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魔族令嬢の奴隷にされたけど、面白半分に付与された外れスキル【豚化】を活用して反逆します  作者: 三門鉄狼


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34 魔族令嬢は覚悟を決めました

 巨大な怪物が城を破壊していく。


 背中を燃やしながら、怒りの咆哮を上げ、丸太のように太い腕を振り回す。


 一振りしては塔を破壊し、一振りしては城壁を破壊する。


「ああああ、私の城が!」


 絶望的な悲鳴を上げるラッシュ。


 彼は背後にいたハピネを睨むと、暴れ回る怪物を指差して叫ぶ。


「なんとかしろ! あいつはお前の言うことならきくんだろう?」


「無理です」


 ハピネはゆるく首を振る。


「さっきは一瞬動きが止まっただけです」


「一瞬でいい! その隙に、特大のアンチジェムを撃ち込んでやる! これなら絶対に仕止められれるはずだ!」


 いつの間に命じていたのか、部下が巨大な投射装置を運んできた。


 本来ならば城塞を攻略するために投石などを行う兵器だ。

 そこに、人では到底扱えないような巨大な矢が取り付けられる。


「ははははは! どうだ。これで貫かれれば、あの化け物もひとたまりもあるまい!」


「…………」


 ハピネは、その矢を無言で見つめるだけだ。


「やれ、ハピネ! もしあの化け物をなんとかできたなら、命だけは助けてやるようお父様に頼んでみてもいいぞ!」


「本当ですかっ」


 そう声を上げたのはハピネではなくヒルドだった。


 ハピネの背後に控えていたメイドはラッシュに詰め寄る。


「本当に……本当にお嬢様を……っ」


「ああ、もちろんだとも」


 鬱陶しそうに手を振りながら、ラッシュは心のこもらない声で答える。


 ハピネは……なおを暴れ回る怪物を見上げて、言った。


「わかりました。やります」


 数人の兵士に伴われ、ハピネは崩れかけた城壁を登っていく。


 さすがに手錠はもうつけられなかったが、左右を挟まれ、逃げられないように囲まれている。


(いまさら逃げるはずがないのに)


 咆哮を上げるぶー太を見る。


 周りの兵士たちは彼の声が響くたびに身を竦ませるが、ハピネは一切怯えを感じることはなかった。


 自分にはどこにも行く場所などないとハピネは知っている。


 キューブリア家の令嬢として生まれ、食べ物も、服も、屋敷も、なに不自由なく与えられた。


 ただしそれは、未来がないことと引き換えの自由だった。

『今この瞬間』好きなことができるハピネは、将来なにかをやりたいという自由は与えられていなかった。


 それはハピネに一つの箱をイメージさせた。


 ハピネはその箱に入れられている。

 箱はハピネが動くのに合わせて移動する。

 なのでハピネは自由に好きな場所へ行くことができる。

 けれど箱には窓がないので、ハピネに見えるのは箱の内側の壁だけなのだ。


 形だけの自由。

 言葉だけの自由。


 どこへ逃げようと、箱は追いかけてくる。


 だからハピネは動くのをやめた。


 その場にじっとしていれば箱のことを意識しないで済む。


 望むものはいくらでも与えられるのだから、動かなければ自由だけを感じていることができる。


 だから逃げない。


 死がもたらされるそのときまで、好き勝手に生きていよう。


 そう思っていたのだ。


「グオオオオオオオオオオオオ!」


 咆哮が間近から響いた。


 ぶー太がこちらに気づいて、歩を向けてきたのだ。


 がらんがらんと城壁を壊しながら、どんどん近づいてくる。


「うわああああ!」

「逃げろ逃げろ!」


 兵士たちはあっという間に逃げ出してしまった。


 ハピネは城壁の上に一人取り残される。


「ぎゃあああ――」


 兵士の一人を巻き込んで、背後の城壁が崩れる。

 退路が断たれてしまった。


 正面には巨大な怪物。


 ハピネはもはやどこへも行きようがなかった。


「ふふ」


 ハピネの口から思わず笑みが溢れる。


「私はいつでも逃げられないのね」


 逃げられない。

 だから逃げなかった。


 本当にそうだろうか?


 自分はただ、怯えて、不貞腐れ、目を背けていただけじゃないか?


 運命を受け入れたふりをして、ただ流されていただけじゃないだろうか?


 覚悟など決まっていなかった。


 認めることなどできていなかった。


 だからぶー太が現れて、助けると言ってくれたとき、涙が止まらなかったのだ。


「ぶー太」


 ずっと誰かに、手を差し伸べて欲しいと思っていたから。


「私はぶー太とまだまだ一緒に過ごしたい」

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