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白い猫は笑う  作者: 都鳥


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1/4

白い猫は笑う #1

 急がないと。

 それだけを考えて足を進めていた。



 王都のような都会ならともかく、この田舎町では女性の地位はとても低い。

 たとえ私のような実力のある魔法使いでも、だ。


 私ほどの腕前があれば、王都の大教会でも身を立てられるだろうと、そう言われている。しかし、意地の悪い同業の男たちに(はば)まれて、その機会が私には回ってこない。


 どうやら彼らは私の事が気に食わないらしいのだ。


 女性にしては高い背が、彼らに言わせると可愛げがないらしい。

 黒く長い髪は夜の色で、神に仕える者にはふさわしくないのだそうだ。

 そしてスタイルの事すら、異性を惑わせる体だと…… まあ、それ以上の汚い言葉で評される。


 その癖、彼らは物陰で私を口説こうとするのだ。まあ当然のように片っ端からフッたので、思えばそれも原因なのかもしれない。


 3日後に、王都から偉い司祭様が視察にいらっしゃると聞いて、自分を売り込むいい機会だと思った。

 でもその話と一緒に私に与えられた任務は、遠い森での魔獣討伐だった。明らかに嫌がらせだろう。


 今から真っすぐ向かって、障害なく任務をこなせば3日後には帰ってこられる。

 そう判断し、急いで旅の支度と愛用の(スタッフ)を持って町を飛び出した。



 森に着くまでは、順調にいけば馬車で一日もかからないはずだ。

 でも今日の私は運が悪かった。


 馬車がホーンラビットの群れに行き当たった。

 ホーンラビット自身は大して強くもないし、とても臆病な魔獣だ。

 旅の途中で出会っても、こちらを見かけただけですぐに逃げ出してしまう。危険は全くない。


 でも今日出会った群れのリーダーは、子供を連れていて気がたっていたらしい。

 馬車に向かってその角を振りかざして威嚇をするものだから、馬が興奮してしまい、目的地の一つ前の町で足止めを食らってしまった。


 本当ならば今日のうちに次の町についておきたかった。

 でも今から歩いて向かっても、途中で日が暮れてしまう。今回の旅は私一人なのだから、無茶は禁物だ。


 明日の早い時間に次の町に着けばまだ間に合う。

 そこから森へ向かって魔獣の討伐を終え、直ぐに帰路につけば、司祭様がいらっしゃるうちに帰れるはずだ。



 翌日。馬車をあてにはせずに自らの足で次の町を目指そうと、早朝に町を出た。

 近道をしようと街道脇の森に入ったところに、それは落ちていた。


 薄汚れた白猫、だった。

 私が拾った時には。



挿絵(By みてみん)

※無断転載やイラストAI作成等への使用を禁じます。

※著作権はイラストの作者様にあります。

文末に、みれい様(@FxTvik7)から頂いたイラストを掲載いたしました。

優しくて可愛い、絵本のようなイラストを、ありがとうございましたーーm(_ _)m (20220617)

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