白い猫は笑う #1
急がないと。
それだけを考えて足を進めていた。
王都のような都会ならともかく、この田舎町では女性の地位はとても低い。
たとえ私のような実力のある魔法使いでも、だ。
私ほどの腕前があれば、王都の大教会でも身を立てられるだろうと、そう言われている。しかし、意地の悪い同業の男たちに阻まれて、その機会が私には回ってこない。
どうやら彼らは私の事が気に食わないらしいのだ。
女性にしては高い背が、彼らに言わせると可愛げがないらしい。
黒く長い髪は夜の色で、神に仕える者にはふさわしくないのだそうだ。
そしてスタイルの事すら、異性を惑わせる体だと…… まあ、それ以上の汚い言葉で評される。
その癖、彼らは物陰で私を口説こうとするのだ。まあ当然のように片っ端からフッたので、思えばそれも原因なのかもしれない。
3日後に、王都から偉い司祭様が視察にいらっしゃると聞いて、自分を売り込むいい機会だと思った。
でもその話と一緒に私に与えられた任務は、遠い森での魔獣討伐だった。明らかに嫌がらせだろう。
今から真っすぐ向かって、障害なく任務をこなせば3日後には帰ってこられる。
そう判断し、急いで旅の支度と愛用の杖を持って町を飛び出した。
森に着くまでは、順調にいけば馬車で一日もかからないはずだ。
でも今日の私は運が悪かった。
馬車がホーンラビットの群れに行き当たった。
ホーンラビット自身は大して強くもないし、とても臆病な魔獣だ。
旅の途中で出会っても、こちらを見かけただけですぐに逃げ出してしまう。危険は全くない。
でも今日出会った群れのリーダーは、子供を連れていて気がたっていたらしい。
馬車に向かってその角を振りかざして威嚇をするものだから、馬が興奮してしまい、目的地の一つ前の町で足止めを食らってしまった。
本当ならば今日のうちに次の町についておきたかった。
でも今から歩いて向かっても、途中で日が暮れてしまう。今回の旅は私一人なのだから、無茶は禁物だ。
明日の早い時間に次の町に着けばまだ間に合う。
そこから森へ向かって魔獣の討伐を終え、直ぐに帰路につけば、司祭様がいらっしゃるうちに帰れるはずだ。
翌日。馬車をあてにはせずに自らの足で次の町を目指そうと、早朝に町を出た。
近道をしようと街道脇の森に入ったところに、それは落ちていた。
薄汚れた白猫、だった。
私が拾った時には。
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文末に、みれい様(@FxTvik7)から頂いたイラストを掲載いたしました。
優しくて可愛い、絵本のようなイラストを、ありがとうございましたーーm(_ _)m (20220617)




