ルートナー伯爵にでも依頼しようか?


 その時、ふと思った。


 別にフィオナ嬢がどうなろうと、放っておけばいいのではないだろうか?


 しかし、思い直す。

 フィオナ嬢が無実の罪で処罰される。それも俺が救うチャンスがあったにもかかわらずだ。

 流石に寝覚めが悪い。俺は安心安全で安定した人生を送ることが望みだが、後輩を見捨てるのは違う気がする。

 厄介事に首を突っ込むことになるのは分かるが、俺は決断した。


「ミケ、やれることはやってみるよ。結果は分からないけど・・・」

「流石はセンパイだニャ!!私も協力するニャ!!」

「あまり期待するなよ」



 ★★★


 まずルートナー伯爵に連絡を取って、事情を説明した。


「弁護人については引き受けよう。じゃが、捜査や資料作成なんかはせんぞ。当日も、法廷に立つだけじゃな。当日の弁護も儂の助手ということで、センパイが全部やるのじゃぞ」

「分かりました。お願いします」

「うむ。それと捜査でここを離れることも多いじゃろうが、心配はするな。儂がお客さんの面倒を見てやるからのう」


 それだけでも十分に有難い。

 すぐに上司の管理官に伺いを立てたら、こちらも了承してくれた。ちょっと嫌な顔はされたけどな。



 そして、俺は冒険者ギルドにやって来た。

 理由はお土産を買うためだ。長男のマイケルが貴族学校を管轄する教育省に勤務しているので、その伝手で捜査に協力してもらおうと思ったからだ。流石に身内とはいえ、無償で協力してもらうのは忍びないからな。

 

 お土産は、ギルドに併設している酒場で提供されている「グレートベアのスジ肉煮込み」だ。俺が開発したあの料理だ。自分で作るという選択肢もあったが、流石に時間が掛かり過ぎるからな。これくらいの出費は仕方がない。今日は家族で食事会をすることになっているので、ついでに家族の分も買っておこう。


 酒場で注文をして会計を済ませたところで、声を掛けられた。

 ギルマスのドゥウェインさんと冒険者パーティー「オールアウトアタッカーズ」のリーダーであるゴードンだった。


「おう!!いいところにいい奴がいたぞ、ゴードン」

「そうですね。アレクなら間違いないでしょう」


 雰囲気から面倒事だと察する。


「俺は受けませんよ」


「まだ何も言ってないぞ。話だけでも聞けよ」

「ゴードンたちがワイバーンの群れの討伐に向かうことになってな。臨時のパーティーメンバーを捜してるんだ」


「俺は無理ですよ。仕事もあるし、それに長期間は・・・」


「それは分かってるよ。だから今回はお前じゃない。お前が最適であることは変わりないがな」


 話が見えてこない。


「そこでお前に頼みたいのが、人探しだ。今回の依頼にピッタリの魔導士なんだが、ここ最近ギルドに顔を出さなくなったんだ」


 ゴードンが続ける。


「空にいる間は、タンクの俺と剣士のジェシカは攻撃面で貢献できないから、強力な魔導士に臨時加入してもらおうと考えていてな。ギルマスに相談したんだが・・・」

「いいだろ?法務省の役人様なら、ちょちょいのちょいって感じだろ?」


「ドゥウェインさん、流石に公私混同はできませんよ。ただ、資料と依頼書をいただければ、担当の部署に引き継いでおきますよ」


「役人みたいなこといいやがるな?」


「一応、刑務官も役人です」


 結局、碌に話を聞かないまま、資料と依頼書を受け取ってしまった。

 パターン的に新人の俺が捜査局に行って、「これ、お願いします」と言って受け取ってくれることは、まずない。多少の下調べくらいはしないと駄目だろう。


 ただでさえ、厄介事を抱えているのに、また別の面倒事も抱え込んでしまった。

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