11 幕間 安心安全のアレク 2
第10話と第11話を逆に投稿してしまいました。申し訳ありません。
俺がサポートメンバーで加入することになったのは、四人組のパーティー「オールアウトアタッカーズ」だった。大柄のタンクのゴードンがリーダーで、女剣士のジェシカ、女魔導士ルーシー、弓使いハンクの構成で、超攻撃的な売り出し中のパーティーだ。
ギルマスのドゥウェインさんによると、攻撃力だけならAランクにも匹敵するという。
まあ、俺がサポート役に指名されるくらいだから、多分何かしらの問題があるのだろう。
早速、作成した契約書を持って、件の「オールアウトアタッカーズ」と面会する。
契約書の内容は、端的に言うと「俺の指示に従え。反論は認めない」というものだ。相手が新人冒険者なら、契約書まで交わさなくても、こちらがCランクというだけで、まず従ってくれる。ただ、今回はどうなるか分からない。
しかし、ドゥウェインさんに契約に従わない場合は、この依頼自体を受けなくていいという確約をもらっているので、安心して面会することにした。正直、契約内容に怒って依頼自体を無かったことにしてくれればと思う。厄介事に巻き込まれたくはないからな。
「アレクです。早速ですが、こちらの契約書をお読みください。同意していただけなければ、今回の件はなかったことにと考えております」
俺は挨拶もそこそこに、契約書をリーダーのゴードンに手渡した。
ゴードンの表情が強張る。
「お前、舐めてんのか?若造が偉そうに・・・」
気持ちは分かるよ。
前世ではアラフォーだったけど、今は16歳だ。アラサーのゴードンたちにしてみれば、一回り年下の若造にこんなことをされたら怒るだろう。でも、これは必要なことだ。安全第一だからな。
女剣士のジェシカがゴードンを宥める。
「落ち着きなよ、ゴードン。今回の仕事を受けられる条件が、コイツを雇うことなんだからさ」
「分かってる。契約は成立だ。その代わり下手な仕事をしたら、ただじゃおかねえぞ!!」
意外にすんなりと契約となった。
「サポートはしっかりとさせていただきます。それでは依頼内容を教えてください」
ゴードンの挑発には乗らず、努めて事務的に質問する。
ゴードンによると、帝都の南で新しく発見されたダンジョンの調査依頼だという。普通ならBランク以上の冒険者パーティーに依頼が出される案件だが、現在Bランク以上の高ランク冒険者パーティーは、軒並み西部で発生したスタンピード対策に駆り出されているので、ゴードンたちに仕事が回って来たようだった。
Cランクになりたてのパーティーには厳しいんじゃないのか?
それにこのパーティーは攻撃に特化しすぎている。探索は不向きだろうに・・・
そんなことを思いながら、俺はゴードンたちに提案した。
「1時間後、再度集合することでよろしいでしょうか?それまでにこちらも準備をして参ります。それに契約書細則も作成しますので・・・」
「お、おう・・・」
一旦ゴードンたちと別れて、すぐにギルドの資料室に向かう。
契約書細則を作成し、ダンジョンの情報を集めることにした。ついでに計画書も作成する。
時間になり、再びゴードンたちと合流する。
「それでは説明致します。先程提示した基本条件を踏まえ、計画書を作成しました。準備期間を3日いただきます。まず連携強化と戦力分析のための訓練を2日行います。1日は資材整備としております。それでダンジョンについてですが、どんなに調子よく探索が進んでも、10階層までとさせてください。何かご質問があれば、どうぞ」
矢継ぎ早に説明するとゴードンたちが話合いを始めた。
「ど、どうする?」
「受けるしかないんじゃない?」
「というか、凄すぎない?この短時間でここまでするなんて・・・」
「受けよう。それがいい」
すぐに契約となった。
★★★
3日の準備期間のお蔭で、連携も強化された。
最初の印象のとおり、ゴードンたちは攻撃特化型のパーティーだった。不足しているのは回復役とパーティー全体をサポートするメンバーだ。俺の見立てでは、そこそこの回復術師か支援魔法が得意な魔導士が加入すれば、すぐにでもAランクでもやっていけると思う。なので、俺は回復術師兼支援魔法使いとしての役割を担うことにした。
ダンジョン攻略自体は順調に進む。
事前準備と訓練のお蔭で、10階層のエリアボスも討伐することができた。そもそも、調査依頼なのだから、10階層まで攻略しなくてもいい。大まかなダンジョンの傾向や危険性の有無さえ分かれば、依頼達成なのだ。
「アレク、頼みがあるんだが・・・」
「これより先には進みませんよ」
「そ、そこをなんとか・・・」
予想通りゴードンが、更に下の階層に進もうと提案してくる。
「駄目ですよ。どうしてもと言うなら、ここで契約を解除させてもらいます」
弓使いのハンクが言う。
「ゴードン、アレクの言う通り、ここで帰還しよう」
「だが・・・」
「ゴードン、報告書をまとめたり、マップを作成したり、やる事は帰ってからも多いしな」
女魔導士のルーシーも続く。
「アレクがいなかったら、ここまで安全に活動できなかったわよ。私たちに足りない点も分かったしね」
「そうだな・・・アレク、すまなかった。帰還しよう」
帰路も特にトラブルは起こらず、冒険者ギルドに帰還した。これで依頼達成だ。
別れ際、ゴードンに言われた。
「アレク、色々とすまなかった。それでよかったら、俺たちのパーティーに入ってくれないか?俺たちは更に上を目指している。Aランク・・・いや、お前がいれば更に上のSランクも夢じゃないと思う。だから一緒に・・・」
「有難い話ですが、俺にも夢があります。ですので、その話はお受けできません」
「そうか・・・分かったよ。残念だが、仕方がない。さぞ大きな夢なんだろうな・・・」
流石にゴードンたちも俺の夢が安心安全の公務員志望だとは思わないだろう。
★★★
その後の話をする。
この依頼がきっかけで、ゴードンたちとは何度か仕事をするようになった。その度に勧誘されたけどな。
それでゴードンたちだが、俺との依頼の後に支援魔法と回復魔法がそこそこ得意な新メンバーを加え、俺が刑務官になる頃にはAランクパーティーになっていた。
まあ、刑務官の俺にとったら全く関係のない話だ。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!
次回から新章となり、本格的に物語が動き出します。ご期待ください。




